許し
突然、目の前が漆黒の闇に包まれた。
ネームレスがそれはガリュウのカメラが破壊されたからだと気づくのにはそれなりの時間がかかった。本来の彼ならもっと早く気付いていただろう。
しかし、今のネームレスは現実の視界よりも、心の方が深い闇に沈んでいた。
「ウラァッ!!」
ガンッ!!!
「ぐうっ!?」
その深い闇から彼を無理矢理引っ張り出したのは、誰でもない闇に沈めた相手、ヨハンの拳だった!
拳は二つの眼を潰された黒竜の頭部を揺らし、ネームレスの真っ黒の視界に一瞬、星を出現させた!
「まだまだッ!!」
声に反応して黒竜は両腕で頭部をガードする!衝撃はその両腕が感じるはずだった。
ゴンッ!
「ガハッ!?」
「どこ守ってるんだよ……」
見当違いの黒竜を嘲笑うかのように獣人の拳はガードの下、竜の腹部に突き刺さる!メキメキと嫌な音がして、肋骨が軋んでいるのが、ネームレス自身にもわかった。
「そんなに頭殴られたいならぁッ!!」
ガン!!!
「ぐッ!?」
ダメージで両腕が下がると、今度こそと頭部にパンチが放たれ、いとも簡単にヒットした。敵の攻撃を優雅とも思えるほど、完璧に回避するネームレスにはあるまじき無様な姿!まるでサンドバッグだ!
「ほれほれほれぇ!!!」
ガンガンガンガンガンガン!
「ぐっ!?ぐうっ、く……!?」
不恰好に丸まってヨハンの暴風雨のような攻撃をただ耐え凌ぐしか今のネームレスにはできなかった。いや……。
「こ……のッ!!」
ブンッ!ブンッ!ブウンッ!!!
「ちっ……」
これまた不恰好に黒き竜ががむしゃらに両腕を振り回す!
ただその情けない姿とは裏腹に効果はあったようで、ヨハンはたまらず後退する。
「はあっ……はあっ……くそッ!……まさか……こんなにも……」
息も切れ、自分じゃ見れないが、ガリュウもボロボロ。正直なところ、ここまで苦戦するなど今の今までネームレスは思いもしなかった。
(どうする…?……このままカメラが潰されたままじゃ、なぶり殺しにあうだけだ……マスクを外すか……?いや、まともに顔を見ることもできない暗がり……ただ、急所を無防備にするだけだ……!)
相手を後退させたが、結局、その場しのぎの時間稼ぎでしかない。だけども、考えても考えても打開策は見つからず、その時間も無駄に浪費するだけ。
しかも、何よりネームレスを更に苛立たせるのは……。
(あいつなら!ナナシ・タイランなら!完全適合で瞬時に壊れたカメラを修復できるのに……!)
紅き兄弟機の装着者であるあのいけ好かないボンボンならこんなピンチ……きっとナナシならピンチですらないということが彼の心をざわつかせた。
(くそ……冷静になれ!とにかく、まずは状況を……なんでこんなこと……そうだ!あいつ!壊浜出身だと……!?)
それでもなんとか気を落ち着かせるが、そしたら今度はこの醜態を晒すきっかけを思い出し、心が揺れる。
(なんで……壊浜で生まれた者が、よりによってハザマの親衛隊なんかに……あいつは壊浜をあんな風にした元凶なのに!)
疑問や混乱よりも怒りが勝った。
ハザマにはハザマの正義があったことも今は理解している……しているが、それを許せるかどうかは別問題だ。ましてや、その男に壊浜の苦しみを知っているはずの人間が協力していると知れば、憤るのも当然だろう。
(ヨハン、お前は何故……?………何故、攻撃して来ない……!?)
ネームレスの沸騰していた頭が一気にクールダウンした。先ほどまでの猛攻が嘘のように止んでいることに漸く気付いたのだ!
(自分で思っている以上に心が乱されている……この体育館に入ってから驚いてばかりだからな……そして、あいつはそれをわかってやっている……間違いなく俺がここまで追い詰められているのは奴に心理戦で上をいかれているからだ……)
ここにきてやっと自分を俯瞰で見ることと、ある種の敗北を認めたことで、ネームレスは真の落ち着きを取り戻した。
(今、大事なのは、この優位な状況で奴が何故攻撃して来ないのか……?ハザマ親衛隊に選ばれるような人間がこのチャンスを逃すはずがない……ん?ハザマ親衛隊……そうだ!あいつは!)
今、彼の頭に浮かんでいるのはハザマ大統領誘拐作戦決行前に渡された親衛隊の資料……それを思い出したことで彼はヨハンの意図を理解することができた。
もし、あと数秒遅れていればネームレスの命はなかっただろう。
バンッ!!!
「ぐっ!?やはり!」
黒き竜の側頭部を弾丸が掠める!ネームレスがギリギリでヨハンのスタイルを思い出し、攻撃に備えて全神経を研ぎ澄ましたことで、なんとか銃弾を回避することができた!これこそがヨハンの狙いだと!
(一瞬……あとほんの一瞬気づくのが遅かったら額に風穴が空いていたな……だが、これで確信した!ヨハン!あいつは親衛隊では後方支援を担当していた!生粋のスナイパーだ!わざわざ俺の心を乱したのも、接近戦を印象づけたのも、ガリュウのカメラを潰したのも、全ては拳ではなく銃で俺の命を奪うため!それが奴のプライドだ!)
ネームレスの推測は正しかった。ヨハンはただ勝つのではなく、自身のプライドを満たした上で、圧倒的に勝つつもりだったのである。
それを潰されたヨハンの心中は穏やかではなかった。
(……あれを……ここまでお膳立てした一発を外すとは……まだこの身体に慣れていないのか……?いや、あいつ、まさか……)
数多くの任務を成功させたスナイパーが最高の準備の末に放った完璧な狙撃を回避するという、信じられない、信じたくない存在に背筋が凍る。
(けれど、戦況はまだこちらに分がある……次は外さない……!)
例え相手がどんなに強くとも、イレギュラーであろうとも心を揺らさないのがプロのスナイパーというもの……。
ヨハンは気持ちを切り替え、長大なライフルを片手に次の狙撃場所に音もなく移動する。
(さて……相手の狙いはわかったが……どうしたものか……)
一方のネームレスは未だにどうすればいいのか、決めかねている。
(……頭で考えていても仕方ない………とりあえず仕掛けてみるか……!)
しかし、このままの状態でいても埒が明かないので、意を決して行動に移す。
「ヨハン!!聞こえているんだろ!?何故だ!?何故、お前はハザマについたんだ!!?」
ネームレスがどこにいるかもわからない敵に問いかける。その内容は単純に彼が聞きたかったものだが、勿論それだけが理由ではない。
「いいだろう!!!教えてやろう!!!」
ヨハンの返事が体育館中に響く!そして、それはネームレスの思惑が脆くも崩れ去ったことを意味する。
(声が反響して、どこにいるかがわからない……!?俺が取る策も予想してここを選んだのか……!?)
正確にはこの体育館を戦場に選んだのはネジレであり、ヨハンではない。けれど、ヨハンはこの体育館のことを事前に調べ、この策を練った。もしかしたらネジレもそうなることを予期してここを選んだのかもしれないが……。
狙いが外れ落胆するネームレスに、狙い通りのヨハンが自身とハザマの関係……そして、ネームレスの更なる罪を告げる。
「ガキの頃、ハザマさんと繋がりがあったマフィアの下っ端としてこき使われていたオレはその力を認められ、ハザマさんに引き取られることになった!彼は何も持っていなかった俺に全てを与えてくれた!飯も、家も、金も、教育も!だから、オレは彼に尽くすことに決めた!!」
(やはり、そういうことか……)
ヨハンの話はネームレスが一番最初に思いついたものとほぼ同様の内容だった。気持ち半分で聞き流し、残りの半分はヨハンの位置、いつ飛んで来るかわからない弾丸に向ける。
それを察したのか、ヨハンは自分の話に注意を向けようと彼が知らない、予想もしていない話を始める。
「……ネームレス……お前は壊浜のために、ハザマさんを失脚させようとあんなバカな真似をしたみたいだが……それは大きな間違いだ!本当に壊浜を救いたいならハザマさんをこのまま大統領の椅子に座らせ続けることがベストだったんだよ!!!」
「………なんだと……!?」
ネームレスの意識が一転、全てヨハンの言葉に集中する。
ネームレス自身も今は自分の行ったことは間違っていると思っているし、後悔している。だが、だとしてもハザマがあのままの地位についていればいいとは決して思わない。
その考えをヨハンは真っ向から覆す。
「オレも壊浜をどうにかしたいと思っていた!だから、長年かけてハザマさんに訴え続けたんだ!壊浜を復興してくれ!あそこに住む人に手を差し伸べてくれ!ってな!そして、ついにハザマさんはわかってくれた!壊浜の救済に乗り出してくれたんだよ!!!」
「――!?そんな!?そんなこと……!?」
「あるんだよ!!!お前が台無しにした公開討論会で、新たな政策として発表するつもりだったんだ!!!」
「な!?」
ネームレスの身体から力が抜けていく。それほど彼にとって衝撃的な言葉だった。
ほんの少し前にも似たような感覚を味わった……カズヤの話を聞いた時だ。
あの時も壊浜の未来のために考え、行動していた旧友に対し、口では故郷のためと言いながら、その実、激情に身を任せ、何も理解していなかった自分自身に深く失望した。
そして、今、あの時よりも深く重い罪の意識が彼にのしかかる。
「お前がやったことは壊浜のためじゃない!むしろ、壊浜出身者がテロを起こしたという、大きな十字架を住民に背負わせただけだ!壊浜の未来を壊し!オレの長年の努力を台無しにしたお前の罪………その命をもって償え!!!」
ヨハンがライフルの引き金をその心に渦巻く怒り、憎しみ、無念さを込めて引く!
バァン!!!
弾丸は闇を切り裂き、黒竜の眉間に迫る!ネームレスは動かない!いや、動く気がない……。
(ヨハンの……あいつの言う通りだ……俺の罪は言葉や行動で償えるものじゃない……ならせめて、この命であいつの心だけでも救おう………)
全てを受け入れ……というより自分の命すら諦めたネームレスはすでに暗闇に包まれている目を瞑り、ただじっとその時を待つ……。
(ネームレスの兄貴!)
「!?」
バキッ!!!
「外した!?」
弾丸が黒き竜の額に穴を開けようとした瞬間、ネームレスの耳に聞こえるはずのない、もう聞くことのできない弟分の声が響いた!
その声に導かれるように身体が勝手に動き、弾丸は額から外れ、ガリュウの二本ある勾玉のような角の内、一本をへし折ることになった。
角はガリュウのチャームポイントだが、命を奪われるより、遥かにマシだというのは言うまでもない。
「ちっ!だが!」
ヨハンは再び狙撃を回避された悔しさを噛みしめながら移動する。
一方のネームレスは自分の身に起こったことを理解できず、その場で立ち尽くしている。
(身体が勝手に……それに今、シンスケの声が聞こえたような………?)
彼の心に再び蘇る弟分を救えなかったあの無念が……。
(そうだな……お前の命を奪った俺が簡単に死を選ぶなんて許されないよな……お前のような存在をもう生み出さないために、俺はネジレを!ドクター・クラウチを止める!死ぬのは、その後でいい!!)
決意を新たにしたネームレス!その心に反応するように体育館の気温が下がっていく……周りの熱を取り込んでいるのだ。
勝負の一瞬に向けて……。
(ここからは賭け……ギャンブルだ!しかも、一つじゃない……いくつもの勝負に連続で勝たないといけない……それでもやるしかない!!)
「ガリュウグローブ!」
「ん……?何をする気だ……?」
黒竜の左手が一回り大きくなるのを見てヨハンが身構える。けれども、ネームレスは武器を召喚しただけで一向に動こうとしない。
(チャンスは一回……同じ手は二度と通用しないだろう……通用しなかったら……俺はそこまでの人間……天命だったと素直に受け止めよう……)
ネームレスの心が風のない夜の海の如く、穏やかさを取り戻していく。自分の死すら達観できる境地。今日散々ヨハンに揺さぶられていたのが嘘みたいだ。
(何を考えているかはわからないが……その思惑ごと撃ち抜いてやるよ!!)
静かに佇むネームレスに狙いを定め、ぶれないようにライフルをしっかりと固定、そしてヨハンは今日三度目となる引き金を引く!
バン!ガギン!!!
「なっ!?」
「ッ!?まずは一つ目の賭けは……俺の勝ちみたいだな……」
放たれた弾丸は黒竜の額に向かって真っ直ぐ飛んでいたが、着弾直前に間に割り込んできたガリュウグローブによって弾かれた。
(スナイパーのプライドか……ヘッドショットにこだわったのが仇になったな……!ガリュウグローブもよく耐えてくれた……)
ネームレスはこれまでの狙撃が全て頭部を狙っていたことから、次も同じところを狙うと推測した。それが、彼にとって譲れない信念による行動だということも理解して……。
そして、その予想は見事的中したのだ!
(くそッ!?頭を狙うのがバレていたのか!?……なら、オレの美学に反するが次は別のところを……)
ヨハンは三度の失敗を経て、プライドよりも結果を優先することに決めた。しかし、ネームレスもヨハンがそう出るのはわかっている。
だから、もう一つの賭けに出たのだ!
「さぁ……予想が当たったら俺の勝ち……外れたら俺の負け……わかりやすくていい……!どうやら俺は意外とギャンブラーらしいな……!」
「あいつ……?逃げるのか……?ん?あれはなんだ……?」
黒竜は今まで一歩も動かなかった場所から離れた。ヨハンも目で追おうとするが奇妙なものが……ネームレスガリュウがいた場所には光る球体のようなものが残されていることに気づく。
次の瞬間、その球体は……。
ドゴオォォォォォォォォン!!!
「――!!?」
激しい閃光と熱風、そして、爆音を響かせて爆発を起こした!体育館の窓が揺れ、天井に格納されたバスケットゴールが震え、どこからともなくバレーボールが落ち、外に生えている木を照らす。
それらを確認する前にヨハンは意識を失った。
ぴと……
「ん……んん……オレは……!!?」
「気がついたか……ヨハン……」
ヨハンは首筋に冷たさを感じ、目を覚ました。目の前には月明かりを反射するキレイな金髪をした男……ガリュウのマスクだけを解除したネームレスが自分の首に刃を当てている姿が見えた。
「ネームレス……お前……ッ!?耳が…!?」
耳鳴り、ひどい耳鳴りがする。ヨハンは全てを察した。ネームレスが何をしたのか、自分が何故気を失ったのかを……。
「……気付いていたのか……?オレが耳で、聴覚でお前の動きを察知していたことを……」
そう、ヨハンはブラッドビーストになることで強化された聴覚を利用することで、この暗闇の中でもまるで目で見えているように戦闘を行えていたのである。
「あぁ……俺自身、音……お前の声で狙撃場所を特定しようとした時、もしかしたらお前も……それならガリュウのステルス機動が通じないのも説明がつく……」
「それで逆にその聴力を利用してやろうと……あの爆弾は爆発でダメージを与えるんじゃなく、それに伴う音が本命だったのか……」
「そうだ……と言っても一か八か、本当に俺の予想が当たっているのか、当たっていたとしても、効果があるのか、ギリギリの賭けだった……」
けれど、ネームレスはその賭けに勝った!だからこそ、こうしてヨハンを見下ろしている。
このままほんの少しブレードを獣の首筋に押し込めば、彼の命は終わり、この戦いも決着を迎える。
だが、ネームレスは何故かそのブレードを消した。
「立てよ」
「――!?……何……!?」
「こんなセコい策で決着つくなんて納得いかないだろう……俺もお前もお互いに……」
このまま戦いが終わってもわだかまりが残る……いや、初めからこの戦いに気持ちのいい決着なんて選択肢はなかったのだろう。
きっとただの自己満足だ。それでも、ネームレスは自分の心の声に従った。
「後悔するぞ………」
「させてみろ」
ヨハンはゆっくりと立ち上がり、間合いを測る。そして……。
「ウラァッ!!!」
ここにきて今日一番のスピードとパワーの貫手を放つ!真っ直ぐとその鋭い爪が暗闇でも目立つ緑色の眼に迫る!
ザシュッ!!!
爪はネームレスの頬を切り裂き、鮮血が吹き出す!巻き込まれ、ちぎれた金髪が闇に舞い散る!……それだけだ。ヨハン、渾身の一撃はその程度の成果しか上げられなかった。
「ハアッ!!!」
グシャアッ!!!
「ぐはあぁっ!?」
逆にネームレスのカウンターはキレイにヨハンの顔面に炸裂する!
骨を砕き、ネームレスの比じゃない量の血を吹き出しながら、空中を回転し、体育館の床をバウンドし、最後は大の字になって倒れた。
「どうする……まだ、やるか……?」
今度こそ完全に勝利したネームレスが敗者に声をかける。ヨハンは体育館の天井を虚ろに見つめていた目をそっと瞑った。
「いや……もういい……よっと」
ヨハンは敗北を認めると勢いよく起き上がり、身体についた埃を払った。その様子だと肉体的にはまだ戦闘続行に見えるが、心は完全に折れている。
「……いいのか?」
「あぁ、正直、戦闘中はお前を揺さぶるために色々と言ったが、多分……いや、きっとオレもハザマさんと出会ってなければお前と同じことをしたと思う……」
ネームレスも心の中で同意した。
(紙一重なんだ……昇るのも、堕ちるのも、誰と出会って、何を選択するのか……それがほんの少しずれるだけで立場なんてものは、人生は変わるんだ……良くも悪くも……ヨハンは違う道を歩いた“俺”だ)
「だから……だから、全部言ってスッキリした!オレはお前を許すよ」
「………」
ヨハンの“許す”の言葉を受けてもネームレスの顔は晴れない。その表情を見て、ヨハンの口角が上がる。
「やっぱりな……オレがお前だったら許すて言われた方がしんどいからな……最後の最後でスナイパーらしく的確に急所を撃ち抜いたな……」
その笑顔は一矢報いた喜びなのか、この期に及んで負け惜しみじみたことを言ってしまう自分を自嘲したのかはヨハン本人もわからない。
ただ、これで彼の中で一区切りついたのだろう。どこか憑き物が落ちたような爽やかさを今の彼には感じる。
「ほれ」
「これは……?」
「ドクター・クラウチの居場所だ……つーか、これ目当てで来たんだろ?」
ヨハンはおもむろに取り出したカードをネームレスへ投げた。勝利の報酬を受け取ったのを確認すると、勝者に背を向け、出口へと歩き出す。
「どこへ行くんだ……?」
「さぁな……風の向くまま、気の向くまま……とりあえず、お前とネジレが相討ちになることを祈っているよ……」
そう嫌みを言い残し、ヨハンは夜の闇に消えていった。
「………相討ちか……あいつを止められるならそれでもいい……!!」
体育館の窓から覗く月を見上げながら、ネームレスはそっと呟いた。




