ほんの少しだけ
小さな子供は問いかけます。
「君はどうして頭がそんなに白くなってしまったの」
女の子は答えます。
「天使様に見つけてもらう為よ」
小さな子供は問いかけます。
「君はどうして土の下に埋められてしまったの」
女の子は答えてくれませんでした。
小さな子供は問いかけます。
「どうしてあの子はいなくなっちゃったの」
元気な魔女が答えます。
「あの子はもう死んでしまったからだ」
小さな子供は言います。
「あの子をまた、会った時にまで戻してよ」
優しい魔女が答えます。
「死んでしまった子はもう戻せないのよ」
「いやだ、いやだ、どうして。どうしてあの子だけいなくなっちゃったの」
「なんで二人はずっと変わらないのに、あの子だけ変わっちゃったんだ」
「それは私たちが魔女だからだ」
元気な魔女は慰めようとします。
「そんなの知らないよ、どうしてあの子だけ」
「あの子だけじゃあないわ。あなたが気付いていないだけで、私たち3人以外はみんないなくなっているのよ」
優しい魔女は、悲しそうです。
「なんで魔女じゃなかったらいなくなっちゃうの」
「魔女でもやがて居なくなる時が来る」
絡繰りの魔女は言いました。
「いやだ、いやだ、そんなの来て欲しくない!」
小さな子供は泣いてばかりでした。
「どうしたら、みんなとずっと一緒にいられるのかな」
小さな子供は考えます。
「どうしたら、魔導機みたいに永く」
やがて、小さな子供は見つけました。 見つけてしまったのでした。
この国自体を、大きな魔導機にしてしまえば良いのだと。
小さな子供は、2人の魔女にそれを伝えましたが、2人は理解してくれません。
「そんな事をしてはいけない」
「世の理を捻じ曲げてしまうわ」
小さな子供は、言います。
「君たちの力が必要なんだよ!」
「どうしてそんなこともわかってくれないの」
小さな子供は、自分の中に2人の魔女を閉じ込めました。 そうして、小さな子供は2人の魔女の力を使えるようになりました。
小さな子供は、時の魔女の力で、みんなの命を引き延ばし
絡繰の魔女の力で、それを世界の理に組み込ました。
それは『魔女の加護』と呼ばれ、「この国にいる限り、幸せで居続けられる証」だと、たった1人になった魔女は、みんなに教えました。
『これで、ずっとみんなと居られるね!』
小さな子供はこれで、望んだものを手に入れたのでした。
めでたし、めでたし。】