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空白の
気が付いたら、そこに居た。
足元には植物が生えている。
柔らかい風が頬を撫でる。
生温かく、湿っぽい土の香がする。
空が高い。
……空気が澄んでいる。
今までいた場所にはどうやって帰れるのだろう。
どうやってここに来たのだろう。
あの、
機械的で
無機質で。
人工的に植えられた植物しか生えていない、
冷たく固い風か、焼けつくように熱い風しか吹かない、
金属の香と機械油の臭いしかしない、
空が狭い、
空気が魔法で澱んだ、あの国。
…………細かく思い出してみると別に帰らなくても良いかと思ってしまった。
少しの間の記憶を失ってしまった少女は、何も覚えていない不安に急き立てられるように、身を隠せる安全な場所を求めて歩き出した。