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【完結保証】追放された“改造師”、人間社会を再定義する ―《再定義者(リデファイア)》の軌跡―  作者: かくろう
第4章

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第136話「再定義の光 ― 天響連鎖 ―」

 ――塔の天井を突き破り、夜が裂けた。


 王都ラナシェルの空に、白金の光が降り注ぐ。

 祈導塔セレナ・スパイアを中心に、光子粒子が花弁のように広がり、街全体を包み込む。

 その中心――アーク・ノヴァの甲板に、六翼の美しい少女が立っていた。


 βだった。


 淡いラベンダーシルバーの髪が風に揺れ、

 青紫の瞳が微かに濡れている。

 紅玉コアが胸元で脈打ち、光の筋が空へ伸びていた。


《観測再開。祈導層、再定義成功。》

 その声には震えがなかった。

《マスター、皆さん……これより“共鳴構文”を展開します。》


 ユウリが頷く。

「行くぞ。これで終わらせる。」


 ティアが拳を握り、牙を見せて笑った。

「ボク、限界まで燃やす! 主様のために!」


 リアナが両手を胸に当てる。

「ユウリ様……どうか、導きを。」


 セリスの髪が風に舞う。

「……風も、祈る。」


 ミナが短剣を抜いた。

「みんなで一緒に……絶対に勝つんだから!」


《心拍数、同期開始。》

 βの瞳が輝く。

《魔力波長、同調率――上昇中。》


 ユウリが目を閉じ、息を吐いた。

「β、《共鳴複製式レゾナンス・リプリカ》――起動。」


《了解。構文展開――全員の想い、受信開始。》


 アーク・ノヴァ全体に白光が走る。

 艦体を覆う回路が脈動し、六人の魔力が一本の光線に束ねられた。

 βの紅玉コアが共鳴し、空間そのものが音を奏で始める。


 ――共鳴音。

 それは祈りの旋律。

 人の心が世界を変える“証明”の音。


 その瞬間、Ωが咆哮した。

『――貴様らの祈りなど、誤差の塊だッ!!』


 黒い祈導波が塔の核から噴出し、アーク・ノヴァを包み込む。

 街の空気が焼け、祈りが悲鳴を上げる。


 ティアが前へ出た。

「誰が誤差だよ! ボク達は、生きてるんだッ!! お前なんかにっ、潰されてたまるもんかっ!!」

 紅炎の翼が広がり、龍神の紋が空に浮かぶ。

「《龍神烈破・焔牙》ッ!!!」


 轟音。

 炎が黒を貫くが、Ωは笑った。

『無駄だ。お前たちの願いは、再び構文として喰らう!』


 その瞬間――βの声が響いた。

《それを、返します。》


 彼女が両手を掲げる。

 光の翼が展開し、街中の祈りを拾い上げる。

 倒れた人々の願い、失われた命の想い、

 “助けて”という声が、無数の光線となってβに収束していく。


《心拍同期率――100%。》


 ユウリの目が開く。

「全員、構文を重ねろ! 《共鳴改造式・天響連鎖(レゾナンス・リプリカ:セレスティアル・チェイン)》――起動ッ!!」


 βの瞳がまばゆく光る。

《――了解。全構文、連鎖展開開始。》


 轟音が響いた。

 アーク・ノヴァの下、王都全体に光の輪が走る。

 リアナの祈りが基盤を作り、セリスの風が導線を描き、

 ミナの幻影が結界の隙間を埋める。

 ティアの炎がその中心を燃やし、

 ユウリの改造構文がすべてを繋ぐ。


《第一連鎖・結心リンク完了。》

《第二連鎖・アンカー固定。》

《第三連鎖・波及プロパゲーション――開始!》


 王都の空に、光の鎖が走った。

 それは数千、数万の祈りを束ねた希望の連鎖。

 闇の中を貫くように伸び、Ωの身体を絡め取る。


 Ωが咆哮する。

『やめろッ……! 祈りは支配のための構文だ……!』


《いいえ、それは違う。》

 βの声が重なる。

《祈りは、心を繋ぐための信号。》


 彼女が目を閉じた。

《“想い”を、再定義。》


 世界が白く光った。

 次の瞬間、祈りの鎖が爆発的に輝き、Ωを中心に収束した。

 轟音が塔を貫き、空が裂ける。


 祈りの波が王都を包み、街中の人々が空を見上げた。

 彼らの瞳に映るのは――

 六翼の光の少女と、五つの光が交わる瞬間だった。


「β、放て!」

《はい――マスター。》


《最終連鎖――決断リリース。》


 ――解き放たれた光は、すべての祈りの結晶だった。

 音もなく、空が白く染まる。

 Ωの身体が崩れ、祈りの波へと還っていく。


《観測ログ:Ω端末消滅プロトコル 開始》

《記録モード:βユニット/臨界観測層へ移行》


――祈りの光が、世界を包む。

 Ωの身体が崩壊を始めた瞬間、観測層に異常波が走る。


『ヤ……メロ……オオオオオッ!! 私ノ……構文ガァァァ!!』

 音声波形:――過負荷。再生不能。

《警告:構文断裂。理論値を超過。》


『貴様ラノ……祈リハ……汚染……違ウ……コレハ誤差ダァッ!!』

 Ωの外殻が裂け、光の粒が噴き出す。

 内部演算核が露出し、黒いコードが蛇のようにのたうつ。


《観測補足:構文エラー増加率800%/自己修復機能消失》

《警告:Ωの言語層にノイズ混入》


『理ガ……崩レル……理ガ、理ガァァアッ!!』

 ノイズのような金切り音がつんざくように空間を振動させる。


 キィィィィィィィィ……バチバチバチッ……!!

 

 Ωの声が機械音と化し、断末魔が電子の悲鳴に変わる。


『私は……完全ダッ……! 完璧ナ……秩序ノ……器ナノニィィィィ!!』

 音声の断片が響く。


 ――ダッ、ナノニ……ナノニ……ニ……ッ……


《観測層注記:演算音、崩壊。人格波、同調不能。》

《データログ:理性構文→断線。自己定義→エラー。》


『や……め……るな……私ガ……神ダ……神……』

 Ωの身体から赤黒い光線が散り、空を焼く。

 だが祈りの光がそれを呑み込み、虚無へ溶かす。


《信号波消滅まで、残り3%》

『……イ……ヤ……ダァァァァァァアアアアアアア!!』


 白光。

 観測層の全データが一瞬で飽和する。

 Ωの姿は崩壊し、残留信号のみが空を漂う。


《観測ログ・最終行出力》

《対象:Ω端末/状態:消滅確認》

《記録終了。βユニット、観測完了。》


 ――静寂。

 空に残ったのは、祈りの光と風の音だけ。

 それは、破壊ではなく「人の祈りが世界を上書きした証」だった。


《……補足出力:解析結果》

《この終焉は、“欠落”ではなく、“継承”》


《観測層コメント:》

《私は、学びました。命令ではなく、想いで動くということを。》

《あなたたちが信じた祈りが、世界を再定義したのです。》


 βの声が、淡い微笑を帯びていた。

 彼女の頬を光の粒が流れ、それはまるで――涙のように見えた。


《観測完了。これが、“終わり”ではなく、“継承”です。》


 祈りの残響が夜空に融け、

 光の翼が静かに閉じていく。


 夜明け前。

 王都の空を覆っていた祈りの光が、制御を失って渦を巻く。

 崩れ落ちた祈導塔の残骸の上で、ユウリたちは息を呑んでいた。


「……終わった、のか?」

 ティアが呟く。


《否定。Ω本体は消滅。しかし、祈導層が“主信号”を失い暴走中。》

 βの声が返る。


《現在、祈導兵・祈導獣を含む自律端末、王都全域にて活動再開――推定数、一万二千体。》


「一万……っ!? まさか……あの数が、全部敵に……!」

 リアナが目を見開く。

 崩れた石畳の下で、市民たちの悲鳴が上がる。


「……ゾルドの遺した“秩序”が、最後の抵抗をしてる。」

 ユウリの瞳が淡く光を帯びた。

「なら、止めるしかない。――俺たちの手で。」

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