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僕が何も言わずとも、彼女は全てを察してくれていた。
どんなワガママを言っても、笑顔で受け入れてくれた。
だから…告白した。
「僕、キミが好きなんだ。その、もし良かったら結婚を前提に付き合ってくれないかな?」
「結婚を前提に?」
「うん! 付き合うなら、真面目に真剣に交際したいから」
真っ赤な顔で僕が言うと、彼女は涙を浮かべながら笑顔になった。
「…嬉しい。その言葉、待ってたの」
「ほっ本当に? 本当に僕なんかで良いの?」
正直言って、僕の容姿は平凡だった。
どこにでもいて、集団の中では埋もれて消えそうなぐらい普通。
会話も彼女を楽しませるような内容はあまり言えない。
せいぜい今まで得た知識を語るぐらい。
今まで人付き合いがあんまりなかったせいか、口下手になってしまったことを悔やんでいた。
だけど彼女は頷いてくれた。
「そんなあなたが良いの。わたしも、あなた良い」
そして僕の目を見て、ハッキリ言ってくれた。
「っ! ありがとう! 必ずキミを幸せにするよ!」
「うん。信じているわ、その言葉」
その日から僕は変わった。
絶対に弁護士になる為に、さまざまな勉強をはじめた。
ただ試験に受かれば良いというものじゃない。
人付き合いが一番難しいのだ。
だから社交性を学び、人間関係を学んだ。
その後の二年は、僕の人生の中で一番充実していた。
勉強も人間関係も、そして彼女との付き合いも、全てにおいて宝物と言える経験を積んだ。
そして僕は見事に弁護士の資格を取ることができた。
僕は弁護士の資格を取った時、心に決めた。
彼女にプロポーズしよう、と。
もちろん、新米弁護士がいきなり高給取りにはなれない。
だけど彼女と自分を養うぐらいは、何とかなるだろう。
いざとなれば親を頼るなり、貯金を崩すなりすれば良い。
そう思って、彼女にプロポーズした。
彼女は満面の笑顔で、頷いてくれた。
「約束、守ってくれたのね」
「約束って…」
「わたしを必ず幸せにしてくれるって約束。二年前にしてくれたでしょう?」
「でっでもまだ新米弁護士だし、最初のうちは苦労させちゃうと思う」
「それでも構わないわ。あなたと一緒なら」
彼女は僕の両手を優しく掴み、真っ直ぐに僕の目を見た。
「結婚しましょう?」
「…うんっ!」




