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第21話:願いが叶う銀杏の木って、実は呪いの木だったの!?ていうか、あの刺客、強すぎでしょ!

「…どうやら、招かれざる客が、我々の獲物を横取りしに来たようだな。それも、随分と性急なことだ」

冬城のその言葉通り、学園の周囲に漂う禍々しい気配は、時間の経過と共にますます濃密になり、まるで私たちを包囲するように迫ってきていた。もう、悠長に作戦を練っている暇はない。私たちは、最初の封印が隠されているという「学園の東、古き銀杏の木」へと、急ぎ足で向かうことになった。私の心臓は、期待と不安で、破裂しそうなくらいドキドキしている。


「瑠々ちゃん、本当に大丈夫なの…?なんだか、すごく嫌な予感がするんだけど…それに、瑠々ちゃん、顔色が真っ青だよ?」

旧校舎を抜け、中庭へと続く渡り廊下を歩きながら、緋和が不安そうに私の袖を掴む。その手は、小刻みに震えていた。今日の彼女は、いつもの太陽みたいな笑顔はどこへやら、心配で泣き出しそうな顔をしている。そんな顔しないでよ、緋和。私まで不安になっちゃうじゃない。

「大丈夫よ、緋和。私たちがいるじゃない。それに、私だって、もうただ守られてるだけじゃないんだから。この前の美術準備室の時みたいに、私が緋和を守ってみせるわ!」

私は、緋和の手をぎゅっと握り返し、できるだけ明るい声で、そして少しだけ胸を張って言った。でも、本当は私も、足が震えるくらい緊張していた。私のこの言葉、ちゃんと力強く聞こえているかしら。

「夏海さんの言う通りだよ、緋和ちゃん。僕たちが必ず君を守る。だから、安心して。それに、夏海さんのその強い瞳、すごく綺麗だよ。きっと大丈夫だ」

秋月先輩が、緋和の頭を優しく撫でながら、いつものように穏やかな声で言う。そして、私に向かって、太陽みたいに眩しい笑顔を向けてくれた。その声には、不思議と人を安心させる力がある。そして、「綺麗」だなんて…先輩、そんなことサラッと言わないでください!顔が熱くて爆発しそうです!緋和も、先輩の言葉に少しだけ顔をほころばせた。

(先輩の笑顔、反則すぎます…!でも、その言葉、すごく嬉しい…!頑張らなくちゃ!)


銀杏の木は、中庭の片隅、今は使われていない古いテニスコートの脇に、まるで学園の歴史を見守るかのように堂々とそびえ立っていた。その太い幹には、生徒たちが願い事を書いた色とりどりの短冊が、風に揺れてカサカサと音を立てている。「〇〇くんと両想いになれますように」「次のテストで100点取れますように」…そんな微笑ましい願い事の数々。私も、いつかこんな風に、普通の願い事を書ける日が来るのかしら…。

でも、その一方で、この木には「願い事を書いた短冊を結ぶと恋が叶う」というロマンチックな伝説と同時に、「木を傷つけた者には不幸が訪れる」「夜中に木の下で告白すると、相手の魂が木に吸い取られる」なんていう、不気味な噂もあった。

そして今、その木の周囲には、明らかに禍々しい、淀んだ気が渦巻いていた。昼間だというのに、そこだけが薄暗く、まるで異界への入り口のようだ。木の葉一枚一枚が、まるで私たちを拒絶するかのように、不気味にざわめいている。

「…間違いない。古文書に記された、“星詠鳥の羽根舞う場所”とは、この銀杏の木のことだわ。見て、この紋様…」

私は、木の根元に、古文書で見たのと同じ「鳥の羽根を模した紋様」が、うっすらと苔に覆われながらも、確かに刻まれているのを見つけた。その紋様は、まるで私たちを待っていたかのように、微かな光を放っているように見えた。その光は、どこか懐かしくて、そして少しだけ悲しい色をしていた。

私が、恐る恐るその紋様に手を触れると、紋様が淡く、しかし力強く光り輝き、ゴゴゴ…という地鳴りのような音と共に、銀杏の木の根元の地面の一部が、ゆっくりと音を立てて動き出したのだ!その瞬間、私の髪がふわりと風に舞い、その光景はどこか幻想的で、緋和は「わぁ…!」と小さな感嘆の声を漏らした。

「きゃっ!な、何が起こったの!?地震!?」

緋和が悲鳴を上げる。

現れたのは、地下へと続く、暗く湿った石の階段だった。その奥からは、ひんやりとした、そしてどこか懐かしいような、古びた土の匂いが漂ってくる。その匂いは、私の記憶の奥底にある、何か大切なものを呼び覚ますような、そんな不思議な感覚を伴っていた。

「…どうやら、ここが最初の封印の場所への入り口らしいな。夏海瑠々、お前のその“特別な目”は、伊達ではないようだな」

冬城が、冷静に状況を分析する。その瞳は、暗い地下通路の奥を鋭く見据えていた。そして、最後の言葉は、ほんの少しだけ、私を認めたような響きがあったような…いや、気のせいよね、絶対に。


「瑠々ちゃん…私、やっぱりここで待ってる…なんだか、すごく怖いよ…足が震えて動けないの…」

緋和が、顔面蒼白で後ずさる。その瞳は恐怖に潤み、今にも泣き出してしまいそうだ。無理もない。この先には、私たちの想像を絶するような何かが待ち受けているのかもしれないのだから。

「緋和はここで待ってて。大丈夫、私たちが必ず戻ってくるから。絶対に、緋和のことは私が守るからね!」

私は、緋和の肩を優しく叩いた。そして、秋月先輩と冬城に向き直る。

「私が行くわ。これは、夏海家の…ううん、私の問題でもあるんだから。私が、この目で確かめなくちゃいけない。それに、みんなを危険な目に遭わせるわけにはいかないもの」

震える声だったかもしれない。でも、その瞳には、確かな決意の光が宿っていたはずだ。私のこの力が、みんなを守るためにあるのなら、もう逃げたりしない。たとえ、それがどんなに恐ろしいことであっても。私の白い肌は、決意の色にほんのりと上気していた。

「夏海さん…君は本当に強いね。その勇気、僕も見習わなくては。でも、無茶はしないでくれよ。僕が必ず君を守るから。これは、男の約束だ」

秋月先輩が、私の手を強く、そして優しく握りしめた。その温かさと、真摯な眼差しに、私の心は勇気で満たされていく。彼の大きな手が、私の手を包み込む感触が、なんだかすごく…安心する。

(先輩…ありがとうございます。私も、先輩のことを、絶対に守りますから…!このドキドキは、きっと先輩への想いの強さの証のはず…!)

冬城は、そんな私たちの様子を黙って見ていたが、やがてふっと息を吐くと、「…足手まといにだけはなるなよ、夏海瑠々。お前のその綺麗な顔が、傷物になっても俺は知らないぞ」と、いつものようにぶっきらぼうに、そしてなぜか少しだけ顔を背けながら言い放った。でも、その声には、ほんの少しだけ、心配するような響きが含まれていたような気がしたのは、きっと気のせいではないはずだ。それに、「綺麗な顔」って…この男、たまにものすごく恥ずかしいことをサラッと言うんだから!


私たちが地下への階段を下りようとした、その瞬間だった。

「――ククク…ようやくお出ましか、夏海家の小娘。そして、その愛すべき仲間たちよ。わざわざこの“静寂のサイレント・クロウ”様がお迎えにあがったのだ。光栄に思うがいい」

どこからともなく、まるで空間が歪むかのように、黒い影が舞い降り、私たちの前に立ちはだかった。それは、全身を漆黒の、体にぴったりとフィットした特殊な装束で覆い、その手には月光を反射して鈍く光る、鋭く研ぎ澄まされた鉤爪かぎづめを装備した、見るからに不気味な刺客だった。その顔は不気味な仮面で隠され、表情は窺えないが、仮面の下からのぞく瞳だけが、まるで獲物を狙う爬虫類のように冷たく、そして残忍な光を放っている。その全身からは、死の匂いと、禍々しいオーラが立ち昇っていた。

「夏海瑠々…お前のその“星影の印”の力は、我ら“黒き月影”がいただく。大人しくこちらへ来い。さすれば、苦しまずに、この美しい学園と共に永遠の眠りにつかせてやろう」

刺客は、感情のない、まるで機械のような冷たい声で告げる。その圧倒的な威圧感と、全身から放たれる禍々しいオーラに、私は息をのんだ。これが、「黒き月影」の刺客…!月影先生とはまた違う、純粋なまでの殺意と破壊衝動を感じる。そして、私たちのことを知っている…!?

「誰があんたなんかに、瑠々ちゃんを渡すもんですか!瑠々ちゃんは、私の一番大切な友達なんだから!」

「夏海さんには、指一本触れさせない!彼女のその美しい笑顔を、お前なんかに曇らせる権利はない!」

冬城と秋月先輩が、同時に叫び、私を庇うように前に出る。冬城の銀の短剣が月光のように煌めき、その切っ先は正確に刺客の急所を狙っている。秋月先輩の神社の道具が清浄な光を放ち、その光は刺客の禍々しいオーラをわずかに押し返している。二人の息の合った連携攻撃が、刺客を襲う。その姿は、まるで伝説の勇者のようだ。

しかし、刺客はまるで影のようにその攻撃を軽々とかわし、逆に音もなく鋭い爪で反撃してきた。その動きは、人間のそれを遥かに超越しており、目で追うことさえ難しい。まるで、風そのものになったかのようだ。

「ククク…その程度か?“星詠鳥”の守護者と、“月の巫女”の血を引く者にしては、随分と手応えがないな。もっと楽しませてくれよ、この“静寂の爪”様をな!」

刺客は、嘲るように笑う。その言葉に、私と秋月先輩はハッとした。星詠鳥…月の巫女…?それは、古文書に記されていた言葉…!この刺客、私たちのこと、そして私たちの家系のことまで知っているというの…!?

刺客は、音を消し、気配を断ち、相手の死角から攻撃を仕掛ける能力を持っているようだ。「静寂のサイレント・クロウ」――その異名は伊達ではなかった。彼の動きは、まるで悪夢の中の出来事のように、予測不可能で、そして致命的だ。


冬城と秋月先輩の連携も、刺客の神出鬼没な動きの前には徐々に精彩を欠き、二人は確実に追い詰められていく。先輩の頬を、刺客の爪が浅く切り裂き、鮮血が飛び散った。その赤い血が、私の白いワンピースに数滴飛び散り、まるで不吉な花を咲かせたかのようだ。冬城もまた、これまでにない苦戦を強いられ、その呼吸は荒くなっている。彼の銀髪が、汗で額に張り付いていた。

「先輩っ!冬城!」

仲間たちが傷ついていく姿を目の当たりにし、私の心の中で何かが弾けた。恐怖よりも、怒りが、そして大切な人たちを守りたいという強い想いが、全身を駆け巡る。もう、見てるだけなんて嫌だ!私のこの震える手は、恐怖のためだけじゃない!

「私が…私がみんなを守るんだ!」

私の瞳が金色に輝き、その手には再び黄金色の光が集まり始める。それは、以前よりもずっと強く、そして確かな意志を持って。私の本当の力が、今、目覚めようとしていた。私の黒髪が、まるで意思を持ったかのように逆立ち、その白い肌は内側から輝きを放っている。

「夏海瑠々…!その力、今こそ解放する時だ!お前のその美しい魂の輝きを、見せてみろ!」

冬城の叫び声が、私の背中を押した。その声には、いつになく熱いものがこもっていた。

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