表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
No Name's Nexus  作者: 大道福丸
Nexus
44/324

夜明け

 神凪の長い……それは長い夜が終わり、日が昇る。地平線から顔を出した太陽は海上に墜落したオノゴロを優しく照らした。

「……終わったんだな……」

 太陽の光を反射する金髪の男、ネームレスがオノゴロの上に立ち、そっと呟く。まるで自身の過ちを噛みしめるように……。

「あぁ、ようやく……ようやく終わったんだ……」

 彼の隣で、太陽の光を吸収する黒髪の男、ナナシ・タイランが座りながら清々したような声を上げる。

 本当は心の中にネクロのことが引っ掛かっていたが、お互いあの場面では致し方ないことだとわかっているので、あえて触れなかった。

「……で?お前はどうするんだ……?」

 ナナシがネームレスに質問する。単純にこの男の行く末が気になったのだ。

「……俺は過ちを犯した……それを償う……」

 ネームレスは寂しげに地平線を見つめ、自身の心の内を正直に語る。今思えば、なんと愚かだったことかと、自分自身を責め続け、出した答えだ。

「じゃあ、お縄につくのか……?」

 当然、そうなる。然るべき行程を踏み、法的に処罰されるのが妥当だ。しかし、ネームレスは首を横に振った。

「そうすることが正しいことは重々承知だ……けれど、俺にはまだやり残したことがある……あいつをと再び相まみえなくては……!」

 端から見れば、ただの言い訳に聞こえるだろう。けれども、そうじゃないと彼の真剣な眼差しが語っている。

 彼が先ほどから見つめているのは地平線ではなく、いつの間にか姿を消したあの仮面の人物だったのだ。

「そうか……じゃあ、とっとと行けよ」

「あぁ………って、な!?」

 明らかに倫理的に、常識的に間違っているネームレスの発言をナナシはあっさり了承した。色々言われると覚悟していたネームレスは思わず突拍子もない声を上げる。

 片やナナシはめんどくさそうに驚く好敵手の顔を見上げた。

「それで、いいのか……!?」

「よくねぇよ。よくねぇけど、今の俺、疲れてまともに動けねぇもん……ぶっちゃけ、抵抗されたら、どうすることもできない……」

 別にナナシはネームレスが罪から逃れることを無条件に認めているわけではない。ただ、物理的に拘束する力が身体に残っていないだけだ……そういうことにしておこう。

「まぁ、もうさすがに、今回みたいなことはしないだろ?ネームレス……」

 打って変わって、真面目な口調でネームレスの心情を問うと、金髪の男はその美しい髪が伸びた頭を縦に振った。

「あぁ、それは約束する……もう子供達を、平和を傷つけるようなことはしない……!」

 こちらも真面目に黒髪の男の問いに答えた。そして、言い終わると同時にナナシに背を向ける。

「……なんというか……世話になったな……あと、そのTシャツ似合ってるぞ」

「おい!ちょっと待……」


タン!


 ナナシの制止を無視し、ネームレスはオノゴロから飛び降りた。

「……いや、ガリュウ二号は返せよ……」

 逃げるのはいいが、ガリュウは返して欲しかった……が、時すでに遅しという奴だ。ネームレスの姿はどこにも見当たらない。

「つーか、嫌味言う必要ねぇだろ」

 目線を自身の胸、ビューティ君に向ける。結局、これも大きな穴が開いてしまった。

「……まっいっか……」

 本当にもう、何もかもがめんどくさくなって、ナナシはごろんと寝転がり、どんどん明るくなっていく空を眺めた。

「……もう、俺……疲れ……」

 自然と目蓋が下がっていく……。遠くの方から、船の汽笛と聞き覚えのある声がした気がする……。でも、確認する前にナナシは深い眠りに落ちていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ