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スパチャを投げただけなのに


 アパートに帰り着いた僕は、頭の中を整理してみた。

 美術館でいきなり倒れてきたのがマウリッツハイスの学芸員で、

「なぜ儒烏風亭らでんに頼まなかったのか?」と言われた事。


 マウリッツハイス美術館と言えば、フェルメールの聖地。《真珠の耳飾りの少女》がある美術館じゃないか。

 なんでそんなとこの偉い人がらでんちゃんの名前を知ってるんだ?


 僕の中で、マウリッツハイスは小さな棘のようなものが刺さったままの場所だ。

 実際には行った事もなく、何らかかわりもないのだが、中学生の頃、美術館宛に手紙を書いたら、周りの大人からすごい剣幕で怒られた。

 理由については教えて貰えなかったが、その件以降、僕は美術や絵画彫刻を見る事を禁じられた。


「まぁただの偶然だろう……」僕はあまり気にしない事にした。


 でもタックルしてきた警備員! 菓子折りもって謝り来いや!

 いや、住所知られたくないから来なくていいや。


 あとあのゴミデカ! いや五味ヶ谷刑事か、腹立つし2度と顔見たくない!

 でも美弥さんはメガネ外すと美人なんだろうなきっと、それにたぶん巨乳だあれは。

えへへと鼻の下を伸ばして思い出していると、推しのらでんちゃんの配信時間になった。


 僕は急に思い立ち、スパチャに『なぜ儒烏風亭らでんに頼まなかったのか?』と、ジェントルマンの言葉をそのまま書いて送った。


 らでんちゃんの軽妙なトークと僕の知らない知識の波に飲まれながら配信は続いて行く。

 終盤に差し掛かるとスパチャ読みタイムだ。僕のYouTubeのハンドルネームは『夜光貝』

 螺鈿細工に使われる貝の名前から拝借した、らでんちゃんの配信を見る為の専用アカウントだ。


「えーと、夜光貝さんありがとうございます、なになに? 『なぜ儒烏風亭らでんに頼まなかったのか?』ですか? 何でしょうねー? 私に頼み事あれば遠慮なさらず言って下さいねー」


 おー! らでんちゃんに読まれた嬉しい! でも返事はまぁ普通だし当たり障りない答えだ。


「頼み事はともかくですねぇ、来週急遽イベントやりますよー! 詳しくは後ほど案内出しますねー」


 来週ってマジで急だな、コメント欄も大騒ぎになっちゃった。

 

「イベントのお知らせは、こちらでん!」


 らでんちゃんがリンクを貼ったメッセージを投下。

 あっという間に上に流されていくメッセージを追いかけてリンクを踏む。

 そして何も考えずに参加のボタンをポチる!


 訓練されたでん同士にとって、この一連の動作に何の迷いもない!


 イベントの日時や場所、費用なんかは後でバイト頑張ったり有給取ったりすればいい。

 推しのイベントの為にこの命はあるのだ!


 などと言う世迷言を頭の中でぐるぐるさせながらイベントページで詳細を確認すると、

 【都内某所にて実験的なVR機器を使った体験会。募集人員10名】とあった。


 ん、あーね。


 果報は寝て待て。

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