第八章
ある日、志郎と優里は、訓練を終えた後、久しぶりに町でのんびりすることにした。二人は町の中心にある喫茶店に入り、軽い食事を取りながら会話を楽しんでいた。
「久しぶりに息抜きできるね」と優里が微笑んで言った。
「そうだね。訓練ばかりだと体も心も疲れてしまうから、こういう時間は大事だね」と志郎も同意し、コーヒーを一口飲んだ。
その時、志郎の視線がカフェの新聞スタンドに移った。彼は立ち上がり、新聞を手に取って見出しを読んでみた。
「共産主義勢力が国内で増加中」と大きな文字が目に飛び込んできた。
「優里、これを見てくれ」と志郎が新聞を差し出した。
優里は新聞に目を通し、眉をひそめた。「共産主義勢力が増加中…何か大きな動きがあるのかしら?」
「どうだろう。でも、油断はできないね」と志郎は考え込むように答えた。
そのあと二人は喫茶店を出て、町の広場に向かった。広場では多くの学生が集まり、スピーチやデモ活動を行っていた。プラカードには「平等な社会を求める」といったスローガンが掲げられていた。
「ここまで大規模なデモは珍しいわ」と優里が言った。
「何か裏がありそうだ。少し近づいてみよう」と志郎が提案した。
二人は人混みの中に紛れ込み、デモの様子を観察した。リーダー格の学生が熱心にスピーチをしているのが見えた。
「我々は平等な社会を求めている!今こそ立ち上がる時だ!」とリーダーの学生が叫び、周囲の学生たちはそれに呼応して歓声を上げた。
その後、デモの熱気が一旦落ち着くと、演説をしていた学生たちはこそこそと広場の片隅に移動し、何やら密談を始めた。志郎と優里はその様子を見逃さず、慎重に近づいた。
「これから、ノーシア人が来る。資金と物資を受け取るんだ」とリーダーの学生が小声で話しているのが聞こえた。
「ノーシア?何を企んでるのかしら?」と優里が囁いた。
「分からないけど、これは放っておけない。もっと近づいてみよう」と志郎が提案した。
二人は物陰に身を潜めながら、学生たちの動きを見守った。しばらくすると、外国人らしき男が現れ、学生たちと接触した。彼はカバンから書類や現金を取り出し、学生たちに手渡していた。
「これは明らかにノーシアのスパイだ」と志郎が低く言った。
「共産主義の思想を広めるために、学生たちに資金と物資を提供してるんだ。何としてもこの情報を持ち帰り、政府に報告しなければ。」と志郎が緊張した表情で続けた。
優里は頷き、「そうね。でも、まずはもう少し証拠を集めましょう」と答えた。
その時、スパイと学生たちの密談が終わり、彼らは散会し始めた。志郎と優里はその様子を見逃さず、慎重に彼らの動きを追い続けた。
「このノーシアのスパイがどこへ行くのかを突き止めよう」と志郎が決意を込めて言った。
「わかったわ」と優里も同意した。
二人はスパイの後をつけ、この事件の核心に迫っていくことを決意した。