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第30話:もう一度だけ信じてみる…!先輩の言葉も、あいつの不器用な優しさも、そして…私の力も!

冬城紫苑と、「黒き月影」の刺客との戦いは、私の部屋を半壊させながらも、なお激しさを増していた。赤いオーラを纏った冬城の剣戟は、確かに刺客を圧倒しているように見える。けれど、彼の呼吸は徐々に荒くなり、その額には玉のような汗が浮かんでいる。あの赤い瞳の力は、彼自身にも相当な負担を強いているのかもしれない。その整った横顔には、普段は見せない焦りの色が滲んでいた。

私は、ただ壁際にうずくまり、震えながらその壮絶な光景を見つめていることしかできなかった。自分の無力さが、嫌というほど骨身に染みる。私がもっと強ければ…私のこの力が、ちゃんとコントロールできれば…冬城だって、こんな無茶をする必要はなかったのかもしれないのに。先輩だって、あんな風に私を庇って傷つくこともなかったのかもしれない…。

(ダメだ…私なんて、やっぱりいない方が…)

心の奥底から、そんな黒い感情が湧き上がってくる。


「瑠々ちゃんのバカ!いつまでそうやってメソメソしてるつもりなのよ!そんなの瑠々ちゃんらしくないよ!」

不意に、私の鼓膜をつんざくような、聞き慣れた、そして今は何よりも聞きたかった声が響いた。ハッと顔を上げると、そこには息を切らし、肩で大きく息をしながらも、その瞳に強い意志の光を宿した緋和が立っていた。その手には、なぜかおばあ様の部屋にあったはずの、古びた桐の小箱――資料室で見つけたものと対になる、あの秋月先輩が持っていたものと酷似した箱――が、大切そうに握られている。

「緋和…!?なんでここに…危ないから逃げて!それに、その箱は…!?」

「逃げるわけないでしょ!瑠々ちゃんがこんなに苦しんでるのに、私だけ安全な場所にいるなんて、そんなの親友じゃない!それに、この箱、おばあ様が『瑠々に渡してくれ』って…。瑠々ちゃんが信じられなくても、私は瑠々ちゃんを信じてる!秋月先輩も、あのスカした転校生だって、絶対に瑠々ちゃんを裏切ったりしない!だって、瑠々ちゃんは、こんなにも優しくて、強くて、そして…とっても可愛いんだから!私の自慢の親友なんだから!」

緋和の、涙ながらの、しかし力強い言葉が、私の心の奥底に突き刺さる。その真っ直ぐな瞳は、一切の迷いもなく私を見つめていた。ああ、私、なんて馬鹿だったんだろう。一番大切な友達のこの想いを、見失っていたなんて。彼女の言葉が、私の凍てついた心に、小さな灯火を灯してくれた。


「夏海さん…!」

その時、部屋の入口から、もう一つの、切実な声がした。秋月先輩だった。彼の顔には、深い疲労の色と、そして私への痛切なまでの心配が浮かんでいる。その手には、彼の家の神社に伝わるという、清浄な気を放つ古いお守りが握られていた。そのお守りは、七夕の夜に見たものよりも、さらに強い光を放っているように見えた。

「夏海さん、お願いだから、僕たちの言葉を信じてくれ!僕は、絶対に君を裏切ったりしない!君のことが…君のことが、本当に大切なんだ!君の笑顔が、僕にとって何よりも…何よりも守りたいものなんだ!だから、お願いだ…もう一度、僕を信じてほしい…!」

先輩は、刺客の攻撃の余波で飛び散る瓦礫を避けながら、必死の形相で私に叫ぶ。その声は、雨音と剣戟の音にかき消されそうになりながらも、確かに私の心に届いた。彼の瞳は、嘘偽りのない、真摯な想いで潤んでいた。

そして、彼が持っていた「古い木箱」――緋和が持ってきた桐の小箱と対になるはずの、秋月家の守りの道具――が、まるで彼の言葉に呼応するかのように、淡く、しかし力強い、清らかな光を放ち始めたのだ。その光は、私の力の暴走を鎮め、私の心を安定させるための、古の知恵が込められたものだったのかもしれない。彼が私に隠し事をしていたのは、この道具を安全に私の元へ届け、そして私を危険から守るためだったのだ。その真実が、私の胸を熱くする。先輩の優しさは、本物だったんだ…!


「…夏海瑠々、お前はまだ、自分の力の本当の可能性に気づいていない。信じろ…お前自身を、そして…俺たちを。お前のその力は、破滅のためだけにあるのではないはずだ。お前がそれを信じなければ、誰が信じるというんだ」

激しい戦いの最中、冬城が、一瞬だけ私を振り返り、そう言った。その赤い瞳の奥に、ほんの僅かだけ、私への信頼と、そして何かを託すような、熱い光が宿っているように見えた。彼は、私を「獲物」と言ったけれど、その言葉の裏には、もっと別の、複雑な想いが隠されているのかもしれない。彼だって、私を信じてくれている…?

「…それに、お前がそんな腑抜けた顔をしていると、見ていて反吐が出る。さっさといつもの憎まれ口でも叩いてみせろ」

付け加えられたその言葉は、相変わらずの憎まれ口だったけれど、なぜか私の頬がほんのり赤くなるのを感じた。この男、本当に不器用なんだから…!


緋和の言葉、秋月先輩の想い、そして冬城の不器用な激励…。

仲間たちの温かい心が、私の凍てついていた心を、ゆっくりと、しかし確実に溶かしていく。

そうだ、私は一人じゃない。私には、こんなにも私を信じてくれる人たちがいる。

そして、私のこの力は、決して誰かを不幸にするためだけのものじゃないはずだ。この力で、みんなを守れるかもしれない。ううん、絶対に守るんだ!

私は、もう迷わない。

「私は…もう一度だけ、信じてみる…!先輩の言葉も、緋和の友情も、そして…あいつの、あのムカつくけど、どこか放っておけない不器用な優しさも…!そして何よりも、私自身のこの力を!この力で、みんなを笑顔にしてみせる!」


心の闇が完全に晴れていくのを感じる。それと同時に、私の右手首の「星影の印」が、かつてないほどの眩い、そして清浄な黄金色の光を放ち始めたのだ。それは、まるで夜明けの太陽のように、部屋全体を、そして私の心をも明るく照らし出す。その光は、私の心の迷いを全て洗い流してくれるかのようだ。

「これは…!瑠々ちゃんの光が、前よりもずっと…綺麗で、温かくて…なんだか、涙が出てきちゃうよ…!」

緋和が、息をのんでその光景を見つめている。その瞳には、もう恐怖の色はなく、ただ純粋な感動と喜びが溢れていた。

私の体から溢れ出す黄金色のオーラは、もはや暴走する力の奔流ではなく、明確な意志を持った、清らかで強大なエネルギーへと変わっていた。その光の中で、私の黒髪は絹のように輝き、瞳は迷いのない金色に染まっている。鏡を見なくても分かる。今の私は、きっと、これまでのどんな時よりも、強く、そして美しく輝いているはずだ。この力が、私の本当の姿。

「私は、もう迷わない!私の大切な人たちを、絶対に守ってみせる!それが、星影の印を持つ者としての、私の覚悟よ!そして、私の選んだ道なんだから!」

その覚悟と共に、私は刺客に向かって真っ直ぐに立ちはだかった。その姿は、まるで古の伝説に語られる、星影の巫女そのものだった。その背中には、見えないけれど、仲間たちの温かい想いが確かに寄り添っているのを感じた。


「な、なんだこの小娘は…!?さっきまでとは、まるで別人じゃないか…!その力、その気高さ…まさか、完全に覚醒したというのか!?そんな馬鹿な…!」

刺客が、初めて恐怖の色を浮かべて後ずさる。その禍々しいオーラが、私の放つ黄金色の光によって、明らかに押されているのが分かった。

「ええ、そうよ。私はもう、自分の運命から逃げない。そして、あんたなんかに、私の大切なものを、これ以上傷つけさせたりはしないんだから!覚悟しなさい!」

私は、両の手のひらを刺客に向け、ありったけの想いを込めて、黄金色の浄化の光を解き放った。それは、ただ破壊するだけの力ではない。闇を祓い、光をもたらす、希望の力だ。そして、私の大切な人たちを守るための、愛の力だ。

その光は、刺客の黒炎の大鎌をいとも簡単に霧散させ、そして彼の禍々しいオーラを、まるで陽光が朝霧を消し去るように、浄化していく。

「ぐあああああっ!こ、この光は…!我が主の力が…!そ、そんな馬鹿な…!ありえない…!この私が、こんな小娘ごときに…!」

刺客は苦悶の叫び声を上げ、その体は徐々に黒い粒子となって崩れ始めていた。その瞳には、信じられないという絶望の色が浮かんでいる。


「しかし…これで終わりではない…お前の本当の試練は、これからだ…!その力が、世界に何をもたらすのか…楽しみに見ているがいい…!」

刺客は、最後に不吉な言葉と嘲笑を残し、完全に消滅した。

その直後、学園の上空に、まるで空が裂けたかのような巨大な黒い亀裂が走り、そこから底知れぬ邪気を放つ、真の黒幕の影(あるいは、その声だけ)が、雷鳴と共に響き渡った。その声は、男とも女ともつかない、不気味で歪んだ響きを持っていた。

『…見事だ、星影の巫女よ。そして、その哀れな仲間たち。だが、これはほんの余興に過ぎぬ。お前たちの本当の絶望は、これから始まるのだ。楽しみにしているがいい…この星影高校と共に、お前たちの魂が闇に染まる日を…!フハハハハハ!』

その声は、絶対的な力と、そして底知れない悪意に満ちていた。私たちに、明確な宣戦布告をしてきたのだ。

でも、もう私は一人じゃない。私の隣には、信じられる仲間たちがいる。この絆がある限り、私たちは絶対に負けない!そして、私のこの力は、きっとみんなを笑顔にできるはずだ!

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