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第13話:緋和は私が守る!…って、先輩とあいつ、なんでそんなに強いの!?

第13話:緋和は私が守る!…って、先輩とあいつ、なんでそんなに強いの!?


ドン!ドン!ドン!

会議室のドアが、まるで巨大な攻城兵器で打ち付けられているかのように、激しく揺れ動く。ミシミシと嫌な音を立て、今にも蝶番が吹き飛びそうだ。ドアの隙間からは、黒く太い、まるで古木の根のような禍々しい触手が、ぬるりと侵入し、私たちを捕らえようと蠢いている。その先端は鋭く尖り、不気味な粘液を滴らせていた。その光景は、ホラー映画のワンシーンよりもずっと現実的で、おぞましい。

「きゃあああっ!いやぁぁっ!助けて瑠々ちゃーん!」

緋和が恐怖で金切り声を上げ、私の腰にぎゅっとしがみついてくる。その体は小刻みに震え、顔は恐怖で真っ青だ。私も、心臓が喉から飛び出しそうなくらいバクバクと鳴っている。こんな恐ろしいもの、今まで見たこともない…!でも、緋和がこんなに私を頼ってくれているのに、私が怖がってどうするの!


「くそっ、もうここまで…!夏海さん、緋和ちゃんを頼む!絶対に守り抜け!」

秋月先輩が叫び、リュックから取り出した数枚の白木の札を、目にも止まらぬ速さでドアに向かって投げつける。お札はドアに吸い込まれるように張り付くと同時に、淡く、しかし力強い清浄な光を放ち、侵入しようとする触手を一瞬だけ怯ませた。その光は、まるで朝の陽光のように温かく、私たちの恐怖をわずかに和らげてくれる。

「これは…神社の秘伝の清めの札だ!気休めかもしれないが、少しは時間を稼げるはず…!冬城くん、援護を!」

先輩は、さらに懐から神楽鈴かぐらすずを取り出し、シャリン、シャリン、とリズミカルに、そして厳かに鳴らし始める。その清らかな音色は、この絶望的な状況の中で、不思議と私たちの心を奮い立たせるようだった。いつもの穏やかで優しい先輩からは想像もつかない、凛々しく、そして迷いのない力強い姿。その真剣な横顔は、夕日に照らされた時よりもずっと、神々しく、そして…すごく、かっこよかった。


「…雑魚が、調子に乗るな。塵芥ちりあくたにしてくれる」

冬城が、冷たく、そして絶対的な自信に満ちた声で言い放つ。その手には、いつの間にか例の銀色の短剣が握られていた。彼は、ドアの隙間から伸びてくる触手に向かって、まるで氷上のフィギュアスケーターのように、美しくも鋭い動きで短剣を振るう。シュッ、シュッ、という風切り音と共に、触手は次々と断ち切られ、黒い液体を撒き散らしながら床に落ちていく。その光景は、あまりにも現実離れしていて、私はただ息をのんで見つめることしかできなかった。彼の銀髪が、戦いの動きに合わせてサラサラと揺れ、その瞳は獲物を狩る狼のように、冷たく鋭い光を放っている。この男、本当に何者なの…!?強すぎるでしょ、反則よ!


しかし、マガツモノの力は想像以上だった。切っても切っても、新たな触手が次々とドアの隙間から伸びてくる。先輩のお札の光も、徐々に弱まり始めている。

「まずい…!このままじゃ、ドアが…!持ちこたえられない!」

先輩の焦ったような声。その言葉通り、ドアがメリメリと音を立てて大きく歪み、ついに蝶番の一つが弾け飛んだ!バキィィン!という轟音と共に、ドアの一部が内側へと吹き飛ぶ。


「緋和っ!」

ドアが破られる寸前、私は咄嗟に緋和の前に立ちはだかっていた。恐怖で足が竦みそうになるのを、必死で堪える。ここで私が倒れたら、緋和はどうなってしまうの…!?先輩だって、冬城だって、いつまでもつか分からない!

「緋和には…緋和には、指一本触れさせないんだから!あんたなんかに、絶対に!」

自分でも驚くほど大きな声が出た。その瞬間、私の体の中から、またしてもあの温かい、そして力強い何かが湧き上がってくるのを感じた。それは、美術準備室で感じたものよりも、ずっと強く、そして明確な意志を持った力。

私の両手が、淡い黄金色の光に包まれる。その光は、まるで私の怒りと決意が形になったかのように、力強く脈動している。

その光景に、冬城と秋月先輩が、一瞬だけ驚愕の表情で私を見つめたのが分かった。

「…すごい…瑠々ちゃん…あったかい光…キラキラしてる…」

私の背後で、緋和が小さな声で呟いた。その声に、私は勇気づけられる。そうよ、私だって、ただ守られてるだけじゃないんだから!


「…やはりな。君の力は、ただの防御だけではないらしい。その輝き…まさか、浄化の光か?」

冬城が、私の放った光を見つめながら、どこか納得したように呟いた。そして、彼は私に向かって叫ぶ。その声は、いつもより少しだけ、熱を帯びているように聞こえた。

「夏海瑠々!その光を、もっと集中させろ!奴の核は、おそらくあのドアの向こう側、この部屋に最も近い場所にある!そこを叩けば、この雑魚どもは動きを止めるはずだ!」

核…?私にそんなことができるの…?でも、やるしかない!緋和のために、先輩のために…そして、私自身の平穏な日常を取り戻すために!

私は、両手をドアに向け、意識を集中させる。緋和を守りたい。先輩を助けたい。そして、この悪夢のような状況を終わらせたい。その強い想いが、私の体の中の力をさらに増幅させていく。

私の手から放たれる光は、次第に収束し、鋭い槍のような形を取り始めた。その先端は、禍々しい気を放つドアの向こう側を、真っ直ぐに見据えている。

「いっけえええええええっ!」

私の叫びと共に、黄金色の光の槍が、ドアを貫通し、その向こう側で何かが爆ぜるような音と、断末魔のようなおぞましい叫び声が響き渡った。

途端に、あれほど激しかったドアへの攻撃がピタリと止み、部屋に侵入していた触手も、まるで灰のようにサラサラと崩れ落ちて消えていった。


「…やった…の…?」

全身の力が抜け、私はその場にへなへなと座り込みそうになる。呼吸が荒く、心臓がまだ激しく鼓動を打っている。自分の手を見つめる。本当に、私があんなことを…?

「夏海さん!すごいじゃないか!君のおかげで助かったよ!本当に、ありがとう!」

秋月先輩が、興奮した様子で私の肩を支えてくれる。その手は、少し震えていた。彼の顔には、安堵と、そして私への賞賛の色が浮かんでいる。そんな風に真っ直ぐ見つめられたら…照れるじゃないの、バカ。

「…別に、私一人の力じゃないですから…先輩と、その…あいつのおかげでもありますし…」

思わず、いつもの調子でそっけなく答えてしまう。ああもう、なんで素直に「どういたしまして」って言えないのよ、私は!

「…瑠々ちゃん…かっこよかったよぉ…!ヒーローみたいだった!」

緋和も、涙目で私に抱きついてくる。その温かさに、私も少しだけ涙が滲んだ。

「…まあ、及第点といったところか。だが、油断はするな。あれは、おそらく本体ではない。ただの斥候のようなものだろう。それに、君のその力、まだ制御が甘すぎるな」

冬城は、相変わらずのクールな口調だったが、その瞳の奥には、ほんの少しだけ、私に対する評価が変わったような、そして…ほんの僅かだが、何かを認めたような色が浮かんでいる気がした。そして、彼が私の頭をポン、と軽く叩いたのは、きっと気のせいだ。うん、絶対気のせい。だって、この男がそんなことするわけないもの。…でも、ちょっとだけ、ドキッとしたのは否定できない。


最初の襲撃は何とか退けた。けれど、学園を覆う異様な雰囲気は、少しも変わっていない。むしろ、さらに濃密な、そして得体の知れない何かの気配が、私たちに迫ってきているのを感じる。

「…これから、どうすればいいんだろう…」

私の呟きに、誰も答えることはできなかった。ただ、窓の外の、どこまでも続くかのような深い闇だけが、私たちの不安を煽るように広がっていた。

私たちは、ひとまず安全を確保するために、そしてこの異変の真相を探るために、暗く不気味な校内を探索し始めることを決意した。私の手には、まだあの黄金色の光の残滓が、微かに揺らめいているような気がした。そして、私の心臓も、恐怖と、そしてほんの少しの期待で、まだドキドキと鳴り続けていた。

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