熱く、熱く。
「…………!」
山積みにされた古い本の中に、見覚えのあった本があった。
「『小さな夢の御伽噺』」
その本は、リクラリカの図書塔では、何故だか禁止図書に混ざっていた一冊の絵本だった。
とても美しい装飾と、鮮やかなイラストがとても興味をそそった物だったが、魔法か何かで封じ込められて読むことが出来なかった本だった。
「お、それで良いのか? 結構大きめの本だが」
そう聞く古本屋に「それでいい」と頷くと、
「じゃあ丁寧に紙袋に入れて持ち運びしやすくしてやるよ」
そう言い、丁重にラッピングしてくれた。
ついでに、『二冊もいい本買ってくれたお礼だ』と、最新物の大陸の地図も入れてくれた。(注意:無料で配られているやつ。つまり結局古本屋は損していない)
気が付くと、もう黄昏時になっていた。
思ったよりも此処は、時が経つのが早いように感じられた。
この街の図書施設は、一日中開放してあるらしかったので、再びそこへ戻った。
とりあえず、リクラリカがどの辺りに位置するのか、地図を広げて確認する事にした。
ーーだが。
「…あれ、」
無かった。 何処にも。
『リクラリカ』の名を持つ国は、地図上の何処にも存在しなかった。
「(どうして?)」
少女は図書館中の地図を取り出し、自身の国が載っている地図を探した。
「……あった…」
ようやく、リクラリカの載った地図を見つけた。その時はもう既に、外が薄明るくなっていたが、少女は気にしていなかった。
見つけた、自国が記載された地図。
それは、何十年以上も昔の地図だった。