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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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111/128

全国巡回駐在員復活への一歩 4

 警察庁生活安全局の方でも『全国巡回駐在員』の行動については掌握されていないために個別事案として赤木勇介の方へと連絡が回ったということであった。


 陽は駐在所で報告書を書き終えると携帯に入った着信相手を見て

「赤木からか」

 と呟くと応答ボタンを押した。


 空は既に赤く染まり隣には中学生となり島へ来た当初よりかなり背が高くなった赤木勇気が座っていた。

 赤木勇介と赤木勇気は本当の親子であるが、こういう場合の電話は『警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課長』として連絡してきていることが分かっているので沈黙を守っていた。


 もっとも、そうでない電話であっても勇気が日頃のような口達者な喋りを見せるのかと言うとそういう訳ではなかった。


 陽は応答に出ると

「どうかしたのか?」

 と聞いた。


 窓の外の光景は赤く染まっている。素朴な離島の田舎道である。人通りはあまりなかった。


 赤木勇介は反対に大都会東京の町の景色を警視庁組織犯罪対策部のフロアの一角から見つめながら

「鷹司、山田百地巡査を知っているか?」

 と聞いた。


 陽はそれに

「ああ、折居駐在所の山田巡査だな。3年前に巡回で回った地域の駐在員だ。なんて言うか、かなり気が弱いというか……自己肯定感が低いところがあって心配な駐在所の一つだったな」

 と答えた。

「何かあったのか?」


 赤木勇介は窓辺に立って景色を見つめながら

「田中百地巡査が殺人容疑で逮捕された。ただその前に警察庁生活安全局の方に彼の駐在所の所轄の浜田警察署の刑事課の人間から二週間後に『全国巡回駐在員』が回ってくると聞いたのですがって電話が入っていた」

 と告げた。

「お前は勿論連絡していないだろ?」


 陽は腰を浮かせて

「……ああ」

 と低い声で答えた。


 全国巡回駐在員は2年前に退いたのだ。

 その後継が立ったという話は全く聞いていない。


『調べに行かせてくれ』と言う言葉を喉元まで出しかけながらチラリと勇気を見た。


 勇気は陽を見つめ返した。

 2年だ。

 この島で陽と千代と暮らし始めて2年である。


 勇気は笑むと

「俺が高瀬さんと連携して守っていくぜ」

 と告げた。


 陽は目を見開くと

「勇気」

 と呟いた。


 勇気は大きく頷いた。


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