絆
新しい存在となったネジレとの決着をつけるため、自分達も新しい力と姿を手に入れたナナシとネームレス。
だが、彼ら自身、その力について何もわかっていなかった。
「マジで……なんだよ、これ……?」
「さぁな。多分ガリュウとシュテンが合体したんだと思うんだが……」
「俺の方はルシファーと……でも、二体のピースプレイヤーが合体するなんて、見たことも、聞いたこともないぞ……?」
「元々、一体のオリジンズだからできたのか……?いや、だとしても……」
不思議そうに自分の手のひらを見つめるナナシ。ピースプレイヤーに詳しい彼でも、自らの身体に、愛機に起こった現象の正体は見当がつかなかった……。
けれど、彼らにとって、今それは重要じゃない。
「まぁ……大事なのは力をどうやって手に入れたかじゃない……」
「どう使うか……か。それなら決まっている……!」
双竜は視線を自分達の身体から、こちらを警戒し、手出しできないネジレへと移す。
その二つの眼は以前と変わらず、黄色く、爛々と輝いていた。
「けど、名前はちゃんとつけたいな」
「名前?のんきなことを……」
「名前は重要だぜ!名前がいいと気合の乗りも良くなる!感情を力に変える特級ピースプレイヤーはそういうのが、大事だって、前に教えただろ?」
「本当、お前という奴は……」
場違いなことを言い出すナナシに、呆れるネームレス……彼らの関係も相変わらず。
この二人はこうやって、バカやって、いくつもの苦難を乗り越えてきたのだ。
「うーん……ベタでいくなら、スーパー……いや、グレートナナシガリュウか?」
「グレートはやめろ。俺のトラウマが刺激される」
「トラウマ?あぁ、でも俺もグレートなんて名付けたら、結局、あのじいさんの孫ね、ってバカにされるか……」
「早くしろ、ナナシ・タイラン。俺はもう決めたぞ。カッコいいの」
「おい!人のことのんきとか罵っておいて、自分もノリノリじゃねぇか!」
「特級ピースプレイヤーは装着者の感情が反映される……だから、装着者のテンションが上がるような名前を付けるのは当然」
「それ、俺が今さっき言ったことじゃねぇか!?」
「いいから!早く決めろ!ちんたら考えてる暇はないんだよ!」
「むぅ……勝手な……!うーん……よし!俺も決めた!」
「そうか………ふぅ……」
双竜は息を吐き、構えを取る……。今度こそ本当にネジレの因縁を断ち切るために……命名ほやほやの新たな姿の名を叫ぶ!
「ナナシガリュシファー!」
「ネームレスオーガリュウ!」
「「行くぞ!!!」」
重厚さを増した漆黒のボディーが前方に向かって突撃し、紅き天竜はマントを翼に変化させ、飛び上がる!
「……お前達の姿が変わろうが………俺の目的は変わらない!消えろ!ナナシ!ネームレス!!」
シュル!シュル!シュル!!!
いざ戦闘が始まったら、迷いや戸惑いなどどこかへと吹き飛んでいった!こちらに迫る双竜に対し、ネジレは触手を使い、迎撃を試みる!しかし……。
「そんなものぉッ!!」
ガン!ガン!ガン!!!
ネームレスオーガリュウはその拳で触手をはたき落とし……。
「遅い!」
ナナシガリュシファーは翼を羽ばたかせ、触手の間を器用に高速で通り抜けていく!
「猪口才なぁ!!!」
あっさりと触手に対処されたネジレは半ばムキになり、さらに触手の数を増やしていく!だが、それも……。
「だから!触手ごときでは、俺は止められないんだよ!螺旋竜槍!!」
ザシュ!ザシュ!ザシュ!!!
黒き鬼竜はドリルのようなもの……というか、そのまんまドリルが付いた槍を召喚し、高速回転する刃で触手を消し飛ばす!
「来い、マグナム」
一方の紅き天竜はお馴染みの拳銃を二丁召喚し、銃口を触手に向ける。すると、マグナムの前に一つずつ輪っかが現れる。
「太陽の嵐弾 (サンシャイン・ミリオンバレット)」
バシュ!バシュ!バシュ!!!
引き金を引くと、放たれたのはこれまたお馴染みの太陽の弾丸!だが、今までと違うのは光の奔流が輪の中心を通ると拡散、強化されたこと。
まさしく太陽そのもののような、無数の光の弾丸が触手を焼き尽くしていく!
「くそっ!?ならば!」
新たな姿の双竜に攻撃が一切通じないネジレは思念を送る……二人に無惨にやられた触手の残骸に。
「爆ぜろ!!!」
ドゴォ!ドゴォ!ドゴオォォォォォン!
触手の残骸は光を放ったかと思ったら、次の瞬間、更なる光と熱と音を放ち、爆発した!辺り一面に立ち込める煙……。
「無駄だ!!」
「俺達はこんなもんじゃねぇぞ!ネジレ!!」
その煙を切り裂き、飛び出してくるナナシとネームレス!
「もっと廻れ!螺旋竜槍!!!」
黒き鬼竜の命に従い、ドリルの回転数はさらに上がっていく!
「太陽の光刃 (サンシャイン・エッジ)!」
紅き天竜が再度引き金を引くと、太陽の弾丸は輪を通り、巨大な光の刃を形成する!それを!
「はあッ!!!」
「オラァ!!!」
ギャルルン!!!ザシュン!ザシュン!
「ぐあっ!?」
巨大な赤ん坊の背中から生える巨大な翼……それが、二匹の竜によって穴を開けられ、焼き切られた!
この姿になったネジレに初めて与えることができた明確なダメージ!だが……。
「翼を……翼をもがれたぐらいで!!!」
ネジレは怯まない!赤ん坊の巨大な手のひらが持ち上がっていき……。
「潰れろ!ネームレス!!!」
「――!?」
ドスウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
目の前を彷徨く不愉快な小虫を潰すようにネームレスオーガリュウに振り下ろす!衝撃でヤルダ宮殿全体が揺れた!
「ネームレス!」
赤ん坊の手のひらの下敷きになった鬼竜を助けようとナナシガリュシファーが急降下……。
「人の心配……してる場合かぁ!!!」
「――ッ!?」
ナナシの目の前に赤ん坊の目から生えたネジレの竜が二頭……その大きな口には光が、エネルギーが集まっている。
「消し飛べ!ナナシ・タイラン!!!」
「ちっ!?」
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
竜の口から吐き出された光の奔流が紅き天竜を飲み込み吹き飛ばした!
「ふっ……形が変わったところで……結末は変わらなかっ……」
グン!
「なっ!?」
「まだ終わってないぞ!ネジレ!!!」
今度こそ双竜を倒したと思ったネジレだったが、その考えを否定するように突然、巨体が揺れ動き、声が響く!
その発生源は赤ん坊の手のひらの下だ!
「ぐうぅッ………」
ネームレスオーガリュウは自分を包み込むほどの巨大な手を押し返していく!
「なんだ!?この力は!?どこから!そんなパワーが出てくるんだ!?」
驚愕するネジレ……目の前で、自らの手の下で起きていることがとてもじゃないが現実のものとは思えなかった。
黒き鬼竜は彼の……いや、装着者であるネームレスの常識すらも越えた存在だった。
「このパワーの源は……お前だよ、ネジレ……」
「俺がパワーの源だと……?」
「あぁ……本能が教えてくれる……ネームレスオーガリュウの力……俺自身の心の力を増幅させると同時に、俺に向けられる敵意も自分のパワーに変換してしまう能力をな!!!」
「ぐおっ!?」
ドスウゥゥゥゥン!!!
あろうことか、黒き鬼竜は自分の何倍もある赤ん坊をひっくり返した!そのあり得ない行為がネームレスの言っていることが真実だと証明している!
敵意さえも自分の糧とするそれがネームレスオーガリュウであり、ネームレスという人間の生きざまなのだ!
「俺がここまで強くなれたのはお前のおかげだ、ネジレ……」
「ふざけたことを……!」
ネームレスの言葉に反論しながら、起き上がるネジレ。
ネームレスはお構い無しに話を続ける……彼なりの感謝を伝えるために。
「ふざけていないさ……ネクロ事変の後……お前の存在がなければ、俺は自ら命を断っていたかもしれない……お前という敵が俺を生かしてくれたんだ!!」
「その結果、ラエン皇帝陛下を失った俺を笑おうというのか!?」
「俺もシンスケをお前のせいで失った……」
「だから、許せと言うのか!?」
「そんなんじゃない……お前が俺を憎いというなら、憎めばいい……だが、俺はもうお前を憎まない!この力はお前との因縁を断ち切る力であり、俺を憎しみから解放してくれる力だ!俺は……前に進む!!」
ネームレスの決意の咆哮と共に、漆黒の鬼竜は再びガリュウとシュテンに分離!そして、シュテンは形を変え、黒き竜の二倍ほどある長大な剣に……。
「草薙の剣」
ネームレスガリュウは目の前に浮かぶ、その剣を手に取り、完全に起き上がったネジレを見上げながら突進していく!
「そんなバカデカい剣を持ったところで!」
ネジレは触手を伸ばし、ネームレスガリュウを迎撃する!しかし、黒き竜はそんな触手に目もくれず、突き進んでいく!
「くっ!?こいつ!!!」
「ガアァァァッ!!!」
ネジレは今度は竜の首を伸ばす!それを黒き竜は……。
「せいッ!!!」
ザシュウゥゥゥゥゥ!!!
「ガアァッ!?」
「ぐぅッ!?」
真っ向から迎え撃つ!迫る竜の頭に草薙の剣を突き出すと、そのまま頭を二つに割り、首を縦に引き裂いた!
「こいつ!!!」
ネジレはそれでも怯むことなく、もう一方の竜で黒き竜の背後から追撃!しかし……。
「見えてるよ!」
バキッ!ザシュウゥゥゥゥゥ!!!
「ガアッ!?」
ネームレスガリュウは飛び上がって、竜の攻撃を回避!……しながら、竜の首を切り落とす!
「ネジレッ!」
「ネームレスゥッ!」
空中で長大な剣を振りかぶる黒き竜とそれを見上げるネジレの視線が交差した!
ネームレスガリュウのマスクは先ほどの攻撃で左半分が吹き飛んでおり、ネームレスの素顔が露出してしまっている……が、その顔にはガリュウの内部から生えたコードがネームレスの皮膚に突き刺さっており、緑色だった瞳が、金色に変化していた!
それはガリュウを装着しているのではなく、ガリュウと融合した証!愛機と完全に一体になった証だ!
「これが俺の全力……今の俺が放てる最高の一太刀だ!」
ガリュウの黄色い右目が輝くと、連動するようにネームレスの金色の瞳も光を放つ!そして……。
「チェストぉぉ!!!」
ザンッ!!!
「ギシャアァァァァァァァッ!!!」
文字通り、一刀両断!ネームレスガリュウが振り下ろした草薙の剣によって、巨大な赤ん坊は耳をつんざくような悲鳴を上げながら真っ二つになった!
「ネジレよ……安らかに……」
「終わってねぇよ!!」
「――!?」
先ほどの意趣返しのようなネジレの言葉が響き渡る!その言葉を合図に二つに分かれた赤ん坊が光輝き……。
ドゴオォォォォォォォン!!!
大爆発!触手の残骸を爆破した時とは比べられないほどの爆炎と衝撃がヤルダ宮殿を襲い、ついに崩壊を始める!
崩れ落ちる神聖なる建造物に漆黒の竜は飲み込まれていった。
「普通の人間だったら、これでお陀仏だろうが……お前は死なないよなぁ、ネームレス……!」
翼を広げ、空中から瓦礫の山を見下ろすネジレ……草薙の剣に斬られる直前、赤ん坊の口にぶら下がっていた本体が分離したのだ!
そんな彼は両手にエネルギーを集めていく……ネクロ、シムゴスといった強敵を相手にしながらも生き残ってきた、ネームレスのしぶとさを彼は評価しているし、信頼している……。
だから、完全にこの世から跡形も消し飛ばすつもりなのだ!
「この勝負!俺の勝ち……」
「俺のこと忘れてんじゃないよ!」
「だっ!?」
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
宙に浮く自分のさらに上から、放たれた太陽の弾丸!
それに対しネジレは身体をその光の奔流の方向へと向かせ、ネームレスにとどめを刺すために集めていたエネルギーを……。
「このぉ!!!」
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
撃ち出す!
ドゴオォォォォォォォン!!!
空中で衝突するエネルギーとエネルギー!光と光!
同等の威力だったそれらは大爆発を起こし、空に黒煙のカーテンをかける!それを……。
「ネジレ!」
紅き天竜が突っ切る!マグナムを捨て、拳を握り、振りかぶる!
「ナナシ!」
一方のネジレもまたナナシの姿を確認すると、彼に向かって、拳を握り、突進していく!
そして、先ほどの光のように二人が空中で衝突する!
「オラァ!」
「でやぁ!」
ガギン!
「ちっ!?」
ネジレの拳はナナシガリュシファーのマスクの右半分を吹き飛ばした!
露出するナナシの素顔はネームレスと同様、コードが刺さり、右の瞳が金色に輝いていた。
「ぐっ!?」
ナナシの拳はネジレの頬を切り裂き、彼の側頭部から生えている角を粉砕した!
「ネジレ!」
「ナナシ!」
ガシッ!!!
ナナシガリュシファーとネジレは空中でお互いの手を掴み合う!
至近距離で視線が交差する因縁の二人。そんな中、ナナシの口から出たのは意外な言葉だった。
「ありがとな、ネジレ……」
「……はあっ!?」
ネームレスと同様、ナナシはネジレに感謝を伝えた……皮肉でも嫌味でもない心の底からの感謝を。
「お前もふざけているのか!?」
「ふざけてねぇよ……お前が暗躍してくれたから俺は大切な仲間と……かけがえのない友に出会えた……お前がいたから、ネクサスは生まれたんだ!!」
「ぐぅ!?」
「だから!絆を結んでくれたお前に敬意を表し!俺の……俺達の全力でお前を倒す!」
「くっ!?こいつもパワーが!?」
ナナシガリュシファーは力任せにネジレの手を振り払い、再び、拳を握る!
すると、先ほどマグナムの前に出現した二つの輪が拳に……中心の穴に通した紅き天竜の腕を軸に、輪は高速回転していき、そして!
「ガリュシファー!ナックル!!」
ゴギャ!!!
「がはっ!」
「痛いか?痛いよな?痛くなるようにやったからな!」
拳はネジレの身体に深々と突き刺さった!そして、そこから伝わる熱……ナナシの、ネクサスの想い!
「こ……この、力は……!?」
「気づいたか……ナナシガリュシファーは俺だけではなく、俺が絆を結んだ者……ネクサスのメンバーの想いも力に変える!」
「なん……だと……?」
「言ったろ、俺達の全力でお前を倒すって」
(俺が力を貸してやってんだから、負けんじゃねぇぞ)
(わかってるよ、アツヒト)
(オレはお前が勝つことを信じているよ)
(その期待に応えてやるよ、ランボ)
(わたしの想いも持っていけ!)
(アイム!目が覚めたのか!)
(おれは……)
(お前は別にいいや、蓮雲)
(ヒヒン!)
(ありがとよ、黒嵐)
(ナナシさん!カッコいいところを見せてください!)
(俺はいつでもカッコいいけどな!ユウ!)
(下等で愚かな人間なりに精一杯やるといい)
(えっ……AIのお前もいるの?ギン……)
(ムツミさんの息子のお前と、オレが開発に携わったガリュウが合わされば、敵なんていないことを証明してやれ!)
(言われなくても、そのつもりだ!ケニー!)
(もしもの時はあたしが治してやるから、おもいっきりやっちまえ!)
(あぁ!お前がいるから安心して暴れられるぜ!リンダ!)
(……ぶちかましちゃってください!)
(おう!ぶちかますぜ!マイン!)
「ウオラァ!!!」
ガァン!!!
「ぐあっ!?」
ナナシガリュシファーがみんなの想いが、祈りが乗った拳でネジレを叩き落とす!
瓦礫の山に落下したネジレを追うように紅き天竜も地面に降りていく。
「俺は俺が生きていることを望んでくれている者が!喜んでいる者がいる限り!生きることを諦めない!!」
再び地に足を着けたナナシガリュシファーはガリュウとルシファーに分離。
ルシファーは輪っかに変形し、ナナシガリュウの前に三つの輪が直線上に並ぶ。
その中心の穴の奥に見えるネジレに再度召喚したガリュウマグナムを向けると、ナナシの意志や感情、そしてネクサスのみんなの想いが紅き装甲から腕へ、腕からグリップへ、グリップから銃口へと伝わっていく。
「……ネジレ、これがお前と俺達の物語に、捻れた絆にピリオドを打つ最後の弾丸だ………絆の弾丸 (ネクサス・バレット)」
ドォン!ドォン!ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
ガリュウマグナムから放たれた光の奔流は、輪をくぐる度に輝きを増し、最終的に真紅の竜へと形を変えた!
「赤い竜!?……それがなんだ!!!」
赤い光の竜が迫る中、ネジレは両手のひらを胸の前に突き出し、そこにエネルギーを……自分の生命力を集めていく!正真正銘決死の一撃を放つため!
「お前のような……お前のような親から愛され、過去も未来もあるような奴に負けてたまるかぁッ!!!」
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
ネジレの魂の咆哮と共に、手のひらから絆の弾丸に匹敵する光が放たれた!
ナナシの絆を乗せた光とネジレの意地が生み出した光はちょうど向かい合う彼らの中間地点で衝突した!
ドシュウゥゥゥゥゥゥン!!!
「くっ!?」
「ぐうぅ……」
ぶつかり合った光は周囲に衝撃波を発生させ、ヤルダ宮殿の瓦礫を粉々に砕いていく!だが、光自体は勢い衰えることなく拮抗していた。このまましばらく、もしかしたら永遠にこの状態が続く……かに思われた。
「本当……凄いな、ネジレ……ネクサス全員の想いを結集した力に一人で対抗するなんて……」
「お前らが束になろうと!俺は負けん!負けてたまるか!!!」
「こっちだって同じ気持ちだよ。お前になんとしてでも勝つ……だよな、ネームレス……!」
「あぁ、勝つのは俺達だ、ナナシ!」
「何!?」
紅き竜の下へ黒き竜が歩み寄る。その手にはガリュウマグナムが……ナナシガリュウと背中合わせになりながら、ネームレスガリュウはネジレへと銃口を向けた。
「俺のこと忘れていたのか、ネジレ?そんなわけないよな。ナナシより俺との付き合いの方が長いもんな」
「ネームレス!!!」
「だが、それも今日までだ……」
ドォン!ドォン!ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
ネームレスガリュウが引き金を引くと、ナナシガリュウの時と同様に、光が輪っかをくぐり、黒い竜へ……そして、その黒い竜と赤い竜が捻れるように一つになって、紅黒の螺旋の閃光に!
それがネジレの放ったエネルギー波を引き裂きながら進んでいく!
「このぉ!!!」
ネジレは更に力を込めるが、紅黒の螺旋の閃光の勢いは止められず……。
「終わりだ、ネジレ……」
「………安らかに眠れ、友よ」
「くそぉぉぉッ!?」
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
紅黒の螺旋の閃光に飲み込まれたネジレの身体は原子レベルで崩壊……この世から跡形もなく、消えていく……。
「ナナシ!ネームレス!お前らなんかに!!?」
肉体は崩れても、心は折れず!ネジレの闘志の!怒りの!憎しみの炎は未だに消えていな……いや。
(ありがとな、ネジレ……)
(………安らかに眠れ、友よ)
「…………」
今渡の瞬間、ネジレの脳裏を過ったのは、敬愛するラエンの姿ではなく、先ほどかけられた双竜の言葉だった。
その心の底から彼を思い紡ぎ出された言葉が戦いのために生まれ、他者を見下すことしかできなかったネジレの呪縛を解いた。
「………まっ……いいか………」
紅黒の螺旋の閃光は虚空の彼方に消えていった……。そして、それが通った跡にはネジレの身体も、願いも、未練も何も残っていなかった。




