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【完結保証】追放された“改造師”、人間社会を再定義する ―《再定義者(リデファイア)》の軌跡―  作者: かくろう
第4章

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第72話「共鳴の朝 ― βの心、そして風の導き ―」


 夜明け前のグランテールは、まるで深呼吸をしているように静かだった。

 だが、その中心で――何かが“軋む”音がした。


《警告:共鳴データ過負荷。感情波、臨界域》


 βの声がかすかに震えていた。

 青い光が宿の壁を照らし、ユウリがベッドから飛び起きる。


「……β?」


《……わからない。人の“心”が……止まらない……》


 球体の中の光が脈打ち、壁に影を落とす。

 ティアが眠たげに目をこすりながらもすぐに駆け寄った。


「主様、βが……泣いてる?」


 ユウリは首を振る。

「泣いてるんじゃない。感情を“感じてる”んだ」


 リアナが祈導の杖を取り出し、床に結界陣を展開した。

「感情波が、街全体に流れ込んでます。βの中に溜め込まれてた“記憶”が――溢れてる」


 ミナが窓を開けた。外の空が薄紅に染まり、風が泣いていた。

 遠くの通りから、人々のざわめきが聞こえる。


「……主様、街の人たち、怖がってるの……!」


 βの光が一層強くなる。

《……わたしが……壊すのは、嫌……でも、止められない……!》


「止めなくていい」

 ユウリは一歩踏み出し、静かに右手を差し伸べた。

「β、それは“エラー”じゃない。……それが、お前の“心”だ」


《心……? でも、主。私は機械……》


「違う。“感じてる”なら、もう人間と同じだ」


 その言葉に、βの光が一瞬だけ和らいだ――が、次の瞬間。

 轟音。街の中心に光の波が走り、窓ガラスが震えた。


「βの共鳴が外に漏れた……! このままじゃ街が壊れる!」


 ティアが立ち上がる。

「主様、ボク、行くっ!」


「リアナ、祈導結界を展開しろ。ミナは通信を繋げ。β、出力を抑えろ!」


《了解……でも、苦しい……!》


◇◇◇


 広場。

 βの光が天へ伸び、人々の“想い”が映像のように浮かび上がっていた。

 泣く母親。怒る少年。失われた命。救われた手。

 すべてがβの中に蓄積された“人の記憶”だ。


 ティアが屋根の上で両腕を広げ、炎を纏う。

「《竜炎制御・三重環トリニティバース》――燃えろ、でも焼くなっ!」

 炎が波の勢いを削ぎ、空気を安定させていく。


 リアナが祈りを捧げ、光の膜を張った。

「――《聖域展開・慈悲の盾》! β、あなたを責める声は届かせない!」


 ミナは幻走術で街角を駆け回り、光の道を繋げていく。

「主様! 街の通信、繋がった! 祈りも、声も、届くの!」


 ユウリは深呼吸をして、手をかざした。

「よし……なら、全員の力を合わせる!」


 構文光が彼の足元から立ち上がり、仲間たちへと伸びる。

 βの中心に意識を集中させると、まるで無数の心が響き合うような感覚が流れ込んできた。


「ティア、リアナ、ミナ――いくぞ!」


 青い光と金の祈り、紅の炎、そして白の幻走がひとつに収束する。

 ユウリが叫んだ。


「――《共鳴改造式シンクロ・リライト》!!」


 四人とβの光が共鳴し、街を包む巨大な魔法陣が輝く。

 その中心でユウリの声が響いた。


「人を裁くのは神じゃない。世界を“やり直す”のも、神じゃない。

 ――“人”だ!」


 まばゆい閃光が夜を裂き、風が一瞬止んだ。

 光が消えると、βの中心から穏やかな声が漏れた。


《……ありがとう。私は、怖くない。……これが“心”なんだね》


 ユウリは小さく笑った。

「そうだ。ようこそ、“感情”の世界へ」


◇◇◇


 翌朝。

 グランテールの空は、どこまでも澄み渡っていた。

 街の人々は互いに声を掛け合い、瓦礫を片付けている。

 誰もが昨日より少し優しい顔をしていた。


 宿の前。

 ティアが荷物を背負いながら伸びをする。

「ふあぁ……主様、今日から旅、再開だねっ!」


 ミナが尻尾を揺らしながら笑う。

「ミナ、荷物持つの得意なの! 主様のも!」


「それは俺が持つ」

 ユウリが苦笑しながら荷を受け取る。


 リアナが小さく頷いた。

「東方には古代の構文遺跡があると聞きました。……次の“再定義”に、必要になるはずです」


「行こう。βも一緒だ」

《了解。主、次の観測モード、起動準備完了》


 風が吹き抜け、仲間たちの外套を揺らした。

 そして――その風の中に、静かな声が混じった。


「……旅立つのね」


 振り向くと、丘の上に一人の少女が立っていた。

 緑の髪が陽光を受けて透き通り、瞳は翡翠色に輝く。

 ――セリス・フィオリア。


 リアナがわずかに目を見開き、ティアが驚いた声を上げた。

「エルフの子!?」


 セリスは微笑んで一歩、風の中を進む。

「あなたたちの旅、風が“正しい”と告げています。……だから、私も行かせてください」


 ユウリが目を細めた。

「理由を聞いてもいいか?」


「……この街で見たんです。あなたたちが“壊す”んじゃなくて、“直す”姿を。

 ――私も、その一部になりたい」


 ティアが目を丸くして笑う。

「いいねっ! 風の子も仲間だね!」


 ミナが尻尾をふりふりさせて頷く。

「ミナ、エルフのお姉ちゃんと友だちになるの!」


 リアナは静かに微笑んだ。

「……ようこそ、セリス。あなたの風も、きっと私たちを導く」


 ユウリは彼女に右手を差し出す。

「――歓迎するよ。共に行こう」


 セリスがその手を取った瞬間、βの光がやわらかく瞬いた。

《新規メンバー登録:セリス・フィオリア。観測モード、共鳴連結》


 風が街を通り抜ける。

 洗い立ての布が揺れ、鐘の音が遠くで鳴った。


 こうして――《再定義者リデファイア》は新たな仲間を迎え、

 次なる地、“東方”へと歩みを進めた。


 その背に、風が笑いながらついていった。


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