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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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全国巡回駐在員復活への一歩 10

 そう言って階段で二階に登って取り調べ室の戸を開けた。奥に座っていた山田百地は目を見開くと

「鷹司さん……」

 と頭を下げた。

「申し訳ありません」


 陽は前の椅子に座り

「君が松岡警部に言ったんだな?」

 と聞いた。


 山田百地は小さく頷いた。

「はい」


 陽は山田百地を見て

「君は黙秘を続けていると聞いた。俺は本当のことを知りたい」

 と告げた。


 山田百地は肩を震わせながら涙を落した。


 陽は厳しい声で

「君が俺を呼んだんだろ!! 泣いているだけでは誰にも通じない! 言うんだ!! 警察官が真実を言わずしてどうする!!」

 と告げた。


 山田百地はビクッと顔を上げると

「俺は……警察官の資格が元々なかったんです」

 と告げた。


 陽は冷静に

「そうか」

 と答えた。


 山田百地は俯きながら

「松岡警部は高校の先輩で俺が警察試験に落ちたのを受かったように修正してくれたと……その恩を返すようにずっと言われていました……でも、でも、人を殺すなんて警察官になりたくてなったのに、そんな罪を犯すなんて俺にはできなかった。だから、だから、貴方を待っていたんです!! それで嘘を申し訳ありませんでした!!」

 と顔を伏せた。


 陽は息を吐き出すと

「立て!!」

 と言い、立ち上がった。


 山田百地もまた立ち上がった。


 陽は腕を掴むと

「こい」

 と言い、廊下で待っていた石田公男を見ると

「総務課へ案内してくれ」

 と告げた。


 石田公男は慌てて

「はい、こちらです」

 と足を進めた。


 陽は山田百地を連れて総務課へ行くと

「山田巡査が松岡警部の口添えで不正入社したのは本当か?」

 と聞いた。


 それに総務課長の細川翔が驚いて

「え!?」

 と言うと人事係長を呼び

「直ぐにデータを出せ」

 と指示を出して、試験のデータから全てを見せた。

「そんな縁故や口添えはありません。試験に合格したので採用しました」


 山田百地は驚いて目を見開いた。

「俺は」


 陽は息を吐き出し

「山田巡査」

 と山田百地を見ると

「だが、君は警察官に向いていない」

 と告げた。


 全員がギョッと見た。


 陽は山田百地を見つめると

「例えば君が君の知らないところで入学に口添えがあったとしても大切なことは君が警察官として恥じない行動を取るということだ。恩があるから不正に手を貸すようでは君は警察官じゃない。法を守ることなどできないだろう。一番大切なことは『警察官として恥じることがあるかないかだ』」

 と告げた。

「警察官は法の番人だ。人々を法によって守る。その為には何があっても警察官として恥じない行動を取ろうと常に自身に問う強さが必要だということだ」


 ……泣いても良い足が震えても良い、けれど、警察官として正しい行動を取れなければダメだということだ……


「出来るのか!!」


 山田百地は泣きながら敬礼をすると

「やりま……やります!! 俺はやります!!」

 と告げた。


 陽は安堵の息を吐き出すと

「よし」

 と笑みを浮かべた。

「山田巡査、確かに君は弱いところがある。だけど、良く最後のところで踏み止まった。松岡警部は既に原口珠里殺害容疑で逮捕されている。君の無実は証明されている」


 山田百地は唇を噛み締めると

「ありがとうございます」

 と告げた。


 細川翔も石田公男も安堵の息を吐き出した。

 陽は笑むと

「君の無実を浜田駅前交番の同級生で同期の友田巡査は信じていた。俺に宜しくと言っていた」

 と告げた。

「悪心の友と良き友を見極めて悪心の友と離れ、良き友と繋がりを作っていけば、万一足を踏み外しそうになった時に引き戻してくれる。警察学校時代はそう言う時代でもある。大切にしなさい」


 山田百地は笑顔で

「はい」

 と答えた。


 陽は安堵の息を吐き出して

「頑張れ!」

 と笑顔で告げた。


 山田百地は笑みを深めて

「また来ていただけるのを待っています」

 と告げた。


 陽は視線を伏せると

「……ああ」

 と短く答えた。


 もう、全国巡回駐在員は辞めたのだ。

 だが。

 だが。


 陽は全員に敬礼をすると

「では、山田巡査と折居駐在所に明後日まで滞在して警察庁長官への報告書を作成するのでお世話になります」

 と告げた。


 石田公男は笑顔で

「ありがとうございます! 宜しくお願いします」

 と答えた。


 陽はその足で山田百地と共に折居駐在所へと向かった。

 そして、二日宿泊し山田百地と巡回などをして、落ち着いて何処か明るくなった彼に安堵の息を吐き出して浜中勝彦に言われていた通りに山口県の方の気になっていた駐在所へ旅立ったのである。


 山田百地を折居バス停まで陽を見送り

「また! また来てください!!」

 と笑顔で敬礼をし続けた。


 陽も敬礼をして

「頑張れ!!」

 と見えなくなるまで見つめた。


 あの笑顔が。

 あの立ち直った姿に胸が熱くなる。

 やりがいが胸を熱くしたのである。


 だけど。

 陽は見えなくなって前を見つめると

「……だけど俺は」

 と小さく呟いた。


 ……千代にこれ以上負担をかけさせるわけにはいかない……


 視線の先には明るい日差しが注いでいるが、ほんの少し胸に重みを感じるのであった。


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