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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
双竜は眠れない
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紅き竜の出した答え

「クレナイクロス、アーム1、アーム2展開、ランス・オン」

「「!!?」」

 ベニの淡々とした電子音声と共に、背中のXの上部が変形、機械的な腕になったかと思うと、槍が装備された。


ザシュウッ!!


「………がはっ!?」

 身体が刃に貫かれた……激流将軍サピュアの身体が竜の二本の槍に。

「サピュア!!」

 オルスパの叫びが広場に響き渡る!彼が混乱している間にもドロドロとサピュアの血が槍を伝って、地面を赤く染めた。

「せっかくたくさん武器があるのに、腕が二本しかないから、同時に使えないなんて、勿体ないだろ?で、そんなことを考えていたら、カイエスって奴のことを思い出した」

「彼のように武器を使える腕を増設すればいい。当然といえば当然の帰結です」

「これがナナシガリュウが更なる高みに昇るために俺の出した答え!」

「これがクレナイクロスとワタクシの真骨頂!」

「ベニ!」

「アーム3、4展開、マシンガン・オン」

 一人と一AIの心に従い、背中のXの下部もまた腕に変形、そしてそれに機関銃が二丁装備される。それをサピュアの身体に押し当て……。

「ファイア」


ババババババババババババババババッ!!


「――ッ!?」

 躊躇なく発射!ゼロ距離から放たれた無数の弾丸は竜の心臓を抉ろうとした激流将軍の内臓を逆にぐちゃぐちゃのミンチにした!

「これで本当に……まずは一人」

「サピュアまでもが……」



ブゥン!


「!!?」

 最早ただの肉の塊になったサピュアをクレナイクロスはまるでゴミのように投げ捨てた。

 その敬意も何もない行動がオルスパの鋼の心をざわつかせる。それを目敏く察知したナナシとベニはさらに追い打ちをかけるために口を開く。

「あっ!サピュアとやらが、六人の将軍の中で最も何が凄いのか訊くのを忘れてました」

「確かに気になるな……まっ、最も間抜けとかだろ?なぁ、オルスパ……!」

「貴様らぁ!!」

 オルスパの不動の心が怒りの炎に塗り潰され、先ほどのナナシのように激しく揺さぶられた!

 紅き竜はその小さな隙を見逃さない!

「拘束甘くなってるぞ」

「――ッ!?」


ブゥン!!


「しまった!」

 オルスパの手を振り払うと……。

「ガリュウグローブ!」

 すぐさま拳を一回り大きくし……。

「オラァ!!」


ゴォン!!


「――ぐふっ!?」

 それでおもいっきりぶん殴る!オルスパの茶色い巨体が宙に浮き、勢い良く吹っ飛ぶ!さらに……。

「お前は後回しだ!」

「こういう時のためにグローブに機能追加したんです!」

「エレクトリックウェブ!」


バシュ!バリバリバリバリバリバリ!!


「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 巨大な拳を開くと手のひらから電気の網が射出!網はオルスパの四肢を絡め取り、再び激しい電撃を至るところから流し込む。

「あいつがウェブから逃げる前に……」

「先に烈風将軍ですね」

「言ってる側から……」

「野郎!ふざけやがって!!」

 回復した烈風将軍ラグドゥスが持てる全ての力と、制御できない感情を全て込めて、突進して来た。しかし……。

「当たるかよ」


ボゴッ!ビュン!!


「ちっ!!」

 ナナシガリュウはオルスパの精神が揺らいだことで弱体化した足を掴む岩の手を砕き、余裕を持って、突進を回避した。

 ラグドゥスはそれで諦めるわけもなく、空中にアーチを描き、またこちらにUターンしようとしている。

「ガリュウマグナム」

 紅き竜はそれを見上げながら両手に愛銃を二丁装備する。さらに……。

「アーム1、アーム2、ショットガン・オン」

 クレナイクロスは上部の腕に握っていた槍を散弾銃に入れ替えた。

 そして、計六丁の銃、その発射口を空中のラグドゥスに全て向ける。

「スペシャルマニューバ、クレナイフルクロスシュート」

「バン」


ババババババババババババババババッ!!


「――ッ!?」

 ラグドゥスの視界一面に広がる無数の弾丸、それを見た瞬間、彼は自らの死を悟った。

「オレ、死……」


ババババババババババババババババッ!!


 下から上へ殴りつけるような弾丸の雨は緑色の異形を抉り、削り、そして引き裂く……。

 全ての弾が通り過ぎた後、ボロ雑巾のように成り果てたラグドゥスの死体はまっ逆さまに墜落した。

「これで……」

「あぁ……後はあんただけだ、オルスパ」

「このおぉぉぉッ!!」


ブチッ!ブチブチッ!!


 また同胞の死に行く様を見ていることしかできなかった憤りを網にぶつけた。電気の縄を力任せに引きちぎると、オルスパは残った片眼で六本腕になった赤い竜を睨んだ。

「さっきの言葉は訂正する。あんたの心を揺さぶるためとは言え、将軍と呼ばれるほどの戦士を間抜け呼ばわりするなんて……」

「はい、失礼過ぎます。ワタクシからも謝罪します」

「やめてくれ……そのしょうもない煽りに冷静さを失った自分が情けなくなるだけだ……!」

 そう言いながらオルスパは最初に作ったものより、大きい岩の斧を作り出した。

「ラストアタックを仕掛けてくるつもりのようです」

「じゃあこっちも……ガリュウサムライソード」

「フルアーム、サムライソード・オン」

 本体の両手に一本、背中クレナイクロスが変形した腕に四本、計五本の刀がナナシガリュウに装備された。

「この武器はサイゾウや傭兵とかぶるから、今まで使ってこなかったが……」

「クレナイクロスで近接戦闘を行うには、これがベストです」

「なんだか知らんが、全力で相対してくれているならば、礼を言う」

「お礼は言葉じゃなくて、もっと具体的な形で欲しいんだけど」

「ならば……黄泉への旅路をプレゼントしてやろう!」

「それはノーサンキューだ!」

 オルスパとナナシガリュウは同時にお互いに向かって全力で駆け出した!もちろん得物を振りかぶりながらだ!

「五本あろうと、そんな薄い刃で我輩の身体は切り裂けない!!」

「それは当たりどころによるだろ!」

「スペシャルマニューバ、クレナイ五連斬」

「斬ッ!」


ザザザザザンッ!!


「――ッ!?」

 すれ違い様に放たれた五つの斬撃はオルスパの胴体から四肢、そして首を切り離した。

「装甲の薄い関節部分を狙うか……最後まで小賢しい……!」

 オルスパの首はそう呟きながら、ゴトリと地面に落ち、二回ほど転がった。

「予言の竜よ……最後にいいか……?」

「なんだ?」

「激流将軍サピュアは……六人の将軍の中で最も……美しい将軍だ……」

「……覚えておこう」

 ナナシガリュウは刀を振り、刀身についたオルスパの血を払った。


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