決心 1
島根から新山口へと特急で折り返し鷹司陽は新山口の駅で降り立つと息を吐き出した。
手には2年前までしていた全国巡回駐在員の時に危惧を覚えた駐在所の一覧がある。
その中の三か所を回ろうと考えていたのである。
警察機構は警察庁を頂点に47都道府県に都道府県警がある。
そしてそのそれぞれの県警の下に警察署があり、更に下に交番及び駐在所がある。
陽はその交番や駐在所を巡回し交番の環境や駐在員などに問題がないかを見て回る役目を果たしていた。
危惧をしていた幾つかの駐在所の中の三か所が今回問題を発生させたのだ。
つまり、他にもそういう問題を発生させている交番や駐在所があるかもしれない。
陽はそう思うものの全国巡回駐在員に戻ろうという決意にまでは辿り着いていなかった。
新山口駅の近くにあるビジネスホテルに宿を取り部屋に入ると携帯で浜中勝彦に最初に連絡を入れた。警察庁長官である浜中勝彦の許可があったので今回は行動することが出来たのだ。
報告は必須であった。
陽は浜中勝彦が応答に出ると
「浜中長官、島根県警浜田警察署の件は報告が上っていると思いますが解決いたしました。山田巡査も今は折居駐在所で新しく頑張り始めています。以前のような弱弱しさは減ったと思われますので大丈夫だと思います。大事に至る前に許可いただきありがとうございます。明日は山口県警の山口警察署長門峡駐在所へ向かおうと思っています」
と告げた。
浜中勝彦は警察庁の入っている合同庁舎の17階にある執務室から夜の町を見下ろしながら
「報告は上がっている。石田公男署長も感謝していた。次の報告を待っている」
と告げ
「鷹司、お前の目に何が映っているのか、俺は気になっている」
と付け加えた。
陽はそれに
「……映っているものに……ですか?」
と答えた。
浜中勝彦は静かに笑むと
「では、宜しく頼む」
と通話を切った。
陽は息を吐き出すと
「本当に恐ろしい人だ」
とベッドに寝転がるように倒れ込んだ。
揺らいでいる。
いや、全国巡回駐在員に戻りたい自分と妻である千代に他の全てを丸投げし続けた果てに彼女を苦しめてしまった後悔とで揺れ動いているのだ。
「千代……すまない」
陽はそう呟くとそのまま目を閉じた。




