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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
Nostalgia
61/324

けじめ

「……とりあえず、ここら辺でいいだろう……みんなは……大丈夫そうか……」

 アツヒトは今までいた建物からある程度の距離を取った場所にとどまり、周囲を見渡し、はぐれた奴がいないかを確認する。

「人間……何故、ここで止まる?そのままもっと遠くに逃げればいいではないか?」

 自称人間よりも遥かに優秀なAIはアツヒトの行動の意図がわからなかった。

 彼の優しさと強さ、そして使命感に……。

「ん?……いや、俺だってできることなら逃げたいぜ。けど、あれ……ほっとけねぇだろ?ここには俺達だけしかいないからいいけど、他に人がいる所に移動する可能性がある……そうならないように対処できるのはここにいる俺達だけだ。それに一応、ネクサスは大統領直属の部隊だからな……このまま尻尾巻いて逃げる訳にはいかんでしょ」

 この街には縁もゆかりもないが、罪なき人が犠牲になるのは見逃せない。それが足を止めた理由だった。

 元はといえばアツヒトがネクロに協力したのも故郷とそこに住む人々を守るためだった。またその結果、過った道を歩むことになってしまったが、それを救ってくれたのがネクサス。恩義あるこのチームの看板に傷をつける訳にはいかない。

 彼が今のこの状況を無視できるはずがないのである。

「な、なんだと!?貴様ら大統領直属のチームなのか!?」

 そんなアツヒトの優しさや義理堅さなどよりもAIが注目したのは大統領直属という言葉だった。

「大統領……この国のトップ……そんな偉大な人物の部隊とは……我が仲間になったのも運命の思し召しか……」

 人間より人間らしいAIはどこにでもいる俗物の如く権威とか肩書きに弱かった。偶然出会い、思いつきでついて来た者達が大統領ゆかりの人間だと知り、自身の運の良さに銀色の体を震わせる。

「えっ……お前、仲間なの?っていうか、誰なんだ君は?」

「フッ……そうだったな…貴様にはまだ名乗っていなかったな……いいだろう!我は………」

 興奮するAIと反比例して冷静になったアツヒトが今まで会話していた存在のことを何にも知らないことを思い出す。

 その疑問に答えようとAIは銀色の胸を張り、自分の素晴らしさを愚かな人間に教え始め……ようとしたが……。

「カズヤさん!!!」

 突然の少年の声。その声には戸惑いと悲壮感が混じっていた。こうしている間にもカズヤの身体からみるみる血液が流出し、顔から血の気が引いていた。のんびりと自己紹介なんてしてる場合じゃない!

「蓮雲!!」

 アツヒトはいつの間にか、銀と紫の鎧を着込んでいる蓮雲を呼ぶ!正確には彼の相棒を呼んで欲しいのだ。

 その意図は蓮雲も理解している!彼は無言で頷いた後、顔を少し上に傾け、おもいっきり息を吸った。そして……。

「こくらぁぁぁぁぁぁん!!!」

 周囲のスクラップが震えるほどの大声で相棒の名を叫ぶ!

「ヒヒィーン!!!」

 すると、どこからともなく嘶きとともに真っ黒い四足歩行の獣がスクラップの山を駆け降りて来た!カズヤに余計な警戒心を与えないために、少し離れたところに待機させていたのだ!

「少年!カズヤとやらをそのオリジンズへ!!」

「えっ!?」

 アツヒトの指示に戸惑うユウ……当然だ。突然現れたオリジンズに瀕死の恩人を乗せろなんて……。

「ナナシ!トレーラーは!?」

「この道を真っ直ぐ行けばいいはずだ!というよりユウの方が詳しいだろう?だから、お前も付いていけ!ユウ!!」

「な、なにを!?」

 戸惑う彼を無視してアツヒトはナナシにトレーラーの……リンダの居場所を聞く。このスクラップ場には別のルートで来たため、彼女達とはまだ再会できていないのだ。ナナシも道の説明をしながら、少年に近づき、カズヤに付き添うように促す。

「ちょっと!勝手にはな……うおっ!?」

 有無を言わさず、ユウを持ち上げ、黒嵐の背に乗せるナナシ。続けて倒れているカズヤも彼の後ろに乗せる。

「な、だから……」

「説明している時間がないのはお前もわかるだろう?俺を信じろ!なんて胡散臭い言葉言いたくないけど……俺を……俺の仲間を信じてくれ……!」

「ナナシ……さん……わかった……僕はあなたを信じるよ……」

 らしくない真剣な面持ちで語りかけるナナシにユウも納得……はしていないが、代案がなく切羽詰まってる状態……。彼の指示に従うことにした。

「よし!ユウ、デカいトレーラーにケニー、マイン、リンダっていう俺の仲間が乗っているはずだ。誰でもいいから、ナナシに言われてここに来たって伝えて、カズヤを見せろ。それで全て察してくれる」

 ナナシの説明にユウは細かく首を縦に振り、一文字も聞き逃さないように集中する。

 その姿に若干の不安を覚えたナナシがポンと少年の肩を叩いた。

「気負い過ぎるな……大丈夫だから……俺の仲間ならちゃんとした治療ができる。それにお前らには……こいつが黒嵐がついてる」

「ヒヒン」

 ナナシは今度は黒嵐の首筋を撫でながら、彼?の横顔を見つめる。すると、わかっているよ、と言わんばかりに黒嵐も首を縦に振り、小さく嘶いた。それに答えるようにナナシの方も頷く。

「こいつはご主人よりも遥かに賢いからな」

「余計なことは言うな!」

 ナナシの言葉にすかさず突っ込みを入れる蓮雲。けれど、すぐにその目線は相棒に移り、ナナシがやったようにアイコンタクトでお互いの思いを確認する。いや、彼らだけではなく、ここにいるみんなが敵だと思っていたカズヤの無事を祈っている。

「頼んだぞ!黒嵐!!」

「ヒヒィン!!!」

 蓮雲の声を合図にナナシ達がやって来た道を少年と任務のターゲットを背に乗せ、漆黒のオリジンズが逆走する。

 ナナシはその背中を見送ると、もう一つの黒……今の自分と同じ、額から勾玉のような二本の角を生やし、二つの黄色い眼を持ったピースプレイヤーの方を向いた。

「で、お前はどうするよ?ネームレス……?」

「……俺は………」

 ナナシの質問にネームレスは答えられなかった。まだ混乱したままの頭では何も考えられない。もしかしたら考えたくないのかもしれない………。

「………別に、逃げてもいいと思うぜ……俺は……」

「――ッ!?」

「今回のことはお前に責任はないと思う……だから……」

 不思議な感情だった。お互いに……。

 ナナシはなんでこんな奴を気遣うのだろうと思いながらも自然とネームレスを思う言葉を口にした。そして、ネームレスもナナシに気を遣われるなんて屈辱のはずだが、今はそれが嬉しいと感じた。

 だが、良くも悪くもネームレスという男はその優しさに素直に甘えられる人間ではない。

「いや………カズヤの怪我も……シンスケがこうなったのも……元はといえば俺が一時の感情に流され、この壊浜から出て行ったからだ……!だから……俺がケリをつける!それが俺の……“けじめ”だ!!」

 ネームレスは先ほどまでいた古びた建物を睨み付けた。頭の中ではネクロ事変のこと……そして、今日あったことがリフレインする。

(そうだ!俺がドンの考えを理解していれば!シンスケの劣等感に気づいていれば!カズヤの側にいてやれば!こんなことにはならなかった!!)

 後悔先に立たず。どんなに悔いても過去を変えることはできない。人間にできるのは今、この瞬間を必死に生きること!例えそれがまた新たな後悔になろうとも、そうするしかできないのだ……。

「まぁ……お前も気負い過ぎるな。意外と、何事もなく……」


ドゴォォォォォォォォォン!!!


「「「!!?」」」

「どうやらナナシ・タイラン……お前の希望的観測は外れたみたいだな……俺としても……残念で仕方ないが……!」

 ナナシの楽観的願望を打ち砕くように、ボロボロの建物を突き破って、醜い肉の塊が出現する。

 かつてシンスケだったもの。それは周りのスクラップの山や今、自らが壊した三階立ての建物より大きく……いや、現在進行形で大きくなっているように見える。

「……来るぞ!!」

 ネームレスの言葉とほぼ同時に無数の触手がこちらに向かって来た!勿論、先ほどカズヤにしたように命を奪おうとしているのだ!

「はっ!」「よっと!」「ちっ!」「遅いわ!!!」

 ネームレスガリュウ、サイゾウ、ジャガン、そしてシルバーウイングは襲いかかる触手を華麗な体裁きで回避する!

「ガリュウハルバード!」「ふんッ!」

 ナナシガリュウと項燕は武器を手に、次々とはたき落とし、切り刻み、貫き、引きちぎる!そして……。

「この国を平和を脅かすというなら……何であろうと容赦はしない!ファイアッ!!」


ドゴォォォォォン!!!


 プロトベアーは今までの鬱憤を晴らすように全身の火器を解き放ち、肉の触手をまとめて消し炭にする!


ズズッ!!!


 しかし、爆炎の中から新たな触手が飛び出して来る!

「この!気色悪いな!!」

 プロトベアーは絶え間なく弾幕を張り、迫り来る触手を迎撃する!……が、徐々に押し込まれていき……。


ズズッ!!!


「おっと!」

 プロトベアーを貫こうとした触手をサイゾウが刀で切り落とす!

「済まない……助かった……」

「あぁ?礼なんていらねぇだろ?俺達はネクサス……仲間なんだからよ!なっ、大将!」

「おう!そうだ!そうだ!」

 そのまま触手を切り刻みながらサイゾウはプロトベアーの隣へ……。さらに、逆方向からナナシガリュウもハルバードで触手をはたき落としつつ、近づいて来る。

「埒が明かねぇな!?どうしたらいい、アツヒト……?」

「いや……そういうのはリーダーのお前が……まぁいいや。とりあえず、こいつらは後からいくらでも生えて来るっぽいから……本体を叩こう!」

「本体?あの巨大な肉の塊か!?」

「あぁ、つーか、気持ちさっきよりでかくなってねぇか?」

「ちょっと、焦った方がいいかもな……」

 赤、青、緑が身体を寄せ合い、互いの死角を守りながら、作戦会議をする。そうしている間にも触手は破壊され、骸の山を築く。しかし、それ以上のスピードで新たな触手が生まれてくる……。

 そこでアツヒトは本体を叩くことを提案、さらに詳細な指示をみんなに出す!

「よし!みんな聞け!あの不細工な本体を叩く!作戦を発表するぞ!いいな!!」

「「「「おう!!!」」」」

 アツヒトの呼びかけにネクサスの他のメンバーが返事をする。そこに一切の迷いはない!確かな信頼関係がある証だ!

「まず!プロトベアーが後方支援!出し惜しみは無しだ!撃って撃って撃ちまくれ!!」

「了解!」

「前衛は項燕!視界に入った触手を全て薙ぎ払え!前だけ見ろ!ひたすら前に進め!!」

「ふん!いいだろう!項燕の力、とくと見せてやる!!」

「俺とジャガンは触手の注意を引きつつ、項燕の側面をカバーするぞ!」

「わかった」

「で!俺達が切り開いた道を行き、接近して本体を仕留めるのが二体のガリュウだ!どぎつい一発、頼むぜ!!」

「任せとけ!」

「待て!?俺も入ってるのか!?」

 触手をブレードで斬りながらネームレスが戸惑いの声を上げる。あくまで自分は部外者……関係ないと思っていたのだ。

「けじめ……つけるんだろ?」

「――ッ!?……あぁ!とどめを刺すのは俺だ!!」

 アツヒトの言葉で彼が……いや、ネクサスの他のメンバーも自分の思いを汲んでくれていると理解する。

 ネームレスはその想いを感じると胸の奥が熱くなった気がした。それとは逆にガリュウの漆黒の装甲は冷たくなっていく。まるで、熱を、力を身体の芯に溜め込むように……。

「よし!行く……」

「おい!我は!まさか!我のこと忘れてないか!?」

 話がまとまり、作戦開始!となりそうになったところでシルバーウイングが割り込んで来る!

 忘れていた訳ではない。そう忘れていた訳では……。

「だから……お前は何なんだよ……どんな奴かもわからないのに作戦に組み込めないでしょう……」

 アツヒトを初め、ここにいるメンバーのほぼ半分はこのAIのことを……というよりAIであることも知らない。だからどう指示していいかもわからないのだ。

「いいだろう!愚かな人間!我は……」

「ギン!お前は俺の背中に付け!機動力が必要だからな!」

 危うく長々としたシルバーウイングの自己紹介ショーが始まりそうになったが、ナナシによってそれは阻止される。

 ナナシは親指で自身の背中を指してAIにそこにくっつくように促す。

「な!?我が人間なんかに!?」

「会ったばかりの人間との連携なんて相当優秀な奴じゃないとできない!」

「!?」

「お前はどうだ?」

「そうだ!優秀な我なら何も問題ない!」

 まんまとナナシの口車に乗せられたシルバーウイングは触手を回避しながら、その姿を変えていく!

「――!?変形した!?」

 ここでようやく、アツヒト達はシルバーウイングが人間じゃないことに気付く。

 そして、驚く彼らを尻目に銀翼は紅き竜の背中に取り付く。

「人間……ナナシと言ったか?貴様に我が合わせてやる!光栄に思え!」

「おう、嬉しくって涙が出る思いだよ……つーことで!ナナシガリュウ・ウイング!行くぜ!!」

 これで準備は整った。アツヒトは皆の様子を確認すると、力強いオーラを醸し出していた。どうやら覚悟は決まっているようだ!

「よし!気を取り直して……ネクサス!ミッションスタートだ!」

「おう!」

 アツヒトの号令とともにプロトベアー以外のメンバーが一斉にフォーメーションを組みながら、前進する!

「言われた通り……出し惜しみはしない!!」


ドゴォォォォォン!!!


 プロトベアーは臆することなく直進する彼らに襲いかかる触手を手当たり次第撃ち落とす!

「はあっ!!」「おりゃ!」「ていっ!」


ザシュ!!!ザシュ!!!ガンッ!!!


 プロトベアーが撃ち漏らしたり、攻撃できない触手は項燕、サイゾウ、ジャガンが対応する。

 凄まじい勢いで本体に向かって行くその背中を見て、ランボは自分が大きな勘違いをしていたことに気づいた。

(オレは何もわかっていなかった……あいつらは連携できないんじゃない……今までは連携する必要がなかったからしなかっただけなんだ……!いざとなったら今みたいに……オレが思っているよりもずっと、みんなプロフェッショナルで……ネクサスはいいチームなんだ!!)

 ランボが感慨に耽っている間にもどんどんと触手の森を進んで行き、本体を仕留められる距離に近づいて来た!


ドクンドクンドクンドクンドクン


「うげぇ!?なんだこりゃ!?」

 接近するとその巨大な肉の塊が脈打っていることがわかった。皆一様に気色悪いと感じたが、唯一ネームレスだけが複雑な感情を抱く。

(見る影もないが……シンスケ……なんだよな……?)

 そのシンスケだったものにシンスケの記憶や理性が残っているとは思えない。もう死んでいると言っていいだろう……だとしても……ネームレスは未だ割り切れなかった。

「ネームレス……もう一度言う……逃げてもいいんだぞ……」

 黒竜の心中を察した紅竜が声をかける。しかし、返ってくる答えは彼にはわかっていた。そして予想通り黒竜は首を横に振る。

「……言ったろ……俺がケリをつける……!それが俺の……俺とシンスケのけじめだ!!」

「そうか……」

 覚悟を決めた双竜!そんな彼らに今までよりも大きな触手が襲いかかって来た!…けれど……。

「やらせると……思うてか!!!」


ザンッ!!!


 その触手を項燕がありったけの力を込めた剣で斬り裂く!

「今だ!ナナシ!!ネームレス!!」

「おうよ!」「はあっ!」

 サイゾウの号令で双竜は飛び上がり、ターゲットである醜い肉の塊を見下ろす!


ズズーーーーッ!!!


 接近されることの危険性を理解しているのか、ただの反射行動なのか、空中の双竜を挟み込むように大量の触手が向かってくる!

「ネームレス!お前は本体を!」

 銀色の翼を背に、空に佇む紅き竜は黒竜にそう言うと、翼のように両手を広げ触手に向けた!

「ガリュウマグナム!」

 ナナシの声とともに右手と左手それぞれに拳銃が現れ、それを力強く握りしめる。

「ぶっつけ本番だが……やってやんよ……!!」

 ナナシの胸の奥で太陽のように燃え上がる感情の炎が熱となって両腕に……そして、二丁のマグナムに伝わる!

「太陽の双弾 (サンシャイン・ツインバレット)!!」


ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!


 二丁の銃から放たれた二本の光と熱の奔流。

 それに触れた触手は瞬く間に焼き尽くされ、この世から姿を消す!

「ネームレス!!」

「あぁ……わかってる!!」

 障害を全て排除した紅竜が黒竜に呼びかけると、言われるまでもなく黒竜はすでに最後の一撃を放つ準備と覚悟を完了していた。

「まさか、帰ってきた時はこんなことになるなんて思いもしなかったが……罪は償わなければいけない……だから!お別れだ!シンスケ!!」

 自分と目の前の肉の塊に言い聞かせるように呟くと、紅き竜とは逆に黒き竜はその夜の闇のような漆黒の装甲から冷気を漂わせながら、月を思わせる黄色い眼で、弟分だったものに狙いをつける!

 身体を捻ったと思ったら、そのままきりもみ回転を始め、二つのブレードを突き出し、その全身を巨大なドリルと化して醜い肉の塊へと突っ込んで行く!

「ハァァァァァァッ!!!」


ズブッ……ギリュギリュギリュギリュギリュギリュギリュギリュギリュギリュッ!


 全ての対抗手段をネクサスによって奪われたシンスケだったものは、ネームレスガリュウの必殺の一撃をただ、為す術もなく受け入れるしかなかった。

 回転運動をする漆黒のブレードは肉の壁を抉り!削り!切り裂き!そして……。

「シンスケ……シンスケェェェッ!!!」


ズブシャァァァァァァァッ!!!


 突き破った。

 その攻撃の軌跡はまるで三日月のよう……。空中で巨大なドリルは元の人型、黒き竜へと戻り、二本ブレードに付いた鮮血を払いながら振り返る。

 そこには大きな穴の開いた肉塊があった。先ほどまで無数の触手を生み出し、激しく脈を打っていた肉塊が……。その動きを弱めていき……ついには完全に停止した……。

 もう二度と動くことはないだろう。そして、あの頼りなくて憎めない弟分の笑顔を見ることも二度と……。


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