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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
Nostalgia
52/324

冷たい風

「着いたぞ!」

 トレーラーの運転席からケニーの声が後方にいるナナシ達に届いた。その直後、トレーラーも停止し、ドアが開く。

「よし!ランボ、アイム、行こうか」

 ナナシが飲みかけのコーヒーを急いで飲み干し、口元を拭いながら仲間に呼びかける。

「あぁ……」

 そんなことお前に言われなくてもわかっていると言わんばかりに、アイムは腕や首を回し、身体をほぐしている。

「それじゃあ、行ってきます」

「はい」

「安心して、怪我して来いよ!あたしが治してやるから!」

 律儀にトレーラーに残るマインとリンダに挨拶するランボ。それに対し返事をするだけのマイン。冗談か、はたまた心配するなと勇気づけているのかわからないリンダ。ネクサス発足以来、何度か見られた光景だ。

 それを見て、笑みをこぼしながら、必ずここに戻ってくると決意してナナシはトレーラーを降りた。

「はぁ~すげぇな、こりゃ……!」

 ナナシは車の外に広がる景色に感嘆の声を上げる。右も左も、スクラップが文字通り山のように積み上がっている。

「確かに、ここまで大きなスクラップ置き場ってのは普通に暮らしていれば、中々見ることもないだろうからな。実際に目にするとインパクトがある……まるで異世界に転生した気分だ……!」

 ナナシの後に続いて、降りて来たランボも独特の言い回しで同意する。

「……なんでお前らテンション上がってるんだ?こんな殺風景なところで……しかも、変な匂いするし、なんか肌寒いし……」

 最後に降りて来たアイムは二人とは違う意見のようで、この場所にあまりいい印象を抱いていないようだった。

「所謂、男と女の違いって奴か?」

「いや、違うんじゃないか?オレとお前はケニーさんの機械いじりの手伝いをしたりするから、こういう機械の残骸の山を見ると色々と心に来るものがあるが、蓮雲なんかは特になんとも思わないだろう。この匂い……鉄とオイルの匂いにも慣れてしまって、なんとも思わないからな」

 アイムの意見に対して、ナナシは単純に男女の性差だと考えたようだったが、ランボは否定する。単純に性や見た目で人を判断するのが好ましいと思ってないのだろう。

 ナナシもそのことを理解したのか、ばつが悪そうに、頭を掻きながらあたり一面に広がるスクラップを見渡していると、機械の隙間を通り抜けて、風がナナシの肌を刺激した。

「……匂いをともかく、肌寒いってのはわかるぜ、アイム……ここの風は冷たいよ……」

 それにはランボも同意したが、そんな感傷に浸っている場合でもない。

「景色を見に来たんじゃないんだ。この奥に今回のターゲットのカズヤがいる」

「そうだな……んじゃ!」

「行こう!」

 お互いの顔を見合ってから、ナナシ、ランボ、アイムの三人がスクラップの山の間の道へと進み始めた。


ガチャガチャガチャガチャ…………


「けっこう距離あるな……」

 機械の残骸や、そこから漏れ出たオイルを踏みしめながら、三人が延々と歩き続けていると、ランボがつい愚痴を口にしてしまった。

「情けない……鍛え方が生ぬるいんだ」

 アイムはそんなランボを叱責する。格闘家として、日々鍛錬を欠かさない彼女はこの程度で根を上げるランボが許せないようだ。

「言ってやるな、アイム。ランボは戦いだけじゃなくネクサスの運営なんかの、事務仕事も手伝っているんだ。トレーニングの時間も中々取れないんだよ……ん?どした?」

 ナナシがフォローを入れるが、何故かフォローされたランボがナナシに冷たい視線を浴びせる。

「……なんか、他人事みたいに言ってるけど、お前がネクサスのリーダーとして、色々手伝ってくれればいいんじゃないか?」

「うっ!?」

 完全にやぶ蛇だった。確かにナナシはリーダーとしての仕事と呼べるようなことは、自他ともに認めるほど何も一切合切やってない。

「……お前があぁしよう、こうしようって適当に方針を立てて、それをアツヒトが現実的に可能なものに修正して、そしてオレが必要な条件を整えるために雑務に励む……どう考えてもオレの負担だけ大きくないか?」

「……ですね……」

 ランボの愚痴が止まらない。ナナシはそれを申し訳なさそうに聞いてやることしかできない。アイムの目からは文句を言う方も、文句を言われる方も情けなく映っているみたいで、呆れ……というか哀れむようにその光景を眺めていた。けれど……。


ガチッ……


「――!?ナナシ!ランボ!」

「「!!」」

 三人の右斜め前方で金属が軽くぶつかったような甲高い音が鳴った。いち早く気付いたのは冷めた目で談笑の輪から外れていたアイムだった。

 すぐさまナナシとランボの名前を呼ぶと、彼らもその声質からただごとじゃないと察し、会話を中断……即座に警戒態勢に移行する。


ガチッ……


「あれは……オリジンズ……?……いや、マシンか……?」

 音のした方、スクラップの山の上に現れた影を発見したのも、アイムが一番早かった。彼女の格闘家としてのキャリアを華やかなものにしてきた最大の武器、視力の良さが、ここに来ても発揮されたのだ。

 ナナシ達も遅ればせながら、目を凝らすと彼女の言う通り、四足歩行の機械の獣がそこに立っていた。

『……政府の人間だな?まさか、本当に来るとは……で、ここに何しに来た?』

 その機械仕掛けの獣から、言葉が発せられる。ノイズがかった聞き取りづらい声だったが、自分達の素性、そしてここに訪れることをすでに知っており、それに対して警戒していることは理解できた。

 どうして政府の人が来ることを把握しているのかは疑問だが、むしろ、内容やノイズよりも三人はその声の主に興味が向いた。

(あの声……まさか、子供か……!?)

 機械の獣から聞こえて来たのは子供の声だった。壊浜の状況から場合によっては子供と戦闘になる可能性も頭の片隅には置いてあった。けれども、心の中ではそんなことにはならないとどこかで高を括っていた。

 最悪の想定が現実のものとなり、三人に動揺が走る。特に孤児院出身で小さい子供の世話もしてきたアイムの顔は愕然としている。その顔のまま、ナナシを見ると彼は本当に小さく……獣に気付かれないように小さく首を振った。

 それを見てアイムも冷静さを取り戻す。

(そうだ!別にまだ戦闘になるとは決まっていない!むしろ、ここで弱さを見せると相手に舐められてその可能性が高まる!アイム・イラブ!しっかりしろ!ポーカーフェイスでいろ!!)

 自分に落ち着けと言い聞かせ、顔を元のクールビューティーな表情に戻すと、ナナシにもう大丈夫だと、頷いて合図する。ナナシも頷き返すと、ランボに視線を移す。

 アイコンタクトで、ナナシの意図を理解したランボは了承の合図として、二人と同じように首を縦に振ると、獣の方を向き両手を目一杯広げた。

「あぁ!そうだ!オレ達は神凪政府の要請でこちらに来た!だけど、決して君達を傷つけるようなことはしない!カズヤという人物と話がしたいだけなんだ!!」

 ランボが手を広げた理由は自分達が声の主達、もとい壊浜の人間に害を与えるつもりはないということを理解してもらうため。ここまでの道のりをピースプレイヤーを装着せず、わざわざ疲れるのに生身で歩いて来たのもひとえに余計な警戒心を相手に持たさせないためである。

 三人を代表してシンプルに自分達の要求を伝えながら、心の中で相手が信じてくれることを祈る。だが……。

『ふん!口ではなんとでも言える!そもそも、戦う気がないなら、ネクロ事変に関わった連中なんて寄越すかよ!』

「なっ!?」

 再び動揺が走る!まさか、政府の人間だとはわかっていても、ここまで詳しく自分達のことを把握しているとは思わなかった。

 けれど、ランボの言ったことも真実!自分達は戦う気がないと必死に訴える!

「俺達が来たのは、もしもの時のためと、単純にネクロ事変の後始末で人手が足りないからだ!」

「そうだ!わたしたちは本当に話が聞きたいだけなんだ!お願いだ!信じてくれ!」

 ランボと同じように両手を広げて、無害だとアピールする!

 けれども、残念ながら三人の懇願は……届かなかった。

『そんなことしたって信用できない!カズヤさんは僕が守る!』

 そう言うと、機械仕掛けの獣の後ろから、同型の機体が二体。さらに、空を飛ぶ戦闘用ドローンが六体も出現した!

「待て!オレたちは本当に……」

『待たない!!行け!みんな!!』

『ギシャアッ!!!』

 ランボの制止を無視し、鋼の獣達をけしかける!指示に従い九つの影がスクラップの山の頂上からナナシ達の方に一目散に向かって来る!

「ランボ!」

「あぁ!仕方がない!アイムもいけるな!」

「くそ!わかってるよ!やってやるよ!!」

 ナナシ達も覚悟を決める!降りかかる火の粉は振り払うしかない!ナナシとランボの首から下げたタグが、アイムの指輪が眩い光を放つ!そして、各々愛機の名を叫ぶ!

「ナナシ……エーラット!!」

「プロトベアー!GO!!」

「蹴散らすぞ!ジャガン!!」

 赤、緑、黄色の機械鎧が顕現!そして、すぐさまランボが二人に対応策を指示する。

「……敵は九体!四足歩行のP.P.ドロイドが三!ドローン六!つまり……」

「一人、獣一匹と羽虫二匹ずつをKOすればいいってことだな!」

「つーか!向こうさんもそのつもりみたいだぜ!」

 ナナシの言う通り、相手も獣一体とドローン二体のチームを作り、それぞれのターゲットに向かって行く!

「よし!お互いに距離を取って、個別に敵を撃破していこう!」

「「おう!!!」」

 ランボの提案に乗り、散り散りになっていくネクサス。

 ランボは純粋にその方法が効果的だからそう指示したのだが、心の中では別の思いも湧いてくる。

(三人でまとまっても、コンビネーションなんて録にできない……なら、バラバラになった方が……)

 彼の中では目の前の敵の脅威よりも、隣の味方との連携の方が不安だったのだ。

(どうにかしないといけないとは、ずっと思って………)


バババババババババババババッ!!!


 戦場にいることを忘れたようなランボを引き戻すように二体のドローンが無数の弾丸をプロトベアーへ発射した!しかし……。


キンキンキンキンキンキン!!!


 全て深緑の重装甲に弾かれてしまう。

「考え事をしている場合じゃなかったな。だがその程度じゃ、プロトベアーに傷をつけることもできん……ぞ!!」


ドゴォーン!!!


 背中から伸びたキャノン砲でドローン二体をまとめて撃破!残るは……。

「ギシャアッ!!!」

 四足歩行の獣が猛スピードでこちらに向かって来た!そして、口を開きその牙で鋼の熊の首を食いちぎるために飛びかかる!


ガキン!


「ギシャ!?」

 だが、残念ながら獣の牙はこれまたプロトベアーの装甲を貫くことができず、逆に折られてしまう。

「だから……その程度じゃ……無駄だと……言っているだろうがぁッ!!」


バリィ!バリィッ!!!


 プロトベアーはその豪腕で獣の頭と足を掴み、そのまま力任せに引きちぎる!獣は臓物……ではなく、回路やコードを撒き散らしながらバラバラになる。

「ふん」

 手に持っていたさっきまで自分を殺そうとしていた敗者の残骸を勝者は地面に雑に投げ捨てた。

「……オレのノルマはこれで終わり……後は……」

 ランボは遠目で戦っている仲間に目を向けた。



「ギシャア!」

 雄叫びを上げながら獣は、黄色い機械鎧に牙や爪で続けざまに攻撃する。だが、こちらも……。

「遅いな……」

 華麗なステップでジャガンは全て避け、またしても傷の一つもつけられない。


バババババババババババババッ!


 見かねた……かどうかは定かではないがドローンが仲間の機械仕掛けの獣を援護する。しかし、悲しいかなそれも無駄だった。同じように軽々と回避される。

「一対一の戦いに……遠くからチクチクと………鬱陶しいな……!」

 プロの格闘家であるアイムにとって銃火器はあまり好ましくないようで、不機嫌になる。しかも、彼女にはタイマンを横から邪魔された真新しい嫌な記憶がある。その相手と今は仲間として一緒に仕事をする事になるとは人生とはわからないものである。

「ギシャッ!!!」

 そんなことを考えている彼女に自分のことを忘れるなと言わんばかりに獣が襲いかかる!

「ちょうどいいところに来た……せいッ!!」

「ギッ!?」


ドガァーン!!!


 向かって来た獣にカウンターで蹴りを食らわせ、さらには吹っ飛んだ先にいるドローンを巻き込んで同時に撃破した!

 残るは後一体!いや……。

「これで、終わりだな」


ドゴッ!!!


 いつの間にかもう一体のドローンの頭上に跳躍していたジャガンは踵落としでドローンを地面に叩きつける!

 これにてジャガンもノルマ達成だ!



「ギシャアッ!!!」


ガブッ!!!


「痛ぇな!この野郎!!!」

 他の二人が圧勝する中、ナナシエーラットは無様に獣に左腕を噛みつかれていた。

 さらに情けないネクサスのリーダーにドローンが追い討ちをかける!


バババババババババババババッ!!!


 二体のドローンから放たれる銃弾の嵐、受けた相手は蜂の巣になって絶命する!ただし、その猛攻を食らったのはドローンの仲間である獣だった。

「お仲間さん……シールド代わりにさせてもらった……ぜ!」

「ギッ!?」

 自分の代わりに全身に無数の弾丸を受け瀕死の獣にナイフで首筋を刺し、介錯をする!獣は力を失い、口を開いてナナシの左腕を解放して地面に落ちた。

「これで残り二……いや!一匹だ!!」


ザシュッ!!!


 獣にとどめを刺したナイフをドローンに向かって投げ、撃ち落とした!

 そのまま最後のターゲットを倒そうと新たな武器を呼び出す!

「ちょこまか動くやつには……こいつだ!ガリュウショットガン!!」


…………………………………………


「あっ……」


バババババババババババババッ!


「うおおっ!?」

 つい癖で……ガリュウを装着しているつもりで散弾銃を召喚しようとして、無論失敗する。ナナシのエーラットにはそんな便利なものは装備されていない。

 結果、ドローンの反撃を受け、回避のため地面を不恰好に転がることになった。

「ミスった、ミスった……が、取り返せないほどじゃない!」


バババババババッ!! ドゴォーン!!!


 転がりながらも今度はちゃんとエーラットに装備されているマシンガンを呼び出しドローンを撃破する!

 最後までいまいち格好つかなかったが、これでナナシも自分に割り当てられた敵を全て撃破した。

 つまり、ネクサスは敵の殲滅に成功したのだ。

 ナナシは埃を払いながら立ち上がり、一息つく。

(まさか、ガリュウと間違えるとはな……実際にはあれとはネクロ事変が起きたたった一日の付き合い……むしろこのエーラットの方が長いんだけどな……)

 しみじみと激闘を共にした愛機を思い出す。たった一日で身体に染み込み、馴染んでしまったタイラン家の家紋と同じ真っ赤な竜を……。

(これが完全適合するってことなのか……お前が恋しいよ……ガリュウ……)

 スクラップ場でたそがれるナナシ。もちろんそんな暇はない。

「ナナシ!」

 声のした方を向くと、ランボとアイムが駆け寄って来ていた。両者とも苦戦した様子が見えないのが、安心したような……ちょっと残念なような……。

「ずいぶんと苦戦していたな」

「ぐっ!?」

 その邪な気持ちを見透かされたのか、アイムに無様な戦いをばっちり見ていたことを告げられる。

「いや……あれは……」


『さすがにあの程度じゃやられないか……じゃあ……これはどうだい?』


ドゴオォォォォォォン!!!


「「「!!?」」」

 突然の声!突然の爆発音!それらが聞こえた方向にナナシ達は一斉に顔を向ける!そこにいたのは……。

「なんだ……これ!?戦車か!?」

 アイムがスクラップの山を崩して現れたそれに対し、自分の記憶から最もふさわしい存在の名を掘り起こす。

「違う!あれは……ナナシ!」

「あぁ……あれは……」

 機械に強い男の子達はそれがアイムの予想とはちょっと違うものだと、即座に理解した。

 それと同時に“それ”は形を変え始め、ずんぐりむっくりした人型になっていく……これは!

「トランスタンクだ!!」

『正解』


ドゴォ!ドゴォ!ドゴォーン!!!


「避けろ!!」

 腕のように変形した巨砲や身体についている機関銃が火を噴く!たまらずナナシ達は後退し、スクラップの山の裏に隠れる。

「なんだ!?トランスタンク!?」

 アイムは開口一番、自身にとって謎の存在についてナナシ達に説明を求める。

「まぁ、知らないのも無理はない……あれは神凪じゃあまり見られないからな……カッコいいのに……」

「今見た通り、可変する戦車だ……戦車の火力をそのままに、小回りがきくように発明されたものだ……あと、カッコいい」

 質問を受けたナナシ、ランボが立て続けにそれに答える。トランスタンクの簡単な詳細と、彼らの気持ちはわかったが、今必要なのは倒し方だ。

「で、どうするんだ?あんなでかくて固そうなやつ……あたしは戦ったことないからわからない……」

 アイムはプロの格闘家だが、ピースプレイヤー装着者、軍人としてはまだ新米、初心者であると自覚している。正確には少し前に隣にいる赤い奴に自覚させられた。そのため自身の経験で対応できないことがあると素直に指示を仰ぐことにしていた。

「それは大丈夫だ……っていうか俺一人で十分、お前とランボは先に行け」

「何!?本気で言っているのか!?」

 深刻なアイムに返って来たのは、なんだか妙にのんきなナナシの答え。まったく予想していなかったアイムはつい声を荒げてしまう。

「トレーラーの中でも話したけど、もしもの時のことを考えると、お前やランボがカズヤと対面した方がいい」

「でも!?やっぱり……」

 なんとか反論を試みるが上手い言葉が出て来ない。そんな彼女にさらにランボが語りかける。

「アイム、ナナシの言う通りにしよう。オレたちは先に進もう。多分、ナナシ一人でも平気だ、オレが保証する」

「ランボ!?お前もか!?一体、何でそう思うんだ?わかるように説明してくれ!」

 ナナシの意見に同意するランボに納得いかないアイム。そもそもナナシ一人で大丈夫という根拠がわからない。

 彼らのことだから自分の知らない情報に基づいた提案なのだろうと推測はつくが、せめて最低限の説明をして欲しい。そう要求したが……しかし。

「もう話している時間はないみたいだぜ」


ドゴォーーーーーーン!!!


「――ッ!?」

 目の前のスクラップが吹き飛ぶ!即座に反応した三人が後退して回避した!

『ここは僕の庭だよ……逃げられるわけないでしょう?』

 まるで山が迫ってくるような威圧感。トランスタンク自ら吹き飛ばしたスクラップを轢き潰しながら、ジリジリと近づいてくる。

「ランボ!アイム!行け!」

「アイム!リーダーの指示に従え!」

「くっ!?後でちゃんと説明しろよ!」

 ナナシの言葉を合図にプロトベアーとジャガンが迫りくる敵に背を向け、一目散に走り出す!

 当然、相手にとっては黙って見送る道理はない!

『だからぁッ!逃げられないんだってばッ!!!』

 砲身を遠ざかる緑と黄色、二人の招かれざる来訪者に向け砲弾を……放つ!

「させるかよッ!!」


ガンッ!!!


 発射直前の砲身をナナシエーラットが蹴り上げ、発射された砲弾は青空へと吸い込まれていった。

『ちっ!?邪魔をするなよ!!!』

「するに決まってるだろ!つーか、子供の玩具にしちゃ、危な過ぎんだよ!それ!」

『あぁん!?』

 邪魔をされたこと、さらに子供扱いされたことでターゲットがナナシへと切り替わり、砲身が赤い鎧に狙いをつける。

 それこそがナナシの狙いでもあることに気付かずに……。

『いいよ……まずはお前からやってやるよ!』

「そうこなくっちゃ……!」


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