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第40話:炎の試練と、赤き瞳の秘密。この熱さ、火傷しそうなんですけど!

「星詠みの竪琴」を手に入れ、風の精霊から次なる封印の場所――「火の記憶が燃える地の底の洞窟」――への道しるべを得た私たちは、新たな決意を胸に、再び険しい旅路へと足を踏み出した。竪琴の弦を軽く爪弾けば、まるで風が囁くような優しい音色が響き、私たちの疲れた心を癒やしてくれる。この竪琴が、私たちの新たな力となってくれるはずだ。


数日間の旅の後、私たちはついに目的の地にたどり着いた。そこは、まるで大地の裂け目のような、巨大な洞窟の入り口だった。周囲の岩肌は黒く焼け焦げ、硫黄の匂いが鼻をつく。そして、洞窟の奥からは、ゴウゴウと地鳴りのような音と共に、尋常ではない熱気が噴き出してきていた。

「ここが…火の記憶が燃える地の底の洞窟…」

私は、思わずゴクリと唾をのんだ。その圧倒的な熱気と、禍々しいまでの炎の気配に、肌がピリピリと痛む。こんな場所に、本当に封印があるというのだろうか。

「瑠々ちゃん、大丈夫?顔、真っ赤だよ。熱中症にでもなったら大変だよ!」

緋和が、心配そうに私の額に手を当ててくれる。その手はひんやりとしていて、少しだけ気持ちがいい。

「だ、大丈夫よ、緋和。ちょっと暑いだけだから…」

強がってはみたものの、私の額には玉のような汗が浮かび、頬は自分でも分かるくらいに赤く上気している。こんな状況で、ちゃんと戦えるのかしら…。


「夏海さん、無理はしないで。この中は、想像以上に過酷な環境かもしれない。僕が先に様子を見てくるよ」

秋月先輩が、私を気遣ってそう言ってくれた。その優しい眼差しに、私の心臓がまたしてもキュンと高鳴る。先輩は、いつも私のことを一番に考えてくれる。

「いえ、先輩。私も行きます。これは、私自身の試練でもあるんですから。それに、私にはこの“星詠みの竪琴”があります。きっと、この竪琴が私たちを導いてくれるはずです」

私は、胸に抱いた竪琴をぎゅっと握りしめ、先輩に向かって力強く微笑んでみせた。その瞬間、竪琴の弦が、まるで私の決意に呼応するかのように、ポロン、と美しい音色を奏でた。私の黒髪が、洞窟から吹き出す熱風にふわりと舞い上がり、その瞳には、炎にも負けない強い意志の光が宿っていた。

先輩は、そんな私の姿を、一瞬だけ驚いたように見つめていたが、やがてふっと優しい笑みを浮かべ、「…分かったよ、夏海さん。君のその強さ、本当に尊敬する。一緒に行こう。僕が、必ず君を守るから」と言って、私の手をそっと握ってくれた。その手の温もりが、私の不安を打ち消してくれる。


「…フン、お前たちだけで大丈夫なのか?この洞窟の奥には、相当強力な炎の番人がいるはずだ。生半可な覚悟では、灰にされるのが関の山だろうな」

冬城が、腕を組み、洞窟の入り口を鋭い目つきで見つめながら、いつものようにぶっきらぼうに言い放った。でも、その声には、どこか私たちを試すような、そしてほんの少しだけ…心配しているような響きが含まれている気がした。

「あんたに言われなくても分かってるわよ!私だって、もうただ守られてるだけの女の子じゃないんだから!それに、あんただって、何かあったら助けてくれるんでしょ?…まあ、期待はしてないけど」

私も、負けじとそう言い返すと、冬城は一瞬だけ驚いたような顔をして、そしてすぐにふいと顔を背けた。その横顔が、ほんの少しだけ、柔らかい表情をしていたような気がしたのは、気のせいだろうか。この男の、こういうところが、なんだか放っておけないのよね…。


私たちは、緋和を比較的安全な入り口付近に残し、三人で洞窟の奥深くへと足を踏み入れた。中は、まるで溶鉱炉のように熱く、足元には煮えたぎる溶岩が川のように流れている場所もある。息をするのも苦しいほどの熱気と、硫黄の刺激臭が、私たちの体力を容赦なく奪っていく。

「…夏海さん、大丈夫かい?顔色が…」

「へ、平気です、先輩…!これくらい、なんてこと…」

強がってはみたものの、私の意識は朦朧とし始めていた。こんな状況で、どうやって戦えばいいの…?

その時、私の胸の「星詠みの竪琴」が、再びポロン、と美しい音色を奏でた。すると、不思議なことに、あれほど苦しかった熱気がすっと和らぎ、清涼な風が私たちの周りを吹き抜けていったのだ。

「これは…竪琴の力が、私たちを守ってくれているのか…?」

秋月先輩が、驚いたように呟く。

「…どうやら、この神器は、持ち主の危機を察知し、その力を発揮するようだな。だが、それに甘えているようでは、本当の力は身につかんぞ、夏海瑠々」

冬城は冷静に分析するが、その瞳の奥には、安堵の色が浮かんでいるように見えた。


洞窟の最深部。そこには、燃え盛る炎の中心に、まるで炎そのものが具現化したかのような、巨大な炎の獅子が鎮座していた。「火の記憶の封印」を守護する番人だ。その体からは、全てを焼き尽くさんとするほどの、圧倒的な熱波とプレッシャーが放たれている。

「何奴だ!この聖なる炎の社を汚す者どもめ!我が炎の牙にかかりたいか!」

炎の獅子が、地響きと共に咆哮する。

「私たちは、この世界の封印を守るために来ました!どうか、私たちに力を貸してください!」

私が、竪琴を構えながら必死に訴えるが、炎の獅子は聞く耳を持たないようだ。

「黙れ小娘!お前たち人間が、この聖域を汚すことなど許さん!我が炎で、全てを焼き尽くしてくれるわ!」

炎の獅子が、灼熱の炎のブレスを私たちに向かって放ってきた!


「危ない!」

秋月先輩が、私を庇うように前に飛び出し、神社の秘術である水の結界を展開する。しかし、炎の勢いはあまりにも強く、水の結界は一瞬にして蒸発してしまう。

「くっ…!なんて力だ…!」

先輩が苦悶の声を上げる。

その時、冬城が目にも止まらぬ速さで炎の獅子の懐に飛び込み、その銀色の短剣を突き立てようとする。しかし、炎の獅子の体は高熱の炎で覆われており、短剣が触れる前に溶けてしまいそうだ。

「冬城、無茶よ!」

私が叫ぶと同時に、冬城の体が炎に包まれそうになる。

その瞬間、彼の瞳が、再びあの血のように赤い色に染まり、その体から禍々しいまでの冷気が放たれたのだ!その冷気は、炎の獅子の炎を一時的に押し返し、冬城は辛うじて難を逃れる。

「…やはり、この力を使うしかないか…」

冬城は、苦々しげに呟くと、その赤い瞳をさらに妖しく輝かせ、炎の獅子に向かって、まるで氷の嵐のような冷気の刃を次々と放ち始めた。その力は、以前見たものよりもさらに強大で、そしてどこか…悲しげだった。

炎と氷、相反する二つの力が激しくぶつかり合い、洞窟全体が激しく揺れ動く。

私は、その壮絶な光景をただ見つめることしかできなかった。冬城のあの赤い瞳の力は、一体何なの…?そして、あの力を使うたびに、彼は何を失っているの…?


「夏海さん、今だ!冬城くんが時間を稼いでくれているうちに、君のその竪琴の力で、炎の獅子の心を鎮めるんだ!」

秋月先輩の叫び声で、私はハッと我に返った。そうだ、私にはこの「星詠みの竪琴」がある!

私は、竪琴を構え、心を込めて「星詠鳥の唄」を奏で始めた。その清らかで優しい音色は、荒れ狂う炎と氷の中で、一筋の希望の光のように響き渡る。私の歌声と竪琴の音色が、炎の獅子の荒ぶる心に、ゆっくりと、しかし確実に届いていくのを感じた。

その時、炎の獅子の燃え盛る瞳の奥に、ほんの僅かだけ、苦しみと悲しみの色が浮かんだような気がした。

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