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第45話:三つの試練と、魂の共鳴。この想い、きっと未来へ繋がる!

第45話:三つの試練と、魂の共鳴。この想い、きっと未来へ繋がる!


風の巫女が示した三つの道。それは、私たちそれぞれの心の奥底を映し出すかのような、異なる色と気配を纏っていた。秋月先輩は迷いなく「知恵の風」の道へ、その背中には揺るぎない決意が漲っている。冬城は一瞬だけ私と先輩の方を見た後、何も言わずに、しかしその瞳の奥には静かな闘志を宿らせて「勇気の風」の道へと姿を消した。そして私は…緋和の「瑠々ちゃんなら大丈夫だよ!いってらっしゃい!瑠々ちゃんの美少女パワーで、どんな試練もイチコロだよ!」という、いつもながらの能天気な、でも心からの力強い声援を背に、一番温かく、そしてどこか切ない風が吹き抜ける「愛の風」の道へと、一歩を踏み出した。その道の先には、一体何が待ち受けているのだろうか。私のこの胸のドキドキは、恐怖なのか、それとも…期待なのか。


【秋月先輩の試練:知恵の風~古の図書館と、星詠鳥の巫女の悲しき運命~】


秋月先輩が進んだ「知恵の風」の道は、まるで古代遺跡のような、静寂と叡智えいちに包まれた石造りの回廊へと続いていた。壁には、解読不能な古い文字や、星の運行を示すかのような複雑な図形がびっしりと刻まれている。その一つ一つが、この天空の社の永い歴史と、そこに秘められた深遠な知識を物語っているかのようだ。そして、その奥には、天井まで届くほどの巨大な書架に囲まれた、円形の図書館のような空間が広がっていた。そこには、数え切れないほどの古文書や巻物が、静かにその時を待っているかのように収められている。

「これは…まるで、星の運行を記録した天文台のようだ…そして、この膨大な知識…ここに、瑠々さんたちを救う手がかりがあるのかもしれない…」

先輩は、その荘厳な光景に息をのむ。

試練は、この図書館に隠された「星詠鳥の巫女」に関する三つの謎を解き明かすことだった。それは、夏海家と秋月家の遠い過去の繋がり、そして「古き災い」を封印するために払われた大きな犠牲――特に、星詠鳥の巫女が自らの命と引き換えに災いを封じたという、痛ましくも気高い真実――を含んでいた。

先輩は、持ち前の冷静な分析力と、神社の家系で培われた古文書解読の知識、そして何よりも瑠々を想う強い気持ちを原動力に、一つ一つ謎を解き明かしていく。時には、書架に仕掛けられた巧妙な罠(例えば、特定の書物を手に取ると床が抜け落ちそうになったり、幻覚を見せる香が焚かれたりする)を、機転と、そして彼が持つ神社の清浄な気の力で切り抜ける。その真剣な横顔は、いつもの穏やかな先輩とは違う、知的な探求者の顔つきであり、その瞳は瑠々のために真実を掴もうという強い意志で輝いていた。

そして、最後の謎を解き明かした時、彼の目の前に、一羽の美しい、七色に輝く羽根を持つ鳥――まさしく「星詠鳥」――の幻影が現れ、彼に一つの小さな、星の形をした、涙のように透明な水晶を託した。それは、「星詠鳥の涙」と呼ばれる、巫女の力を増幅させ、そして傷ついた魂を癒やすための聖なるアイテムだった。

「…瑠々さん…君のその美しい笑顔を、僕が必ず守ってみせる…君の力になるのなら、僕はどんな困難にだって立ち向かうよ…」

先輩は、その水晶を手に、瑠々への想いを新たにし、そして彼女の力の「代償」に対する不安を胸に抱きながら、試練の道を後にした。


【冬城紫苑の試練:勇気の風~無限回廊と、己の闇との決別、そして新たな光~】


冬城が進んだ「勇気の風」の道は、どこまでも続くかのような、暗く冷たい、そして出口の見えない無限回廊だった。そこでは、彼の心の奥底に潜むトラウマ――大切な妹を守れなかった過去の絶望と後悔、そしてそのために「黒き月影」に身を投じ、手を汚してきた罪の記憶――が、次々と鮮明な幻影となって彼に襲いかかる。

「兄様…どうして助けてくれなかったの…?兄様のせいで、私は…!」

妹の悲痛な声が、彼の心を容赦なく抉る。彼は、何度も膝をつきそうになりながらも、その赤い瞳(今は元の黒曜石の色に戻っているが、感情が高ぶると再び赤く染まる)に宿る、決して消えることのない復讐の炎と、そして…ほんの僅かに芽生え始めた、瑠々という存在への、守りたいという新たな想いを胸に、そのおぞましい幻影に立ち向かっていく。

「黙れ…!俺はもう、何も失わない…!瑠々も…あいつらも…そして、俺自身の魂も…絶対に守り抜いてみせる!お前たちの呪縛からは、もう逃れん!」

彼は、銀色の短剣を振るい、自らの心の闇を、そして過去の過ちを、一つ一つ断ち切っていく。その戦う姿は、まさに孤高の戦士そのものであり、その瞳には、初めて見るかもしれない、涙の痕跡が微かに光っていた。

そして、ついに彼は無限回廊を突破し、その先で、風の巫女から「風魔の護符」――マガツモノの邪気を打ち払い、持ち主の勇気を増幅させ、そして何よりも、持ち主の心の闇を浄化する力を持つ――を授かる。その護符は、彼の赤い瞳の力を、ほんの少しだけ制御しやすくする効果もあるようだった。そして、その護符には、彼がずっと探し求めていた「光る欠片」と酷似した、清浄な輝きが宿っていた。

「…夏海瑠々…お前は、俺のようにはなるな…お前のその光は、決して絶望に染まらせはしない…俺が、必ず…」

冬城は、護符を握りしめ、瑠々のことを思い浮かべながら、そう小さく、しかし力強く呟いた。その横顔には、もう迷いの色はなかった。


【夏海瑠々の試練:愛の風~鏡の部屋と、向き合うべき本当の気持ち、そして仲間との絆~】


そして、私が緋和と共に進んだ「愛の風」の道。その先には、壁一面が磨き上げられた水晶のような鏡で覆われた、不思議な円形の部屋が待っていた。中央には、あの「星詠みの竪琴」が置かれている台座だけが、ぽつんと存在し、静かな光を放っている。

『星影の巫女よ…お前の本当の愛は、どこにある?お前が本当に守りたいものは、何じゃ?お前がその答えを見つけられぬ限り、この部屋から出ることは叶わぬ。さあ、その答えを、この鏡に、そしてお前自身の魂に見せてみよ』

風の巫女の声が、部屋全体に厳かに響き渡る。

鏡には、様々な幻影が映し出された。厳しくも愛情深いおばあ様の顔、いつも私を励ましてくれる緋和の太陽みたいな笑顔、そして…私を優しく見つめる秋月先輩の温かい眼差しと、ぶっきらぼうながらもどこか私を気にかけてくれている冬城の不器用な優しさ。

「私の…本当の気持ち…?私が、本当に守りたいもの…?」

私は、戸惑いながらも、自分の心の奥底を必死で見つめ直す。先輩のことは、間違いなく好きだ。彼の隣にいると、安心できて、ドキドキして、幸せな気持ちになれる。彼のあの優しい笑顔を、ずっと見ていたい。でも、冬城のことも、なんだか放っておけない。彼の孤独や悲しみに触れるたびに、胸が締め付けられるような気がする。そして、彼が時折見せる不器用な優しさに、なぜか心惹かれてしまう自分がいる。そして、何よりも、緋和のあの笑顔を、私は絶対に曇らせたくない。おばあちゃんにも、もう心配かけたくない。

(ダメよ、私!先輩一筋だって決めたじゃない!なのに、なんであいつのことまで、こんなに気になるのよ!?それに、私のこの力は、本当にみんなを守れるの…?私なんかが、そんな大それたこと、できるわけないじゃない…!)

私の心は、二人のイケメンへの想いと、自分の力への不安、そして仲間たちへの愛情の間で、激しく揺れ動く。そんな私の葛藤を映し出すかのように、鏡の中の幻影もまた、目まぐるしく変化し、私を混乱させる。

「瑠々ちゃん、大丈夫だよ!瑠々ちゃんの心に正直になればいいんだよ!難しく考えなくたっていいじゃない!瑠々ちゃんが、一番大切だって思う気持ちを、そのまま伝えればいいんだよ!どんな答えだって、私は瑠々ちゃんの味方だからね!それに、瑠々ちゃんは一人じゃないんだから!」

緋和が、私の手をぎゅっと握りしめ、力強く励ましてくれる。その言葉と、彼女の揺るぎない信頼が、私の心の霧を晴らしていく。

そうだ、私は一人じゃない。私には、こんなにも私を想ってくれる仲間たちがいる。先輩も、冬城も、そして緋和も…みんな、私にとってかけがえのない大切な存在だ。そして、私のこの力は、みんなを守るためにあるはずだ。

「私の本当の願いは…みんなが笑顔でいられること!そして、その笑顔を、私のこの力で守り抜くこと!それが、私の愛の形よ!先輩へのこのドキドキする気持ちも、冬城へのこの気になる気持ちも、緋和へのこの温かい気持ちも、全部、私の大切な想いなんだから!」

私がそう叫んだ瞬間、部屋中の鏡が一斉に砕け散り、眩いばかりの七色の光が私を包み込んだ。そして、私の手の中の「星詠みの竪琴」が、これまでにないほど美しく、そして力強い、希望に満ちた音色を奏で始めたのだ。その音色は、愛と、勇気と、そして未来への誓いを奏でているかのようだ。私の黒髪が光の中で黄金色に輝き、その瞳には、迷いのない強い意志の光が宿る。その姿は、まさに愛と美の女神アフロディーテのようだ、と緋和は後で目を潤ませながら、そしてなぜか少しだけ頬を赤らめながら教えてくれた。

光が収まると、私の手には、竪琴の他に、風が結晶化したかのような、美しい翠色の、ハートの形をした宝玉が握られていた。それは、温かく、そして力強く脈打っている。

『…見事じゃ、星影の巫女よ。お前は、真実の愛を見つけ出した。それは、特定の一人に向ける恋心だけではない。仲間を、そして世界を愛し、守ろうとする、大きく、そして尊い愛じゃ。その宝玉は、“風のハート・オブ・ウィンド”。持ち主の想いに応え、奇跡を呼び、そして真実の愛のありかを示す力を持つ。お前のその美しい魂に、風の祝福があらんことを』

風の巫女の声が、優しく、そしてどこか誇らしげに響き渡る。


三つの試練を乗り越え、再び祭壇の前に集った私たち。それぞれの顔には、疲労の色と共に、何かを乗り越えた者だけが持つ、清々しい達成感と、そしてほんの少しだけ大人びた表情が浮かんでいた。

「夏海さん、君は本当に…すごいよ。君のその愛の力、そしてその美しい魂の輝きに、僕は…言葉もないよ。君のそばにいられて、本当に幸せだ」

秋月先輩が、少し照れくさそうに、でも心からの賞賛と、そしてそれ以上の熱い想いを込めた言葉を私に贈ってくれた。そのストレートな言葉に、私の頬がまた熱くなる。先輩のその優しい瞳に見つめられると、私はもうどうにかなりそうだ。

「…フン、まあ、少しは成長したようだな、夏海瑠々。だが、まだ油断はできんぞ。お前のその力は、これからさらに大きな試練に晒されることになるだろうからな。それに…お前のその“愛の形”とやら、俺にはまだよく理解できんが…まあ、悪くはないのかもしれん」

冬城もまた、そっぽを向きながらも、その声にはほんの少しだけ、私を認めたような響きがあった。そして、彼が私の頭をポン、と軽く叩いたのは、もう気のせいなんかじゃない。その不器用な優しさが、私の心を温かくする。そして、最後の言葉は、なんだかものすごく…意味深に聞こえたんですけど!?

「瑠々ちゃん、かっこよかったよー!私も、瑠々ちゃんみたいに、みんなを笑顔にできるような、強くて優しい女の子になりたいな!」

緋和が、満面の笑顔で私に抱きついてくる。その純粋な想いが、私の心を打った。


風の精霊は、私たちに「風の神器」である「星詠みの竪琴」と「風の心」の真の力――それは、風を操り、天候を変化させ、そして何よりも、人々の心を繋ぎ、希望の光を灯す力、そしてマガツモノの邪気を祓い、封印を強化する力、さらに持ち主の真実の愛の力を増幅させる力――について語ってくれた。そして、この竪琴と宝玉こそが、次なる封印の場所、「地の記憶が脈打つ古の森」への道しるべとなることも。

「星影の巫女よ、そしてその守り手たちよ。お前たちの旅は、まだ始まったばかりだ。だが、忘れるな。お前たちのその強い絆と、清浄なる魂の輝きこそが、この世界を闇から救う唯一の希望だということを。そして、その竪琴と宝玉は、お前たちの想いに応えて、さらなる奇跡を呼ぶだろう。だが、気をつけよ…その力は、時に持ち主の魂を試すこともある…そして、お前たちの心を惑わす“二つの光”の行方もな…その選択が、お前たちの、そして世界の運命を左右するやもしれん…」

風の精霊は、最後にそう言い残すと、穏やかな風と共に、その姿を消した。後に残されたのは、清らかな風の音と、私たちの胸に灯った、新たな決意の光、そして彼の最後の言葉が残した、ほんの少しの不安と、そして…私の心の中で、さらに大きく、そして複雑に膨らんでいく、二人のイケメンへの特別な想いだけだった。

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