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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
Nemesis
155/324

鬼竜響炎

「光と影………!?」

「そうか……光と影か……で、それって、どういうこと?」

 ネクロとナナシがすぐに理解できないのは無理もない。できていたら、こんなに苦戦しているはずもないのだから。

 だが、曖昧に聞こえるネームレスの言葉は実のところラエンの能力の秘密を的確に表している。

「少し抽象的過ぎるぞ、ネームレス」

「つーか、勿体ぶるなよ。とっとと話せ」

「そんなつもりははないんだが……まぁ、いい。俺はこの謁見の間に入った時に気持ち悪いと言ったのを覚えているか?」

「あぁ……でも、それはラエンのプレッシャーに当てられたからじゃないのか?」

「違う。俺が気持ち悪さを、違和感を覚えたのはこの部屋の窓の配置のせいだ。日の当たる場所と影のできている場所が普通ではあり得ないほど不規則になっているから」

「ん?……そんなこと……」

「………あるな……」

 ナナシとネクロが首を振り、周囲を見回す。今まではなんとも思っていなかったが、ネームレスの指摘を聞いた後だと確かに床が光と影でランダムに装飾されていた……二人からしたら、だからどうしたって感じだが。

「お前の言う通り、よく見りゃ気持ち悪い部屋だけどよ……それがなんだってんだ?」

「奇妙にも思えるこの光と影の配置がラエンの力を最も生かせるんだ……あいつがテレポートできるのは影のある場所だけだからな」

「「何!?」」

 ネクロとナナシは再び部屋を見回した……。自分達の戦いを思い出しながら……。

「確かに……奴がテレポートしてきた場所……影がある所が多いな……」

「何ヵ所かある影がないのに、奴跳んできた場所は……」

「あぁ、俺達自身の影に跳躍してきたんだろうな。加えて、あいつがテレポートできるのは自らの目で視認できた影だけだ」

「目で?」

「思い出して見ろ、ラエンがこちらを向いたら、いつの間にか接近されていた……逆に言えば、テレポートは後退するような使い方はしていない。真後ろに跳躍することはできないんだ」

「そうなると……ラエンが瞬間移動できるのは、あいつの視界に入るおよそ前方180度、影のある場所ってところか……」

「さっき、エネルギーボムの爆発の光で、奴の視界にある影をかき消したら、案の定、あっさり月光螺旋撃を当てることができたのが、証拠だ」

「だとしたら、あいつの動きをかなり具体的に予測できるようになったな」

 ネームレスの説明を自分達の記憶と照らし合わせると、それが正しいものだと、間違いないものだと確信できた……が。

「テレポートはそれでどうにかなるとして……再生能力はどうすんだ?あれがある限り、俺達が攻撃を当てようが、避けようが、意味ないぜ。というか、真に厄介なのはそっちだ」

「うむ。奴が再生さえしなければ、俺やナナシなら相討ち覚悟で撃ち合えばいいだけの話だからな」

 そう、ラエンの能力がテレポートだけなら、ナナシガリュウもシュテンも自慢のタフネスで無理やり攻略できていたはずだ。だが、彼らのフルリペアや、防御力を上回る圧倒的な再生能力がそれを不可能にしていた。

 もちろんネームレスもそれはわかっているし、すでに解決方法を見つけている。

「言っただろ、キーワードは光と影だって。あいつがテレポートできるのは影がある場所だけのように、あいつが再生できるのは光に照らされている場所だけだ」

「なっ!?」

「マジか!?」

 またまたネクロとナナシが記憶と照合しながら、キョロキョロと部屋中を観察する。そして、これもネームレスが指摘した通り、ラエンが再生した場所には光が燦々と降り注いでいた。

「奴は光をエネルギーとして、身体を再生しているんだ。奴の再生が開始されるのに時折タイムラグがあったのは、影の中にいて、光のある場所に移動しなくてはいけなかったから。俺達の心の力を糧に発動するフルリペアと違って、この絶え間なく降り注ぐ光を取り込んで再生できる……回数制限もないも同然だ」

「だが、光さえ断ってしまえば……」

「あぁ……奴を倒せる!!」

 三人の心に希望が湧き、纏っている愛機に伝わる……それが、さらに共鳴し、言葉を交わすこともなく、お互いの決意を共有する。

「やることは……」

「わかっている……」

「そうと決まれば………ん!?来るぞ!」

「――!?」


ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!


 ナナシガリュウがコアストーンの反応を察知!彼の合図でまた三人は散開!彼らが今いた場所を光の奔流が飲み込んでいった。

 再びバラバラになってしまったナナシ達……ただ、今までと違うのは彼らは場所を選んで逃げていることだった。

「ふっ……何を話していたかは知らぬが……わらわのこの力の前では無意味でしかない!!」

 そんなことを知る由もないラエンはその目で舐めるように三人の姿を一人ずつ見つめていく。

「さて……最初の犠牲者は……」

 偉大なる皇帝陛下に見初められた、哀れなターゲットは……。

「そなたじゃ!ナナシ・タイラン!」

ラエンの姿が一瞬で消え、紅き竜のすぐ横に……。

「ドンピシャだな……」

「なっ!?」

 テレポートを終えたラエンの視界に映ったのは、文字通り自分の目の前に銃口を突きつけるナナシガリュウの姿……。

「喰らえ!!」


バァン!


「ぐっ!?」

「ちっ!?外したか!?」

 弾丸は皇帝のご尊顔を掠めた!ラエンは反射的に回避したのだ……再生能力があるから、そんな必要ないはずなのに……。

(……わらわが避けた……あの程度の攻撃をわざわざ避けたじゃと……まさか、このわらわがこやつに恐れをなしたのか……!?)

 彼女は本能的に気づいたのだ……ナナシの放つプレッシャーが今までと違うことに!だから反射的に身体が動いてしまったのだ。

 しかし、それは彼女の高いプライドが許してくれる行為ではなかった。

「貴様よくも!グノス皇帝であるわらわにこのような無様な真似をさせてくれたな!!!」


ババババババババババババババッ!


「ぐあっ!?」

 皇帝の右手から大量の槍が射出される!紅き竜はその槍を全身で受け、仰け反り、天窓を眺めながら倒れていった!

 だが、それだけやってもラエンの腹の虫は治まらない!

「まだだ!この程度ではわらわの気が……」


ボオン!


「――おっ!?」

 ラエンの身体を突然、衝撃とともに炎が包み込んだ!彼女が衝撃のした方を振り向くと……。

「ネクロ!貴様!!!」

 シュテンが口元から煙を立ち昇らせながら、こちらを睨み付けていた!

 生意気にも皇帝の邪魔をする鬼の姿を見た瞬間、ラエンのターゲットは変わった!

「そんなに先に逝きたいなら!!!」

 ラエンが再びテレポート!向かう先はもちろんシュテンの身体から横に伸びる影……。

「もらったぞ!ラエン!!」

 ラエンはシュテンの隣に跳んだはずだが、彼女の目に入ったのは、鬼の正面……。シュテンはこちらを向いて、二発目の火球を放つため、口元にエネルギーを溜めていた!

 けれど、その鬼の姿が逆にラエンを冷静にさせた。

「お主ら……わらわのテレポートの条件に気づいておるな……?」

「だったら、どうする!!!」

「まずはこうする!!!」


ドゴオォォォォォォォォォン!


「がっ……」

「目には目を、歯には歯を……右手には右手じゃ……」

 ラエンは先ほどシュテンが右手を犠牲に自分の攻撃を暴発させたことへの意趣返しで、火球を放つ瞬間のシュテンの口元に右手を叩き込んだ!

 当然、火球はシュテンの眼前で爆発!攻撃をしたはずのシュテンに大ダメージを与える!

 ラエンは右手を失ったが、彼女の再生能力なら問題ない……再生できればの話だが。

「ぐぅ……痛いだろうが!」

 シュテンはその大柄な身体を目一杯広げ、ラエンの視界を覆う!彼女の視界から影のある場所が消えた!

「ちっ!?お主のような愚民が皇帝を抱きしめるなど……」

「文句を言ったところで!逃げ場所はない!」

 ラエンは首を左右に振るが、そこにも影はなかった……ネクロは彼女のテレポート能力を封じるため、この場所に誘導したのだ!

 まんまと鬼の罠に嵌まってしまった皇帝陛下!しかし……。

「このまま圧殺させてもらう!」

「愚かな……考えが浅すぎる!」


ボゥッ!


「何!?」

 ラエンが触覚から黒い球体を発射する!彼女の左側、何もない空間の上方に……。

 一瞬、ネクロは彼女のこの行動に何の意味があるのかわからなかった……。しかし、すぐに気づいてしまう、その球体の下にできたそれが目に入ったことによって……。

「――!?影を作るためか!?」

「そうじゃ、愚かな鬼よ……そして、さらばじゃ」


ガギン!


「くそっ!?」

 シュテンが抱き締められたのは虚空だけ……ラエンは自分の放った黒い球体の下にできた影にテレポートしていた。さらに……。

「そなたの防御力は凄まじい……が、これは防げるかの……?皇帝の針弾 (エンペラー・ニードルバレット)」


ビュッ!!!


「がっ!?」

 ラエンの左手のコアストーンから放たれた細い光がシュテンの身体を貫通した!皇帝の弾丸を極限まで収束させ、シュテンの装甲を貫けるほどの貫通力を実現したのだ!

 ここまでラエンの攻撃をなんとか耐えてきた鬼が膝を着き、そのまま倒れ込む。

「では……もう一……」


ドゴオォォォォォォォォォン!!!


「ん!?」

 シュテンを追撃しようとしていたラエンの頭上で黒い球体が爆発した!皇帝の周囲が光に照らされる!ラエンは何が起きたか確認しようと上を向こうとした……その時!


ザン!


「ギャアッ!?」

 ラエンの目に一瞬だけ黒い影が映ったと思ったら、すぐに視界全体が暗闇に包まれた……。

「皇帝陛下……あなたの視覚、奪わせてもらったぞ!」

 ネームレスガリュウはナナシ達が戦っている間も助けに行かず、息を潜めて虎視眈々とラエンの目を潰すことを狙っていた。

 そして、シュテンを始末して気が弛んだと見るや、頭上にある黒い球体にまたまたグローブで生成したエネルギーボムをぶつけ、逃げ場所となる影をかき消すと同時に、彼女に一瞬の隙を作り出し、ブレードで視覚を奪ったのである。

「これでテレポートは封じた!一気に仕留めるぞ!ナナシ!」

「おう!暗がりに連れ込んで、ボコっちまおう!」

 紅き竜がフルリペアを発動し、装甲を修復しつつ、大の男が一人の女性にかける言葉としては、最低の部類のものを吐き出して、突進してくる!

 皇帝陛下を前と後ろから挟み撃ちにする形だ!

「これで……」

「終わりだぁ!」

 双竜の一回り大きくなった拳が皇帝に炸裂……。

「終わらんよ、バカども……」

「なっ!?」

 ラエンの額に縦に線が入り、開いていく……その中にあったのは目……ラエン第三の目だ!

 その目は一瞬、ネームレスを睨み付け、彼を脅かした後、ギョロリと横を向いた……。すると、ラエンは黒き竜の視界から消え、代わりに拳を振りかぶる紅き竜の姿が……。

「えっ!?」

「しまっ……」


ガシャアァァァァァァァン!!!


「ぐあっ!?」

「っ!?」

 二匹の竜が正面衝突!黒と赤の破片を撒き散らしながら、地面に落ちていく……その無様な姿を遠くからラエンは第三の目で眺めていた。

「お主達は本当によくやった。わらわの力の秘密にたどり着いたのも、この額の目を見たのもお主らが初めてじゃ……しかし、結局、そこまでが限界なのじゃよ」

 しゃべっている間にラエンは光の当たる場所に移動し、ネームレスに潰された目やシュテンの火球を暴発させるために捨てた右手を再生させた……彼らの決死の行動は、今、無に帰したのである。

「俺達の……限界なんて……」

「てめえが勝手に……決めるんじゃねぇよ……!」

 威勢のいいことを言っているが、双竜は衝突のダメージでいまだに立てずにいた。

 満身創痍の彼らに向かってラエンは左手を突き出す……愚民との戯れを終わらせるために。

「身の程を弁えることなく、勘違いしたまま逝けるなら、それはそれで幸せというものかもしれんな……」

 その柔らかな口調とは裏腹にラエンの胸の奥から、どす黒い殺意と憎しみが溢れ出す……。

「それに何より、このグノス皇帝ラエンの手にかかることができるとは、幸福としか言いようがない……だから……」

 その感情がエネルギーとなりコアストーンに伝わっていく……。

「とっとと地獄に落ちろ!ゴミ虫どもが!!!」


ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!


 今まで一番、いや、ラエン史上でも最強の皇帝の弾丸!光の奔流が渦を巻きながら、膝を着く双竜に迫る!

 この絶体絶命の状況にナナシは………笑った!



 それはこのグノスに向かう途中、ゼオドラスの背中でのこと……。

「なぁ、魔竜皇……」

「なんだ?」

「あんたが俺にくれるっていう三つのご褒美……もう一つ、残ってたはずだったよな?」

「あぁ……まぁ……そうだけど……」

「けど……?」

「今、グノス帝国に送ってやってるのが、最後の褒美……ってことでよくない?」

「よくねぇな。それはそれ、これはこれだ。つーか、魔竜皇なんて呼ばれている奴がそんなセコいこと言うなよ」

「セコいのはどっちだ……」

「きっちりしっかりしてるって言ってもらいたいね」

「まったく……まっ、確かに魔竜皇としては一度くれてやると言ったものを引っ込めるのはカッコ悪いな」

「そうそう!そうこなくっちゃ!で、なんだ?何をくれるんだ?」

「何って……我の逆鱗だよ」

「逆鱗……?」

「おう、我の逆鱗はありとあらゆる攻撃を跳ね返す、この世で最強の盾だ!」

「攻撃を跳ね返す……そう言えば、そんなことテオが言っていたな……」

「あぁ、確か人間の間では我の鱗の全てが攻撃を反射するみたいに言われているが、実際、そんな真似できるのはこの逆さまに生えた鱗一枚だけだ」

「そんな貴重なもの……もらっちゃっていいのか?」

「別にいいよ。取って一月もしたら新しいのが生えてくるからな」

「ええ……そんなすげぇもん、髪や爪が伸びたみたいに……」

「それなら量産できる!逆鱗を装備した最強の軍ができる!……とか、思うなよ。我の逆鱗が攻撃を反射できるのは一度だけ、しかも、我の身体から離れたら三日ほどで、粉々に砕けてしまうからな。ご利用は計画的に、かつお早めに」

「ナマ物のお土産みたいだな……まぁ、それでも強力なアイテムだってのは間違いないか……」

「だろ?魔竜皇が与える褒美として、相応しいだろ!よいしょっと……ほれ」

「おう、ありがたく頂戴するぜ。まぁ、邪魔になるからヨハンに預けるけどな。ほい」

「了解……って、何でだよ!?お前がもらったんだから、お前が持ってろよ!オレはてめえの荷物持ちじゃねぇぞ!」

「そう言うなよ、ヨハン。グノスがどれだけ神凪の情報を持っているかは知らんが、少なくともお前が本国に攻めてくるとは思ってないだろう」

「そりゃ、そうだろうが……」

「だから、この逆鱗を持って、隠れてて欲しいんだよ。お前の耳と頭なら俺の状況を探りながら、適切なタイミングでそれを使えるはずだ」

「まぁ……オレならできるだろうな……」

「同じようにマリアも俺が合図するまで姿を見せないようにして欲しい。神凪出身じゃない君の存在はそれこそグノスが知るわけないからな……ジョーカーだよ、君は」

「わかったわ。あくまでこの戦争はあなたの故郷の問題……だから、私はあなたの指示に従うわ」

「ありがとう」

「どうやら話はまとまったようだな!ちょうどよく目的地グノス帝国にも到着したぞ!」

「ん?到着って……ちゃんとグノスの地に降ろしてから言ってくれよ」

「お主こそ何を言ってる?この魔竜皇がグノスに降りていったら、面倒なことになるだろうが!」

「なら……」

「だから、お主らはここから飛び降りるんだ!」

「はぁ!?」

「ちょっと待て!?この高度からダイブしろだと!?そんなこと……」

「待ったは無しだ!」


バッ!


「ウオォォォッ!?」

「きゃっ?」


「ヨハン!マリア!ぐっ!?どんどん離れて……せめて、落とすんなら、一緒に落としてくれよ!って、そんなこと言ってる場合じゃないか!ガリュウマント!」


バサッ!


「ふぅ……パラシュート代わりにするのは無茶かと思ったが……さすがに丈夫だな。ヨハン達は……まぁ、あいつらもなんとかするだろ……ヤルダ宮殿に向かうことも伝えてあるし……そのうち、合流できるよな。なるようになるってやつだ」



「本当になるようになったな!ヨハン!マリア!」


バリィン!


「おう!」

「お待たせ!」

 天窓を割り、双竜の前に獣人と魔女が降りてくる!

 そして、地面に着地するや否や、獣人が妖しく禍々しい光沢を持った逆鱗を構え……。

「マリア!」

「はい!」


バキッ!


 その鱗を魔女が氷でがっちりと固定する!そこに皇帝の弾丸が……。


ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!


 ぶつかる!だが、皇帝の弾丸は逆鱗を貫くことができず、逆に……。

「地獄に落ちるのはお前だ……ラエン!!!」


ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!


「何ぃ!?」

 光の奔流は逆流し、技を出したラエンの下へ!

「くっ!?自分の技にやられるなど……!」


ガシッ!


「なっ!?」

 当然、回避しようとしたラエンだったが、突然、目の前が暗闇に包まれ、身動きが取れなくなった!

 そんな彼女の耳元で悪魔が、鬼がそっと囁く。

「皇帝陛下を一人でなんて逝かせませんよ」

「ネクロ!?貴様!?」

 ネクロは瀕死の身体に鞭を打ち、ラエンの顔を左手で覆い、視界を、テレポートを封じ、さらに残った力を振り絞り、全身全霊で皇帝の身体を羽交い締めにした。

 そう、今の彼には反射された皇帝の弾丸から逃げる力は残っていない……そもそも逃げるつもりなどないのだが。

「死んだ振りってやつさ……まぁ、これから本当に死ぬんだけどな……」

「バカな!?お主、わらわと心中する気か!?」

「あぁ、俺は大馬鹿者だよ……お前と同じくらいな!」

「ふざけるな!わらわはグノスの皇帝!こんなところで!?離せぇっ!!!ネクロ!!!」

「やだね」


ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!


 グノス皇帝、ラエンは自ら放った技に飲み込まれていった……。

 馬鹿で不器用な大鬼とともに……。


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