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その後、彼女の親に会いに行った。
彼女は母子家庭で、母親は日本にいくつもの会社を経営する地位と権力を持っている人だった。
少し気後れしながら挨拶に行った。
母親はとても22歳の娘がいるとは思えないぐらい、若くてイキイキした人だった。
「結婚? 良いわよ。好きにしなさいな」
そして結婚に大賛成だった。
「いっ良いんですか? 僕、まだ社会人になったばかりで…」
「構わないわよ。娘からあなたがどれだけ優秀かは聞いているの。それだけの優秀さなら、すぐに人気弁護士になれるわよ」
「はあ…」
妙にあっさりした態度に、思わず脱力してしまう。
「お金に困ったら、素直に言ってね? こっちは仕事で返してくれれば良いから」
あっ、なるほど。
会社経営はいろいろとある。
いざという時に、僕に弁護してほしいのか。
「分かりました。ではお嬢さんをいただきます」
「ええ、どうぞ」
彼女の母親からは賛成を得た。
僕の両親は最初は渋い顔をしていたけれど、彼女の母親が経営する会社の名前を聞くと、コロッと態度を変えた。
…この時ほど、両親を恥ずかしく思ったことはない。
けれど一応両家の了解を得たということで、僕らは結婚することにした。
彼女の母親が費用を全額出してくれたおかげで、結婚式も盛大に行えた。
しかも二人の新居も、彼女の母親が用意してくれた。
何でも知り合いの人が持っているマンションなので、家賃も格安にしてくれた。
「…こんなに幸せだと、逆に不安になるな」
「どうして? みんなに祝福されて、嬉しいでしょう?」
「うん…そうだね」
新居のリビングに、二人肩を寄せ合っていた。
「あっ、ねぇ、子供のことなんだけど…」
「えっ!? できたの?」
「まだよ。でもいつ頃ほしい?」
「いつ頃って、そうだな…」
僕は少し考えた。
まだ弁護士になったばかりで、覚えることやることは山のようだ。
そして彼女との新婚生活も、できればもう少し味わっていた。
「…できれば5年ぐらいは後回しにしないか? まだ父親になる覚悟ができていないんだ」
「5年…となると、27歳ね。うん、わたしは構わないわ」
「ありがとう!」
僕はぎゅっと彼女を抱き締めた。
「でも…」