全国巡回駐在員復活への一歩 1
『鷹司警部、警察機構を支えているのは機械ではない。人間だ。人間は弱い。間違えることもある。だからこそ警察機構の根底を支えるには全国巡回駐在員が必要だと俺は思っている』
警察官は人なのだ。
間違えることもある。
それを未然に防ぐ。不幸が広がる前に止める。
そう言うシステムの一つが全国巡回駐在員の役割である。
だが、その人間がいま……不在で2年が過ぎ去ったということである。
東京の警察庁にある長官執務室に呼び出されて鷹司陽は浜中勝彦第73代警察庁長官に告げられた。
陽は視線を伏せると
「でも、俺は」
と言うと
「申し訳ありません」
と敬礼をすると立ち去った。
浜中勝彦はその背中を見送り大きく息を吐き出した。
「確かに階級や金で動くような奴だったら俺も引き留めないが……ったく頑固一徹で島の駐在員をやり続ける奴だからこそ手放すわけにはいかねぇんだよ」
鷹司陽と言う人間は全国巡回駐在員という特別駐在員を立てて初めてその任についた警察官である。
8年間、その成果は素晴らしいものがあった。
しかし、その成果の裏で犠牲になったのは彼の妻で、そして、生まれることが出来なかった子供であった。
2年前にすっぱりとその任を退き、再び島の駐在員として働いている。
浜中勝彦は息を吐き出して執務室の机の上にある電話に手を乗せた。
「あーそうですか、で済ませるような人間なら俺は警察庁長官になんてなれてねぇんだよ」
そう言って
「俺は国民を社会を……この国を守る警察機構を正常に動かすためなら鬼にもなれる」
と呟いて受話器を持ち上げた。
同じ時。
黒い雲が空を駆け抜け海沿いの集落を越えた人の寄り付かない灯台の裏手で警察官の制服を着た青年が足を震わせながら一人の男を見つめていた。




