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陽と月  作者: 如月いさみ
全国巡回駐在員

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因習の園 8

 湯ノ沢学は顔を伏せながら

「でも、俺、我慢できなくて……多津川さんに話をしてしまって……そうしたら調べに行くって」

 と告げた。

「そうしたら夜中に優香が隠れてやってきて俺に逃げるように言ってくれたんだ。多津川さんが捕まったから逃げるようにって……そんな、見捨てられなくて、けど多津川さんを連れて逃げることなんてできないし」


 ……全部俺のせいなんだ……


 陽は湯ノ沢学を抱きしめた。

「学くんのせいじゃない」


 そう言って萬田横柄を見た。

 萬田横柄は湯ノ沢学の頭を撫でて

「そうだ、君のせいじゃない」

 と告げ

「だが、多津川巡査もいつまで」

 と呟いた。


 それに陽は冷静に

「恐らく、殺すことはないと思いますが……楽観視もできないと思います」

 と告げた。

「村としては新しい『外』からの駐在員が来ることと『外』に知られて警察機構が大々的に動くことを恐れていると思います。だから多津川巡査を殺してしまうと報告書が滞り問題になる。多津川巡査には報告書を書き続けてもらわないといけない」


 萬田横柄は顔を歪めると

「くそが」

 と呟いた。

 

 だが、憤っているだけではダメなのだ。

 萬田横柄は陽を見ると

「多津川巡査を救い出してその殺人を証明する必要があるな」

 と告げた。


 陽は頷き

「ええ、問題は遺体が既に荼毘に付されていることです」

 と答え、ふと

「いや」

 と呟いた。


 そして、湯ノ沢学を見ると

「学くん、一つ聞いて良いか? 多津川巡査に話をしたのは君のお母さんが荼毘に付された後か?」

 と聞いた。


 湯ノ沢学は小さく頷いた。

「はい、俺が呼ばれた時にはもう棺に入れられていて……骨だけ渡されたので」


 そう言って立ち上がると居間の襖を開けて仏壇に置かれている骨壺と遺影を見せた。


 陽は立ち上がると両手を合わせた。

「だとしたら、多津川巡査は……恐らく決定的な証拠を何かの理由で手に入れてしまった可能性がある」


 湯ノ沢学も萬田横柄も目を見開いた。

 萬田横柄はハッとすると

「いや、確かにそうだ。遺体は既に骨になっているとしたら証拠はない。あるとしてもルミノール反応を見るくらいだ。話を誤魔化すことなどできる。だったら捕える必要はないな」

 と告げた。


 陽は頷いた。

 そして立ち上がると

「学くん、お母さんが使っていた櫛とか、歯ブラシとか……まだ残している?」

 と聞いた。


 湯ノ沢学は慌てて立ち上がるとブラシを持ってきて

「これ、お母さんが何時も使っていた櫛」

 と手渡した。


 陽はビニール袋を出して入れると萬田横柄に渡した。

「萬田さん、これを鑑識に渡してください。そして、千成家の何処かでルミノール反応が出た時の証拠になります」


 萬田横柄はそれを手にすると

「鷹司、お前……」

 と告げた。


 陽はにっこり笑うと

「そろそろ挨拶しに行かないと……俺が全国巡回駐在員として村に来ることは連絡を入れていますからね」

 と告げた。

「大丈夫、俺を殺せば一発に警察機構が総動員してくることを知っているので手は出さない」


 ……俺が挨拶をしている間にお願いします……


 そう言って衛星電話を渡した。

「衛星電話なので村から出て暫くいったところに崖があると思うのでその辺りで試してみてください。方向が合えば行けますよ」


 萬田横柄は頷くと

「わかった」

 と答えた。

「死ぬなよ」


 陽は笑顔で

「もちろんです」

 と答え

「学くんも一緒に」

 と言いかけて、湯ノ沢学の顔を見ると

「……いや、ちょっと手伝ってもらおうか」

 と告げた。

「君にしてほしいことがある」


 湯ノ沢学は「え?」と声を零した。


 陽は冷静に

「君の言っていた優香ちゃんって言うのは誰?」

 と聞いた。


 湯ノ沢学は頷くと

「分校で一緒に勉強していた幼馴染で……あいつは千成家の分家の三田村なんだけど全然そう言うのが無くて」

 と笑みを浮かべた。

「俺が医者になりたいって言ったら、じゃあ私は看護婦! って言ってくれて応援してくれていたんだ」


 そしてハッとすると

「いや、あいつは良い奴だから絶対に事件に関わっていない」

 と告げた。


 陽は頷いて

「わかっている。ただ、多津川巡査が何処にいるか知っていると思うし『何故巡査が捕まったのか』その理由を知っていると思う。だから君のところへ捕まったことを知らせに来たんだ。君が起因していると知っていたからだ」

 と告げた。


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