表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結保証】追放された“改造師”、人間社会を再定義する ―《再定義者(リデファイア)》の軌跡―  作者: かくろう
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/121

第73話「砂村の略奪者 ― 炎と風の制裁 ―」

 ――乾いた風が丘を渡る。


 空は雲ひとつなく、焦げつくような陽光が砂丘を白く照らしていた。

 古代飛空艇アーク・ノヴァは、青白い浮遊光を放ちながら空を滑る。

 その船体はまるで空そのものの一部で、地平線の彼方にかすかに揺れていた。


 甲板の上、ティア・ドラグネアが欄干から身を乗り出し、金色の砂を見下ろす。

 桃色の髪が風を受けて踊り、角の紅が太陽に反射した。


「うわー……すっごい! 見て、主様! 下、ぜんぶ金色! 砂が光ってる!」


 ユウリは風防越しに視線を落とした。

 遠く砂丘の陰、崩れた柵と焦げた屋根。

 ひときわ小さな点――それが村の遺構に見えた。


「β、あれは?」


《観測結果:集落名サーヴァ。人口減少率八七パーセント。生体反応数値、危険域。建造物の損壊率六五パーセント。》


 報告に、リアナが眉を寄せる。

「……まるで、焼かれた後のようです。人の気配がほとんどありません」


 風が船体を撫で、金属の外殻がきぃんと鳴った。

 ユウリは短く息を吐く。


「……嫌な予感がする。ティア、待機を――」


「えぇーっ! 主様、行ってみようよ! もし誰か倒れてたら、助けなきゃ!」


「ボクも賛成なの。足跡、風、匂い――人が戦った痕がするの」

 ミナが欄干の上に軽く飛び乗り、目を細める。


「β、降下ルートを確保。ノヴァは上空で待機だ」


《了解。座標ロック完了。降下用エレベーター展開。》


 風が甲板を巻き、光が渦を描く。

 ユウリたち《再定義者》は光陣に包まれ、柔らかな浮遊感とともに空から降りていった。


◇◇◇


 ――砂と焦げた木の匂いが鼻を刺す。

 砂塵を踏むたびに、靴底がきしむ音を立てた。


 サーヴァ村。

 かつて穀倉地帯の外れにあって、緑に囲まれた穏やかな村だったという。

 だが今は、井戸は干上がり、畑は焦げ、柵は崩れている。


「……村が、息をしていない」

 リアナの声は震えていた。彼女の瞳には、まだ“祈りの心”が残っている。


 ユウリは冷たい目で辺りを見回す。

「β、反応は?」


《解析中……略奪者の反応、北西倉庫群に集結。生体反応十一、民間人三。拘束の形跡あり。》


「よし。救出優先。ティア、ミナ、リアナ――行くぞ。《再定義者》、出動だ。」


◇◇◇


 ――村の中央。


 崩れた倉庫の前では、盗賊たちが戦利品を広げ、下卑た笑い声を上げていた。

 麦袋を破り、穀物を踏みにじり、縛った村人を物のように転がす。


「へっへっへ! 田舎者のくせに麦は上等じゃねぇか!」

「騎士団も見て見ぬふりだ。俺らの天下だ!」


 その時――地面が、低く鳴った。


 砂を裂き、風が逆巻く。

 上空から紅い閃光が一直線に降り注ぐ。


 轟音と共に、地を穿つように炎の拳が叩きつけられた。


「パンを焼くなら火を使え。でも、人の家を焼くなら――燃やすのは、あんたらの方」


 ティア・ドラグネア。

 炎をまとった竜闘士の少女が、砂煙の中から姿を現す。

 瞳に宿るのは怒りではなく、まっすぐな「正しさ」だった。


「な、なんだこの女はっ!」

「怯むな! 囲め!」


 盗賊たちが剣を構えるより早く、ユウリの声が響いた。

「β、結界干渉を遮断しろ」


《了解。構文展開――《ジャミング・フィールド》発動》


 青い光陣が地面を走る。

 その瞬間、金属の音が止んだ。盗賊たちの剣が宙で固まり、手から滑り落ちる。


「な、なんだ!? 腕が動かねぇ!」

「その剣、もう使えないよ」


 風を切ってミナが背後から滑り込む。

 白銀の髪が光を反射し、短剣の柄が敵の顎を正確に叩いた。

「おしゃべりは禁止。次、行くの」


 残像が幾重にも走り、敵の背を次々と叩き落とす。


 ティアは拳を握り、肩を回した。

「主様、右は片付いた! ――本気出すよっ!」


「いい。だが巻き込むなよ」


「分かってる!」


 彼女の拳が高く掲げられ、紅蓮の魔陣が地を覆う。


「《竜炎衝破ドラグ・バースト》ッ!!」


 炎の竜が吠え、紅の爆風が倉庫を飲み込む。

 轟音と共に敵だけを弾き飛ばし、壁を焦がす。

 焦土の熱が空気を震わせた。


 炎が収まると、地には黒焦げ寸前の盗賊たちが転がっていた。


《敵勢力、全員無力化完了。死者なし。民間人三名、軽傷。治療可能範囲です。》


 ユウリは剣を収め、静かに息をついた。

「……よし。ティア、火を収めろ。リアナ、治療を」

「了解っ!」


 柔らかな光が村人たちを包み、焦げた匂いが少しずつ消えていく。


◇◇◇


 ――数刻後。


 夕陽が砂丘を朱に染める。

 リアナは祈りの光で崩れた柵を修復し、ユウリは残骸に手をかざす。


「《改造構文:物質再定義リコンストラクト》――再構築」


 淡い蒼光が走り、木片が噛み合う。

 かつての形を取り戻した柵が、ゆっくりと地に根を下ろす。


 見ていた老人が息をのむ。

「……まるで、奇跡のようじゃ」


「奇跡じゃない。ことわりの修正だ」

 ユウリは静かに笑った。


 ミナは子どもの手を取り、傷を包帯で巻いてやる。

「これで痛くないの。怖くなったら、風の音を聞いて」

「風?」

「うん。風が主様の声を運んでくれるから」


 ティアは拳を燃やしながら振り返る。

「主様、もうこの村は大丈夫! ――次、行こっ!」


「焦るな。リアナ、倉庫の補修を終えたら出る」

「はい。……でも、この村の人たちがまた立ち上がれるといいですね」


 風が止み、静寂が戻る。

 丘の上でセリスが目を細めた。

「……風が笑ってる。村がまた呼吸を始めた」


 ユウリが空を見上げる。

「いい風だ。――β、ノヴァを降ろせ」


《了解。着陸モードに移行。サーヴァ北丘に停泊中。》


 遠く、白銀の巨影がゆっくりと降下してくる。

 《アーク・ノヴァ》の翼が月光を受け、滑らかに光を放った。

 村の子どもたちが目を丸くし、歓声を上げる。


「す、すごい……空を飛ぶ船だ……!」

「うん。主様の船だよ!」とティアが誇らしげに胸を張った。


 ユウリは帽子のつばを下げ、静かに呟く。

「……行こう。次は“人の知らぬ時代”が相手だ」


 ミナが尻尾を揺らし、リアナが光を閉じる。

 再定義者たちは光陣に包まれ、ノヴァの船内へと戻っていった。


 ――風が吹き抜け、サーヴァ村の鐘が鳴る。

 焼けた土地に再び笑い声が戻り、空の上では白銀の翼がゆるやかに旋回した。


 古代飛空艇アーク・ノヴァ

 それは、彼らの旅路を照らす“再生の灯”として――

 今日も静かに空を渡っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ファンタジーです】(全年齢向け)
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
★リンクはこちら★


追放された“改造師”、人間社会を再定義する ―《再定義者(リデファイア)》の軌跡―
★リンクはこちら★
神のバグで棄てられた俺、異世界の裏で文明チート国家を築く (11月1日連載開始)
【絶対俺だけ王様ゲーム】幼馴染み美少女達と男俺1人で始まった王様ゲームがナニかおかしい。ドンドンNGがなくなっていく彼女達とひたすら楽しい事する話(意味深)

★リンクはこちら★
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ