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「うん?」


「親になるのに、覚悟ってやっぱり必要よね」


腕の中の彼女は、どこか遠い目をしていた。


「わたしが生まれる前にお父さん死んじゃったから、そういうの分からなかったわ。ごめんなさいね」


「あっ謝ることじゃないよ! 僕がまだ、精神的に幼いだけだから」


彼女の父親がすでに亡くなっていたことは知っていたけれど、まさか彼女が生まれる前に死んでいたとは思わなかった。


「でもそうなると、キミのお母さんは強いね。たった一人でキミを育ててきたんだから」


「う~ん。でもウチの家系、母子家庭が多いの。だからたくましいのよ」


「そう、なんだ」


現代では離婚は珍しくない。


だけど触れていいことでもないので、僕は話題を終了させた。




それから5年後―。


僕は彼女の母親が言った通り、人気弁護士となった。


個人事務所を2年前から立ち上げ、街中のビルにオフィスを設立した。


今では30人もの部下を持ち、毎日忙しくも充実した日々を送っていた。


そんな中、彼女が言い出した。


「ねぇ…。そろそろ約束の5年目よ。子供、作らない?」


白い顔を赤く染め、彼女は囁いた。


「そう、だな。そろそろ良いかもな」


仕事が忙しいことから、お互いの両親は孫のことについては何も言い出さなかった。


けれど同じ歳の人達は、もう1人か2人の子供がいてもおかしくなくなった。


仕事も安定してきたし、彼女との二人っきりの生活は十分に楽しんだ。


「それじゃあ、寝室へ行きましょう」


僕は逸る彼女に手を引かれ、寝室に入った。


子供ができれば、彼女をめいっぱい愛することが難しくなる。


だから後悔しないように、しばらくはガマンできるように、彼女をたくさん愛した。


夜が更け、いったん休憩することにした。


「子供は女の子と男の子、どっちがいい?」


ベッドの中で魅力的な笑みを浮かべながら、彼女が聞いてきた。


「僕はどっちでも良いな。でもまあ望むならキミに似た美人さんで、僕の成績優秀な部分を引き継いでくれるなら、どちらでも構わないよ」


「ふふっ。わたしもよ」


僕の首に腕を回し、彼女は耳元に唇を寄せた。


「…ねぇ、覚えてる? わたしを必ず幸せにする約束」


「もちろんだよ」


「わたしの今の望みは、子供を生むことなの」


彼女の唇が肌に触れながら、ゆっくりと首元に下りる。


「元気で立派な子供を産むこと…。その為に、協力してくれる?」


「もちろんだよ。僕にできることなら何でも」


本心から出た言葉だった。


彼女はニッコリ笑うと、歯を見せた。


まるで肉食獣のような歯に、思わず背筋が寒くなる。


「嬉しい! それじゃああなたの血・肉、食べさせてね」


「えっ…」


ガッ!


「ごぶっ!?」


彼女の歯が、僕の首に食い込んだ。


ゴキッ グシャッ ビシャッ


そのままノドを食い千切られ、僕は死んだ。


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