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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
Nocturne
65/324

ヒーロー

 先ほどまで、笑顔で溢れかえっていたショッピングモールは一瞬で恐怖に飲み込まれた。

 逃げ惑う人々、何が起きたかわからないまま、手を引かれる子供たち……。

 その人の波に逆らう男が一人……残念ながら、全く喜ばしくないことだが、こういう経験を過去に一度していて、妙に慣れている。

(思い出すぜ……大統領選挙のことを……キリサキスタジアムでのことを……)

 よみがえる不快な記憶。そして、あの時のようにナナシの目には怒りの炎が灯り、その熱が手首にくくりつけられた真っ赤な勾玉に伝わる。

(もし、この騒ぎが誰かのせいだとしたら……!せっかくの休日を台無しにされた怒り!親父の映画を観て感じた……こっ恥ずかしさ!まとめてぶつけてやる!!)



「グウォォォォォォォォッ!!!」

 ショッピングモールの中心、普段はイベントが開かれている大きな広場で男が獣のような低い唸り声を上げていた!

 その姿は中肉中背……至って普通の青年といった感じだが、その足下には彼よりも大きい屈強な男たちが倒れている。男たちの服装からこのショッピングモールの警備員だとわかる。プロの警備員の集団をこの普通の青年がたった一人で蹂躙したというのが、信じ難いが紛れもない事実……。

 今、まさに異常事態が起こっている証拠である。

「グウォォォォッ!!!」

 男は聞いたものの根源的な恐怖心を呼び起こすような叫び声を上げ続けながら、その血走った眼をギョロギョロと忙しなく動かし、次のターゲットを探していた。


ガサッ……


「グウォ?」

 男の背後から小さな音……普通の人間だったら聞き逃しているであろう小さな音に男の研ぎ澄まされた聴覚が反応した。

 ジリジリと、ゆっくりと音のした方……来客者の休憩用の椅子に近づいて行く。そして……。

「ガウッ!!!」

「ひっ!?」

 その椅子を力任せに破壊すると、そこには小さな女の子が座り込んでいた。

 親とはぐれ、恐怖で足がすくみながらも彼女なりに生きるために考えついたのが、椅子の裏に隠れることだったのである。

 しかし、残念ながら、結果論かもしれないが、それは最善ではなかったようだ。

「グウォォォォォォォォッ!!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 男が容赦なく拳を振り上げる!鍛え上げた警備員を昏倒させる威力……そんなものが年端もいかない少女に………。

「とおっ!!!」


ドンッ!!!


 男の拳が少女の頭蓋骨を砕こうとしたその時!男に飛び蹴りをかます別の男が現れた!

 蹴りを食らった男は人間二人分ほど吹っ飛ばされる!

「ふぅ……こんな子供に手を上げるなんてひどい奴だ!しかも、俺の休日も台無しにするなんて……許せん!」

 蹴りを入れた男、ナナシ・タイランは少女を襲おうとした男に個人的な文句を言いながら、恐怖に震える少女に手を差し出した。

「ひぃっ!?」

「大丈夫……僕は悪い奴じゃないよ……よく顔を見てごらん。最近人気の若手イケメン俳優に似ているだろう?」

 怯える少女を落ち着かせようと、ナナシはできる限り優しい顔と優しい声で語りかける……余計な自慢を挟みながら。

「お、おじさんは正義の味方……?」

「あぁ……いつもだったら、そんなんじゃないって言うところだけど……今日は特別だ!そう!僕は正義の味方さ!」

「本当!」

 色々ぶつぶつ言っていたが、少女にとって大切なのは最後の言葉だけ、正義の味方と聞いて恐怖で歪んだ顔がたちまち満面の笑顔に変わる。

「あっ、でもおじさんは勘弁してくれ。自分で言うのはいいが、他人に言われるのは抵抗がある」

「そうなの……?」

「そうなの」

「よく……わからないけど、ありがとう!ヒーローさん!」

 背筋がむず痒くなる少女の言葉……けれど、嬉しくもある。

 ナナシは照れくさいのを誤魔化すように頭を掻いた。

「グウッ………」

「――!?ヒーローさん!」

 これで終わりならハートフルなとある休みの日で済んだのだろうが、そうは問屋が卸さないと、蹴りを入れられた男が立ち上った。

「……そのまま、寝てりゃあいいのに……」

 ナナシは少女と男の間に入り、眉間にシワを寄せて男を睨み付ける。男は相も変わらず不愉快な唸り声を上げ、血走った目をギョロギョロと動かしている。

「……さっきから気色悪いな……ヤバいクスリでもやってんのか……!?」

 ナナシの言葉はあながち間違ってはいなかった。ただ、彼の思うヤバさとは少し種類が違う。

「グウ………………………………………グウォォォォォォォォッ!!!」

「――ッ!?なんだ!?」

 男は突如として、今まで以上の大きな声で叫び出した!いや、声だけじゃない!中肉中背としかいいようのないその姿、その身体が一回り大きくなっていく!さらには全身から毛が生え、爪や牙が伸びる。

 そうこれは……。

「……『ブラッドビースト』か……」

 『ブラッドビースト』、それはオリジンズの血液を科学的処理し、それを人間が取り込むことによって人間を越えた身体能力を持った獣人への変身能力を得る技術であり、それを手にした者達の総称である。

「ヒーローさん……」

少女の顔が再び……いや、先ほどよりも強い恐怖と不安に塗り潰される。

 一方のナナシは比較的冷静だ。彼が大人だからとか、戦士だからではない。とある理由でこういう輩には慣れているのだ。

「みんなで集まったあの時から……そのうち、こんな日が来ると思ってたぜ……来て欲しくなかったけど……」

 自身の生家で集まって情報交換した日のことを思い出す……というよりずっと頭にこびりついて離れなかった。あの仮面の姿が……。

「ネジレの野郎……何、始めるつもりだ……?」

 ネジレが何を始めるかは定かではないが、目の前の獣人は始めるつもりだ……殺戮を!

「グウォォォォッ!!!」

「ひ!?」

「大丈夫だから……ただ……もう少し下がって……」

 獣人を睨み付けたまま、怯える少女に背を向けたまま、もっと下がるように促す。

 しかし、まだ足がすくんでいる少女はその場を動けなかった。

「グウォォォォォォォ!!!」

 獣人の方は相手の都合などお構い無しに、その鋭い爪と牙を立てて少女に飛びかかる!

「きゃあッ!?」

 迫り来る怪物に、少女は顔を背け、手で目を覆った。幼い心が恐怖心に塗り潰され、自身の命の終わりを感じる。


ガギンッ!!!


 何らかの痛みを受ける覚悟をしていた少女。けれど、待てども待てども、何も起こらない。唯一、金属がぶつかり合うような……何かが折れるような音がしただけ。

 少女が恐る恐る目を開くと、そこには先ほどまでいなかった赤くメタリックな背中があった。

 そして、その背中ごしに自分の命を奪おうとしていた鋭い爪を折られた獣人の姿が……。

「スーパーヒーロー、ナナシガリュウ見参……ってか」

 獣人の攻撃の瞬間、ナナシは自身の愛機を召喚し、少女の前にカットイン、その装甲で逆に相手の爪を破壊したのだった。

「グウォ!?」

戸惑う獣人。当然だ、狩る側だと思っていたのに、突然狩られる側になったのだから……。

 爪を折られた手を抑えながら、さっきとは逆方向に……つまり、後ずさりをする。

「……逃げんのか?俺も休日だからできることなら見なかったことにしたいが……さすがにこれは無理だな……!」

 ナナシガリュウが勾玉のような二本の角の生えた頭を動かし、木漏れ日を彷彿とさせる黄色い二つの眼で周りを見回す。

 ほんの少し前まで笑顔で溢れていたショッピングモール。きっと本来なら今日という日がかけがえのない素晴らしい思い出になった人も少なくないだろう。

 だが、それを目の前にいる獣人が恐怖の記憶で塗り潰した!少なくとも、今も自分の後ろで震える少女にとってはそうだ!もっと言えば自分の思い出も汚された!

 ナナシの心に怒りの感情が沸々と沸き上がる!

「自業自得だからな……多少手荒でも……文句は言わせねぇぞ……まぁ……そもそも俺……手加減できるほど器用じゃねぇけどな!」

 恨み言と警告を言い終えると同時に突進!少女の目には紅き竜の背中が一瞬で縮んだように見えた!

「ぐ、グウォォ!?」


ブゥン!!!


「遅いな」

 獣人はもう一方の自慢の爪が健在な手で迎撃するが、ナナシガリュウはあっさりとしゃがんで回避!爪は虚しく空を切る!

「グウォッ!!!」


ブゥン


 なら!と今度は折られた爪の方を拳を握り、ナナシガリュウに振り下ろす!

 だが、これもいとも簡単に後ろに跳躍されたことで避けられてしまう。

「振りが大き過ぎるんだよ……アイムの試合とか見て、勉強するんだ……な!!」


ゴギャ!!!


「グウ!?」

「痛いか?痛いよな?痛くなるようにやったからな!!」

 アイム仕込みのコンパクトなモーションから放たれたボディーブローが獣の脇腹に突き刺さる!肉がめり込み、骨が砕け、肺から酸素を追い出していく!

 獣人は身体を“く”の字に曲げ、声にならない声を上げながら悶え苦しんだ!

「普通の人間なら今ので、一発ノックアウト……気を失うか……少なくても立っていることはできないはずだ……さすがにタフだな……」

 のたうち回る獣人を見下ろしながら、冷静にその能力を分析するナナシ。だが、その目の奥にはサディスティックな光が潜んでいる。

「そのタフさが、仇になったなぁ!!」


ゴンッ!!!


「!!?」

 突如、獣人の視界に火花が散る!首が跳ね上がり、宙に砕けた牙が舞う!ナナシガリュウの膝蹴りが顔面に炸裂したのだ!

「とっととやられちまえば……これ以上痛い思いしなくて済んだのによ……!」


ガスッ!!!


「………!?」

 天を仰ぎ、勿論ナナシガリュウの姿など捕捉できていない獣人の頭にらしくない華麗なハイキックがヒット!タフネス自慢の獣人の意識を今度こそ完全に断ち切る!

 わざわざいつもの泥臭い戦いではなく、無駄にスタイリッシュにやったのは、相手が弱いからでも、ナナシが本来持っているカッコつけでナルシストの気が出た訳じゃない。

「ヒーローさん……」

「こんな素敵なレディの前だ……そりゃ張り切りますよ」

 自分をヒーローだと信じる少女を失望させたくなかったから……。どうやら、その目論見は成功したみたいだ。


「マミちゃん!」


「ママ!」

 ナナシが少女の笑顔を確認して、安堵していると、少女を呼ぶ声が聞こえた。少女もそれに応える。その言葉からはぐれた母親が彼女を探しに戻って来たことがすぐに理解できた。

「マミちゃん……あなたは……!?」

 母親は少女を抱きしめるとすぐ側に立っている得体のしれない真っ赤な不審者からかばうように、その身体を盾にする。

 状況がわからないから当然の行為だろうが、ナナシとしてはやはり、ちょっとショックだ。

「あのですね……そう思うのはわからなくもないんですけど……」

「ママ!この人は正義の味方だよ!あたしを助けてくれたの!」

「えっ……!?」

 ナナシは誤解を解こうとするが、その前に少女が助け船を出してくれた。

 母親は少女の顔とナナシガリュウの顔を交互に見て、気持ちを整理する。

 そして、彼の後ろに先ほど急に暴れ出し、大切な娘とはぐれる原因となった男が倒れていることに気づいた。いつの間にか、獣人から中肉中背の何の変哲もない男の姿に戻っている。

「そ、それは失礼を……マミちゃん……娘を助けてもらいありがとうございます……!!」

「いえいえ、こちらこそ……じゃないな……あの大したことをしてませんので……」

 ショッピングモールの中心で子供を抱き抱える母親と真っ赤な竜を彷彿とさせる不審者がペコペコとお互いに頭を下げるシュールな光景……当人達もそのバカバカしさに気付いたのか、少し照れながらも仕切り直す。

「本当にありがとうございました……!!」

「いや、僕は当然のことをしたまでです。それよりも避難を……」

 親子に速やかにこの場を離れるように促すナナシ。彼の中ではまだ何かが起こる予感があった。

「それが……」

「ん?どうかしたんですか?」

「えぇ……何か外もここと同じようなことが起きているようで……」

 非常に残念だが、ナナシの予感は最速で的中した!予想通り、最悪なことに、まだ何も終わっていなかったのである。

「そう……ですか……」

 ナナシは顎に手を当て、斜め上を見つめながら全身を駆け巡っていたエネルギーを脳ミソに集中、フル回転させる!

(このまま親子を安全なところまで連れて行くか……?いや、もしかしたらショッピングモールにまだ逃げ遅れた人も……他のブラッドビーストも残っているかもしれない……でもこの親子をほっとけないし……そもそも安全な場所って……)

「あっ!」

「「!?」」

「あ……すいません……」

 ナナシが唐突に声を上げたので、親子共々びっくりして飛び上がりそうになる。

 その姿を見て申し訳なさそうにナナシは再びペコリと頭を下げた。

「気を取り直して………お母さん、この近くに美術館があるのはご存知ですか?」

「美術館………?あっ!確か、タイラン大統領のお父様の……そう確か『イツキ・タイランのスーパーグレイトフルドラゴン美術館』って変な名前の美術館ですよね!」

「………そうです……その変な名前の美術館です……」

 ナナシの表情が曇る……とは言っても、親子からはガリュウのマスクで見えないだろうが、声のトーンが落ちているのはわかる。

 まさか、一日に二回もトラウマの名前を聞くことになるとはナナシも思っていなかった。

「えー……その変な名前の美術館ですが……イツキ・タイラン氏が自ら倒したオリジンズの素材で作った世界一タフ……頑丈な美術館です。勤めている職員の方も彼のお眼鏡にかなった手練ればかり……そこに行けば、とりあえず安全だと思います」

 幼い頃から、今この時まで美術館にあるまじき仕様だとバカにしていたが、こんな状況になってみるとありがたいことこの上ない。

「本当ですか!?」

「はい、本当です………残念ながら……」

「今、何か……?」

「いえ!何にも、それよりも早く!」

「はい!」

 ついつい本音が口に出てしまったが、とにかく今は親子をこの場から退避させるのが最優先!母親も促されるまま、出口へ走り出す!

「バイバイ、ヒーローさん!」

「素敵なレディになるんだぞ!」

 母親に抱かれている少女が手を振って来た。ナナシもそれに応え、手を振り返す。思いのほか、元気で心の底から安心する。


「グウルルルルルルルッ………」


 そんな場違いに穏やかな気持ちになっていたナナシを、背後からの低い唸り声が現実へと引き戻す。

 振り返ると、そこには先ほど倒したはずのブラッドビーストが立っていた。いや……。

「さっきの奴は倒れたまんま……ってことは別の個体……量産品か……」

 ナナシの言葉通り、さっきの男はまだ白目を剥いていた。どこから現れたかはわからないが、ジリジリと近づいて来る新たな獣人に、ナナシはまったく動じず、淡々と状況を分析する。

「グウォォォォォォォォッ!」

 その態度が癪に触ったのかはわからないが、獣人は叫び声を上げながら、飛びかかって来た!


ガギンッ!


「グウッ!?」

「さっきの奴見てなかったのかよ……」

 獣人はナナシが前に出した左腕に噛みついたが、その鋭い牙は呆気なくガリュウの装甲に弾かれ、牙が砕け散る!

「ブラッドビーストのことは詳しくないが……適合率が低いか……粗悪品、掴まされたみたいだな!!」


ゴスッ!


 ナナシガリュウの拳が獣人の顔にめり込み、その後、床にバウンドしながら吹っ飛んでいった。

「こいつら大して強くないな……問題は何体いるかだな……」

 いつの間にかナナシガリュウの周りをブラッドビーストの集団が取り囲み、ご馳走を前にしているように、ぎらついた目で睨み付けていた。

「……数えるのもめんどくせぇ……後から来るのは、もっとめんどくせぇから、かかって来るなら、今ここにいる奴全員でかかって来な……!!」

 ナナシガリュウは手のひらを上に向けたと思ったら、親指以外をちょいちょいと動かした。あからさまな挑発、紅き竜の憤りを現した所作だ。すると……。

「グウォォォォォォォォッ!」

 了承の合図と言わんばかりの不愉快な叫び声を上げて、一体の獣人が襲いかかって来る!

「オラァッ!!」


ドォン!!


「――ッ!?」

 紅き竜の拳がこれまた獣人の顔面に放たれる!相手の攻撃の勢いを利用したカウンター!そのまま地面に叩きつける!

「グウォォッ!」

 仲間の仇を取ろう……とは、多分思ってはいないだろうが、続けてナナシの背中に新たな獣人が迫る。

「うっとうしいんだよ!!」


ドスッ!!


 だが、ナナシはその気配を察知しており、振り向き様に蹴りを入れる!獣人はゴミ箱に勢いよくぶつかり、気を失った。

「グウルルッ………」

 さすがに立て続けに同胞がやられたのを見て警戒したのか、獣人達は一旦落ち着き、様子を伺う。

「それぐらいの判断力は残っているか……そもそも、本来のブラッドビーストは頭まで獣になるようなもんじゃないはずなんだが……」

 そう、目の前に広がるブラッドビースト達は言葉も話さず、ただがむしゃらに暴れ回るだけ……。それはナナシの知識の中にあるブラッドビースト像とは明らかに違った。

「……やっぱり粗悪品のパチもん掴まされたか……それとも、製作者があえて理性を失うようなものを使ったのか……」

 多分後者だと、ナナシの心が訴える。でも、だとしたら何のために……。

「グウォォォォッ!!!」

「よっと」


ゴスッ!


「グウッ!?」

 痺れを切らし飛びかかってきた獣人を羽虫を払いのけるように、裏拳で撃退する。

「……雑魚とは言え……考え事している余裕はないか……ならさっさと片付けるか!」

 我慢の限界なのはナナシも同じだった。直ちに事態を終息させるためにギアを上げる!

「ガリュウマグ……は、やめとこう……まだ人がいるかもしれないし……それに……」

 ナナシは最も信頼する武器を呼び出そうとするが、急遽取りやめる。言葉通り、逃げ遅れた人のことを考えてのことだったが、理由はもう一つあった。彼の視界に映る荒れ果てたショッピングモールが彼の心を変えさせたのだった。

「……これ以上、幸せの象徴であるこの場所を傷つけるのは忍びない……」

 そう思うと、ナナシの心にまた沸々と怒りの感情が沸いて来て、それが熱に、力になってガリュウに伝わる!

「……決めたぜ……!ガリュウロッド……!お前らは全員……棒で百叩きの刑だ!!」

 紅き竜は咆哮を上げ、手に持った棒を風車のように回しながら、獣人の群れに突っ込んでいった!


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