全国巡回駐在員復活への一歩 2
男は軽く青年の足を蹴り
「山田百地巡査! やるのか、やらないのか!?」
と強く吹く風の中で睨んだ。
山田百地は顔を歪めると
「し、しかし……そんなことを……俺は……で、できないですよ……そんなことをしたら……」
と訴えた。
男は舌打ちすると前髪を掴み
「山田!! お前が今そうやって警察官やってられるのは誰のおかげだ? 全部話しても良いんだぞ? 高校の可愛い後輩のために俺が努力したことをな」
と告げた。
山田百地は泣きながら
「でも、俺は……ちゃんと試験を受けて……」
としどろもどろと告げた。
男は「ああ!?」と声を荒げると
「だから受かっていないのを俺がちょっと書き換えてやったんだって言っているんだろ! お前、高校の先輩で2階級上の俺に逆らうのか? それこそ首にすることも出来るんだぞ!!」
と怒鳴った。
山田百地は震えながら
「ま、ま……待ってください。でも、でも、再来週にはぜ、全国巡回の鷹司巡査部長が来るんです! 今は無理です! す、直ぐに俺だと分かってしまいます」
と告げた。
男は目を見開くと
「全国巡回……3年前に回ってきた駐在員か。確かに時期的に遅いくらいか」
と言うと少し考えて山田百地を押し倒すと
「本当か?」
と聞いた。
山田百地は頷いた。
男は踵を返すと
「確認するからな、本当だったら待ってやる。嘘だったらやれよ! よし、今日の10時にここに来い、確認してどうするか話をする。来なかったらわかっているな」
と立ち去った。
山田百地は俯くと
「鷹司さん……」
と小さく呟いた。
黒い雲からは雨が降り注ぎ強く崖の上の山田百地を叩きつけ続けた。
全国巡回駐在員は多くの場合は行く寸前に連絡が入る。いわば、抜き打ち訪問である。
だが。
だが。
山田百地は深く息を吐き出した。
「俺は、嘘をついてしまった」
あの日から全く連絡はない。待っていた。待っているのだ。
自分が大好きだった警察官と言う道から足を踏み外してしまう前に会いたいと思っていたのである。
翌日、山田百地はスナック『パール』のスナック嬢・原口珠里を殺したという殺人罪で逮捕されたのである。




