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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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因習の園 13

 そして、千成久二は土下座している湯ノ沢学を立たせると

「悪いが、お前の面倒をみるモノは村にはいない」

 と言い

「お前は村を出て行ってもらう」

 と告げた。


 三田村優香は目を見開いて

「そんな! お父さん」

 と三田村英雄を見た。


 三田村英雄は笑むと

「優香、お前は高校になったら村を出て『自由』に生きなさい」

 と告げた。


 千成久二はフゥと息を吐き出して陽を見ると

「湯ノ沢学が成人するまでキチンとした施設、もしくは里親になってくれる人を探してもらいたい」

 と告げた。

「彼が高校を出るまでの資金については千成家からお支払いする」


 ……その後のことはしらん。『自由』とはそういうものだろ? その代わり村のことは忘れろ……


 湯ノ沢学は戸惑いながら

「でも」

 と言いかけた。

 陽は湯ノ沢学の肩を叩くと

「学くんに自由に生きろと言ってくれているんだ」

 と言い

「ちゃんとこちらで手配するので安心してください」

 と告げた。


 その後、萬田横柄の連絡で白馬警察署と長野県警の鑑識と捜査一課が駆け付け千成家の取次からルミノール反応が出たので湯ノ沢道子の使っていたブラシの毛根のDNAと照らし合わせ、同時に三田村優香が隠し撮りした動画から全てが判明した。


 千成佐代子は自供しそのまま村を後にした。


 多津川湊も食事もちゃんと与えられていて身体に不調はなく直ぐに駐在所に復帰した。彼の妻の子供も間もなく村へと戻った。


 村は表向きは変わりがなかったが、香田家も代が変わると医者ではなくなり診療所が立てられて外部から医師を招くようになり隣の集落や村との交流も行うようになったのである。


 勿論、子供たちの未来も自由に選択できるようになったのである。


 萬田横柄と陽は湯ノ沢学を連れて東京へと戻った。萬田横柄は二人を連れて落ち着いた和風レストランに連れていくと

「いやぁ、多津川の息子が無事でよかった」

 と言い

「それで鷹司、学くんのことだが」

 と告げた。


 湯ノ沢学は笑むと

「俺、施設を探そうと思っています」

 ご迷惑はかけられないので、と告げた。


 陽は肩を叩くと

「俺は千成家からお前を頼まれたんだ」

 と言い

「中学卒業までは島で暮らしてもらって、東京の寮のある学校で萬田さんと俺とで交互に会いに行くようにする。一応、俺が後見人になれば大丈夫だろ」

 と告げた。


 萬田横柄は驚いて

「いいのか?」

 と聞いた。


 陽は笑って

「勇気もいるし、一人も二人も一緒だろ」

 とさっぱりと告げた。

「もうイレギュラーはないだろうし、俺も島の駐在所でノンビリするからさ」


 萬田横柄はそれに浜中勝彦警察庁長官の言葉を思い出しながら

「……そう上手くいくかなぁ」

 とぼやいた。


 陽は目を見開くと

「え? いやいや、勇気も学くんも良い子だから大丈夫」

 と告げた。


 湯ノ沢学は頭を下げると

「ありがとうございます、鷹司さん」

 と告げた。


 陽は笑って

「いいさ」

 と答えた。


 そして、陽と湯ノ沢学はホテルで一泊し、翌日、赤木勇介に

「今回は萬田さん通じてのお前の課がらみだからな」

 と言い、報告書を渡して島へと戻った。


 赤木勇介は報告書を受け取ったものの

「いやいやいや、俺から浜中警察庁長官に渡せってことか?」

 とため息交じりにぼやいた。


 島では千代が笑顔で

「そうなの? じゃあ三人目息子ね」

 と湯ノ沢学を招き入れた。


 勇気も驚きながら

「いま中二ってことは俺より一学年上なんだ! お兄さんだな」

 と笑って告げた。


 湯ノ沢学は戸惑いつつも笑みを見せると

「宜しくお願いします」

 と千代が用意した眉山旅館の食堂で鷹司家の食卓を囲みながら頭を下げた。


 島の新しい生活者が増えたのである。

 ただ、赤木勇介から報告書を受け取った浜中勝彦はそれを見て

「やはり、全国巡回駐在員は……警察機構には必要だな」

 と呟いた。


 東京の空に広がっていた青空に俄かに雲が広がり始めていたのである。


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