後の祭り
「踊れや踊れ!!」
「盛り上がっていこうぜ!!」
櫓の上でテツジとカンジが煽ると、それに従うように、他の者はより楽しげに激しく土上音頭を舞った。
それを広場の端でナナシとベニ、そしてリンとマサミは簡易型のベンチに腰をかけながら眺めていた。
「あれだけのことがあったばかりだというのに元気ですね、この村の人々は」
「逆だろ、あんなことがあったからだ」
「みんなこうして生きて、祭りができることを心の底から喜んでいるんだよ」
「ええ……本当に良かったっす……」
リンは思わず目を細めた。
「だが、残念だ。この祭りが終わったら……あなた達とお別れだ」
「事後処理は終わりましたからね」
「あとはAOFに任せる」
「またわたしが何か不可思議な現象を見つけたら、その時は頼むよ」
「そういう日が永遠に来ないことを祈ってるよ」
マサミとナナシは顔を見合わせ、微笑みを交わした。
「ガリュエムともお別れかぁ~」
「リンさんのおかげで貴重なデータが取れました」
「是非花山の開発担当の方に、格闘特化のファイター型を作ってくれと」
「お伝えしときます」
「それができたら、アタシに送ってください」
「P.P.バトルでは軍用機は使えないと思いますが……」
「じゃあ……競技用のガリュエムも作りましょうよ!もっとスポーティーなデザインにして!きっと人気出るっす!」
「では、それも一応伝えておきます」
「あと!アイム・イラブ選手のサインも!!」
「必ず送りますよ」
そう言うとベニは飛び、主人の肩の上に乗ると、ナナシは立ち上がり、櫓の方へ歩き出した。
「ナナシさん、ベニさん、まさか踊るんすか?」
「当然」
「こんな言葉があります。踊る阿呆と見る阿呆、どうせ阿呆なら……」
「踊らにゃ損々だ!」
「そうっすね!!」
その年の土上村の祭りはここ数年で一番の盛り上がりを見せ、朝まで土上音頭の音色は決して途切れなかった……。




