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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
反逆の拳
272/324

怒りと祈り

 キクタは制服の前をはだけさせると、首にかけていたお守りを露出させた。

「その力、見せつけろ……『キントキ』!!」

 呼び掛けに応じ、お守りは真の姿を解放。機械鎧へと変化し、キクタの全身を覆っていった。

 金色に赤の差し色が入った逞しいマシン、特級ピースプレイヤー、キントキここに見参!

「金色か」

「あなたのお仲間の機体と同じ色だね」

「本当ならはめられたアイム自身が相手をしたいだろうが……あいつの上司として、俺がケリをつける!」

「アーム1、アーム2、ショットガン・オン。アーム3、4、マシンガン・オン」

「ガリュウマグナム」

 背中のXが変形したサブアームに銃が四丁、さらに本体のナナシガリュウ自体にも拳銃が二丁装備され、計六丁、その全てをキントキに向けた!

「スペシャルマニューバ、クレナイフルクロスシュート」

「うりゃあ!!」


バババババババババババババッ!!


 視界一面に広がる弾丸の雨霰。その全てをキントキは……。


キンキンキンキンキンキンキンキン!!


 微動だにせずに全て受け切り、弾き飛ばした。

「そんな豆鉄砲、いくら撃ってもキントキに傷一つつけられないよ」

「ちっ!!」

「では、僕のターンに移らせてもらおうか」

 キントキが手を頭上に伸ばすと、鉞が召喚。それを握るや否やぐるぐると振り回した……かと思ったら!

「でりゃあ!!」


ザンッ!!


 下から上に斬り上げ、鉞から衝撃波を飛ばした!勿論それは眼前のナナシガリュウに……。

「無駄だ」

「絶対防御気光展開」


バシュウッ!!


 けれど、紅き竜の全身を覆うように発生した光の膜が、キントキの斬撃をあっさりと防いだ。

「これなら扇風機の方がマシだな」

「撃ち合いでは勝負つかないか……ならば!!」

「だよな!!」

 両者呼応するように全力前進!お互いに向かって真っ直ぐと駆け出す!

「サムライソード」

「フルアーム、サムライソードオン」

 銃が消え、その代わりに本体の両手に一本、背中クレナイクロスの腕に四本、計五本の刀がナナシガリュウに装備される!それで……。

「スペシャルマニューバ、クレナイ五連斬」

「斬ッ!」

 連続で斬撃を畳みかける!!


キンキンキンキィン!!


「フッ」

「――ッ!?」

 しかし、これだけやってもキントキにはダメージを与えられず。むしろその硬い装甲によって、サブアームに装備された刀は粉々に砕け散り、銀色の雪となって至近距離で睨み合う両者の周りを舞い散った。

「残念!ただでさえ強固なキントキの装甲は竜穴によってさらに強化されている!あんたごときの攻撃なぞでは、びくともせんわ!!」

 自らを誇りながら、キントキは鉞を振りかぶった!

「はあぁぁぁぁッ!!」

「くっ!」

 凄まじい勢いで撃ち下ろされる刃を見て、ナナシガリュウは回避は不可能だと判断。残った刀でうまいこと受け止め、力を流そうと試みる。しかし……。


バキィ!ザシュウゥゥッ!!


 そんな彼の思惑を下らないと断じるように、鉞は刀をへし折り、そのまま竜の片腕を斬り落とした……が。

「フルリペア!!」

「何!?」

 身体と腕、両方の切断面から血の触手が伸び、お互いくっつき、引っ張り合うと、そのまま元通りに戻ってしまった。

 そして驚愕し、動きが止まるキントキを尻目に紅き竜はすぐさま次の一手に打って出る。

「おりゃ!!」

「しまっ――」


ガシッ!!グイッ!!ガァン!!


「――たっ!?」

 紅き竜はキントキの豪腕を掴むと、流れるような動きで後ろに回り込み、腰の後ろに蹴りを入れ、うつ伏せに押し倒す!そして……。


グッ!!


「ぐわあぁっ!!?」

 その腕をおもいっきりひねり上げる!

「さすがに丈夫だな。一気に腕をへし折ってやるつもりだったんだが……」

「ぐうぅ……!!」

「まっ、結局これから折るんだけどな……!!」

 紅き竜はキントキの腕を完全破壊しようと力を……。

「ざけるなぁぁぁッ!!」


ゴォン!!


「――がっ!?」

 ナナシが込めた力以上の力でキントキが強引に起き上がりながら、竜を地面に叩きつけた!衝撃で肺の中から強制的に空気を押し出され、全身に亀裂が走る!

「ウオラァッ!!」

 そんな状態の相手に容赦なく追撃!キントキは拳を振り下ろした!

「この!!」


バキィ!!バキィッ!!


「「ぐっ!!?」」

 ナナシガリュウは蹴りで拳を迎撃したが、その圧倒的な破壊力の前に脚の骨をバキバキに粉砕されてしまった!

 けれども、そうなっても脚に力を込めて押し出し、キントキの射程外に離脱することには成功する。

「全身にダメージ。特に右足のダメージが甚大です。すぐに再生することを推奨します」

「わかってる!!」

 まるで時間を巻き戻しているようだった。

 みるみる内にひびは消え去り、見るも無残にひしゃげた脚が真っ直ぐと伸びて、いつもの状態へと完全に修復された。

 結果、今までの一連の攻防がなんだったんだと言いたくなるほど、両者の状態は戦闘前から変わらず……。

「これで振り出しだな」

「表面上はな。だが、ダメージを受けてないから無傷なのと、ダメージを受けたが、再生したから無傷な状態に戻ったのでは、全く違う。それ、あと何回できるんだ?」

「さぁ?俺にもわからん」

「だろうな。今、僕達は竜穴の恩恵を受けている。いつもより素早く、そして多く再生できるはずだ。それでも限界はいずれ来る」

「………」

「ナナシガリュウの基本スペックはそれほど高くない。間違いなくキントキの方が上、そしてその差は竜穴によって、さらに開いている……どうしようもないくらいにね」

「俺に勝ち目はないと言いたいのか?」

「そうは言ってない。僕が言いたいのは、君には勝機があるが、それを選ばないということ」

「目の前にチャンスがあるのに、みすみす見逃すバカだってのか?」

「あぁ、このキントキの装甲を攻略できるのは太陽の弾丸しかない。だけど、ただでさえ広範囲高威力のあの技を竜穴で使ったら……考えるだけで恐ろしいよ。優しく歴史を大事にするボンボンにはきっとできない」

「……やりようはある」

「かもね。でも、そんな小細工ではキントキを、近衛兵団の隊長を任せられた僕を倒すことはできない」

「じゃあ……試してみるか!!」

 ナナシガリュウ再突撃!右手を一回り大きくしながら!

「グローブか!この期に及んで格闘戦など!!」

 キントキは巨大化したナックルを正面から受け止めるために、身構えた。避けることもできたが、受けて防いだ方がナナシに精神的ダメージを与えられると踏んだからだ。

 キクタがそう考えると、ナナシも踏んでいた。

「そんなつもりは更々ないよ。エレクトリックウェブ!」

「な――」


バシュ!バリバリバリバリバリバリ!!


「――いィィィィィィィッ!?」

 一回り大きくなっていた手のひらから電気の網を射出!それがキントキの金色の身体にまとわりついて、動きを止めた!

「今だ!シールドバレル!マグナム!セット!」

 後退しながら盾を召喚、そしてそれを即座に変形、重厚な砲身へと姿を変えたそれをマグナムに装着すると、電気の網でがんじがらめのターゲットに向けた。

「ナナシ様!敵の言ったように竜穴によるパワーアップはどれほどのものか想像できません!かなりの反動を覚悟してください!」

「おう!」

 ナナシの感情がガリュウに伝わり、マグナムに届くと、シールドバレルは内部に特殊な力場を生成する!そして……。

「目標捕捉!誤差修正!いけます!!」

「太陽の収束弾 (サンシャイン・スティングバレット)!!」


ドシュウン!!


 引き金を引くと、毎度お馴染みの膨大な光……ではなく、一筋の光が銃口から発射された!

「やはり小細工を打ってきたな!だが、今のキントキなら!!」

 金色のマシンは力任せに電撃の網を千切り、拘束から脱出!

 さらに今しがたナナシガリュウがやったようにキクタの感情がキントキから鉞に伝播し、その刃は眩い光を放った!

「大・金・断!!」


ザシュウゥゥッ!!


 鉞を振るうと、金色に輝く三日月のような斬撃が発射された!

 それは竜の必殺技と真正面からぶつかる!


バシュウゥゥゥゥゥゥゥッ!!


「――ッ!?」

「くっ!?」

 正面衝突するエネルギーとエネルギー!両者の意地と意地を乗せた必殺技は衝撃波を撒き散らしながら、互角に拮抗し……いや!


バシュウッ!!


「なっ!?」

 勝ったのは太陽の収束弾!金色の斬撃を粉砕し、大気を焦がしながら、ターゲットに向かう。もしこのまま命中すれば……。

「ちいっ!!だったら!!」

 まともに食らえば一たまりもないと判断したキントキは鉞をエネルギーを凝縮した弾丸に投げつけた!


バシュウッ!!


 それもすぐに跡形もなく溶かされたが、保有エネルギーの総量は大分減ったと思われる……というか、キクタはそう信じた。

「ここからはキントキの力を信じるだけだぁぁぁッ!!」

 キクタはさらに感情を昂らせ、愛機の全身に巡らせる!結果、竜穴の補助も相まってキントキの装甲は史上最硬を記録した!

「来るなら来い!!」


バシュウッ!!


「――ぐっ!?ぐうぅ……!!」

 太陽の収束弾をクロスした両腕で太陽の収束弾を受け止めるキントキ!その金色のボディーはまさしく太陽のような熱量に当てられドロドロと溶けていった……それだけ。

 ナナシガリュウ渾身の必殺技はついに全てのエネルギーを使い果たし、大気中に霧散した。

「マジかよ……って、言ってる場合じゃないか!ベニ!!」

「第二射を放つには……通常のインターバルよりも多く180秒以上必要です」

「ちっ!そんなに……」

「どうした!もうおしまいか!!」

「!!?」

 ドロドロに溶けたキントキだったが、その闘争心は全く衰えず!地面を抉るほど蹴ると、一気に必殺技を攻略され、狼狽える紅き竜に接近した!

「今のは……ヤバかったぞ!!」


バギィン!!


「――ッ!?」

「だが、これでもう安心!!」

 キントキは勢いそのままに手のひらを振り下ろし、軽く引っかかった指の力だけでバレルを破壊した!

「ここからはもう何もさせん!!」

「ガリュウロッド!!」


ガンガンガンガンガンガンガンガン!!


「くっ!?」

 キントキのラッシュをナナシガリュウは棒で受け流そうとするが、いまいちうまくいかず、掠める拳によって赤と銀の装甲を抉られ、そして砕かれる。

「そんな棒っきれでは、僕の怒りを受け止めることはできない!!」

「怒りだけで戦っても、虚しくなるだけだ!!」

「そういうあんたの心にも怒りがあるだろ!愛する故郷を無茶苦茶にしようとする僕への怒りが!仲間を陥れようとしたことに対するどうしようもない怒りが!!」

「俺の中に怒りがあることは否定しない。だが、俺を突き動かすのはそれだけじゃない!」

「はっ!そんなもの――」

「俺を戦わせるもの、それは……“祈り”だ!!」


ドゴォッ!!


「――ぐはっ!?」

 グローブで巨大化した竜の拳がキントキに命中!怯ませた!

「お前のように破滅だけを望んで力を振るっていない!俺は未来の平和のために戦っているんだ!!」

 追撃のナックル!しかし……。

「しゃらくさい!!」


ガシッ!!


 キントキは回避するだけに飽き足らずナナシガリュウの腕を自らの腕と胴体で挟み込んだ!

「さっきから綺麗事ばっかり……二度とそんな口利けなくしてやる!!」

「綺麗事を言い続ける強さから逃げた奴が偉そうに!!」

 紅き竜はもう一方の手にナイフを召喚!それで……。


ザンッ!!


「ぐっ!!?」

「なんだと!?」

 掴まれた腕を斬り落とす!ナナシガリュウでしかできない方法で拘束から脱出した!

「僕以上にイカれてるな!!」

 竜の狂気の沙汰に驚愕しつつもキントキは追撃に移ろうと、パージされた腕を離し、ナナシガリュウに向かって……。

「……ん?」

 駆け出そうとした瞬間、視界の端に妙な光が見えた。

 そちらを向くと切り離された竜の腕の先、一回り大きくなった手のひらの中に輝く球体が……。

「こいつ!?どこま――」


ドゴオォォォォォォォォォン!!


 エネルギーボム爆発!衝撃でキントキの体勢が崩れるが、倒すまでは至らず。

 紅き竜にはそれで十分だった。

「フルリペアからの!」

「クレナイクロスパージ」

「ナナシルシファー!」

 超速再生からの天使への変身!そして……。

「はあっ!!」


ザザザザザザザザザザザザザンッ!!


「――ッ!?」

 高速移動からの連続斬撃!比喩ではなく実際に目にも止まらぬスピードで動き回り、二本の剣、それらを合体させた両刃の剣で容赦なくキントキを切り刻む!

「こんな羽虫の攻撃なんかで!!」

「やはり強化されたルシファーでもダメか……なら!もう一度ナナシガリュウ!!」

「!!?」

 再び天使は赤い竜に!ナナシガリュウは反応が追い付いてないキントキの腹に……。

「飛んでけ!!」


ドゴッ!!


 全力パンチ!力任せにキントキを天高く打ち上げた!

「ベニ!」

「はい!クレナイクロス再ドッキング!アーム1&2、ハルバード、アーム3、4、ランスオン!」

 背中に再び十字架を背負うと、全てのサブアームに身の丈ほどもある長大な武器を装備。その全てを地面に突き立て、つっかえ棒代わりにした。

「竜穴のパワー上乗せした魔王の弾丸は完全に未体験ゾーンです。これで反動に耐えられるか……そもそも地上にも被害が及ぶ可能性も……」

「まっ、なるようになるだろ……!」

 マグナムを召喚し、空中にいるキントキに銃口を向けると、ガリュウの後ろでルシファーが同じ構えを取った。そして……。

「魔王の弾丸 (サタン・バレット)」


ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


「ぐっ!?」

 放たれるナナシ・タイラン最強の一撃!

 凄まじい勢いで光の奔流が天を昇り、その凄まじい反動で紅き竜は地面に溝を掘りながら後退り、さらに銃口はあまりの熱量に溶けて爛れた。

「これがナナシガリュウの……」

 その圧倒的なエネルギーが放出する光はキントキの視界を真っ白に染める。

 それは最早光というより白い闇のようににキクタには思えた……。


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