美術館に行っただけなのに
儒烏風亭らでん氏の二次創作です
平日、閉館間際の美術館。
人もまばらでゆったりした時間の中で見る絵画が僕は好きだ。
夕日のオレンジが廊下を照らすと、ますます幻想的に絵画も彫刻も僕に訴えかけてくる。
泣きそうになりながら絵画と会話していると、小さな階段から人が降りてきた。
一般の人は使えない階段なので関係者だろうか? と思って見ていると、
金髪で背が高く彫りの深い顔の老人……と言うには失礼だろう、どう見ても外人のジェントルマンがふらふらと僕に向かってきた。
彼はお腹に手を当てながら、ぜぃぜいと荒い息で僕の目の前に立ち、
「なぜ、儒烏風亭らでんに頼まなかったのか?」
そう言うと彼は僕に全体重を預けて倒れ込んだ。
「らでんちゃん? ……ってちょっと! 大丈夫ですか?」
僕の問いに彼は薄く笑って目を閉じた。
「どうかしましたか?」
異変を感じた警備員が声をかけながら近づいてきた。
「この人が急に倒れて……」
彼を支えながら警備員に手を振った。
「あんた! その手は?」
警備員は僕の手のひらを指差し、素っ頓狂な声を上げた。
ふと自分の手を見て驚いた
「え?」
血で真っ赤に染まっていた。
「うぉぉぉ〜!」
警備員は僕に向かって突進し、ラグビーのタックルのように、低い体勢からブチかまされた僕は数メートル吹っ飛んだ。
目から火花が散るって言うけど、マジだったんだ……と思いながら意識が飛んでいった。