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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
Nemesis
138/324

ガブリエル 決着

「シムゴスのコアストーンだって……!?」

 ランボは耳を疑った。

 オリジンズの定義がコアストーンを持っていることはわかっている……。

 だから、シムゴスにもあることも当然だろう……。

 だが、あの超巨大要塞アーティファクト、オノゴロの主砲をまともに受けて、この世に残っているとは考えもしなかった。

 彼だけでなく神凪首脳部も同様だった。

「俺もよくわからないが、政府もあれだけの攻撃を食らって、コアストーンが残っているなんて半信半疑だったらしい……けど、もしも壊れずに、それがろくでもない奴の手に渡ったら……そう思って捜索していたら、マジであったってわけよ」

「それをお前がユウに……?」

「あぁ、この戦場にいるストーンソーサラーはユウしかいない……そのユウと知り合いだから、届けてくれないかと頼まれたんだ」

「そういうことか……」

 事の経緯を聞いてランボは得心いった……いったが、冷静に考えてみれば、今、大事なのはそこではない。

「コアストーンとカズヤの件はわかったが……ユウ、ぶっつけ本番って言っていたけど大丈夫なのか……?」

「大丈夫です………とは言いきれませんが、大丈夫にしないといけない状況ですよね……だから、大丈夫です。なるようになります」

 一応、確認こそしたがランボにも、今はこのユウに頼ることしか自分達が生き残る道がないことは理解していた。ハザマ親衛隊は皆、負傷し、逆にガブリエルに傷一つつけられていない……。ここから逆転するためには、相応のリスクを背負わなければいけないのだ。

「わかった……情けないが、お前の覚悟と可能性に賭けさせてもらう……」

「はい……任せてください……!」



(なんだ……?二人……増えている……?)

 カツミとの問答の結果、怒りに身を焦がしていたガブリエルだったが、突然の乱入者の存在を確認して、ほんの少し冷静さを取り戻していた。

 彼らを観察しながら、その姿と自分の記憶を照合する……彼らは何者なのか、自身の敵となり得るかを。

(さっきの攻撃はこいつらがやったのか……?まぁ、ダメージをもらってないからそれはいい……片方は……確か……駄目だ、思い出せない。だが、名前は忘れたが、誰だかはわかる……ネクサスのストーンソーサラーのガキだ。あいつは念動力を使えるだけだから問題ない……もう一人のオレンジは……ネクサスにも、ハザマ親衛隊にもいなかったはず……まぁ、見たところ、ただのピースプレイヤー、こちらも問題無しだな……)

 ガブの結論は、こいつらは自分の脅威にはならないということ。実際、彼の考えは間違っていない……一つの不確定要素を見逃していることを除けば。

 そんなことなど露知らず、再び彼の心を激情が支配していった!

「そうだ!雑魚がいくら増えようと!まとめて叩き潰してやればいい!数もこっちの方が多いしな!!」


「がぁっ!!!」


 ガブリエルが杖を振るうと、方々から青肌が一斉にランボ達に向かって飛びかかって来た!

 ランボ達は直ぐ様反応し、カツミと、そして、ユウを守るように布陣した!

「シゲミツさん!カルロさん!」

「おう!話は聞いていた!少年を守ればいいんだよな!人生の先輩として、しっかりきっちり守ってやるよ!!」

「でも、ボクもカルロも限界が近いですから、できる限り早くお願いしますよ、ユウくん!」

「はい!了解しました!」

「いい返事だ!オラァ!」


ガン!


「ガアッ!?」


「ボク達も負けていられませんね……ソルミ!」


ビュウ!


「ガッ!?」

 痛みに耐えながら青肌を迎撃していくヤースキとヤーマッツ……。けれど、青肌は次から次へと湧いて来る!もちろん、その司令塔であるガブリエルもそれを黙って眺めているわけではない!

「消え失せろ!下等な人間ども!!」

 杖の先から無数の光球が出現し、ランボ達に雨のように降り注ぐ。青肌のことなどお構い無しに……。


ドォン!ドォン!ドォン!!!


「ちっ!?あいつ、味方ごと!?」

「あぁ!あいつはそういうことを平気でできる奴なんだ!」

「……仲間をなんとも思わないとは……気に食わねぇな……!」

 カズヤの胸の奥に、彼の愛機と同じく橙色の鮮やかなオレンジ色の炎が灯る……。

 殺伐とした壊浜で育った彼にとって、信じられる仲間は何よりも大切なもの……それをないがしろにするような奴を彼は絶対に許せないのだ!

「ランボ!」

「わかっている!オレとお前で全て撃ち落とすぞ!」

「おう!」

 深緑の装甲にオレンジの差し色の入ったアールベアーが向かって来る光球に照準を合わせる!その隣で全身オレンジ色のホムラスカルが両手に二丁のマシンガンを呼び出し、同じように自身に降りかかる災厄に銃口を向けた!そして……。

「ファイア!!!」

「落ちやがれッ!!!」


ドゴオォォォォォォン!!!


 無数の光球と無数の弾丸がぶつかり合い、ランボ達とガブリエルの間に分厚い煙のカーテンがかかる!

 轟音と熱風が吹き荒れる激しい戦闘の中心で、対照的に小さな少年は一人静かに精神を極限まで集中させていた……。

(ふぅ……今は周りのことは忘れろ……ただ、自分とこのシムゴスのコアストーンを同期させることだけ考えろ……)

 あらゆる光を飲み込むような、あらゆる色を塗り潰すような、そんな漆黒の石……。ユウのグローブに嵌め込まれているその石に自分の存在を重ね合わせていく……。

(大丈夫……あのシムゴスのものだとしても、今はただのコアストーン……いつもと同じようにやれば、きっと……)

 ユウの意志が、感情が妖しく光る石に流れ込む……。それに伴い少年の感情も昂り……。

(できる……いや、できないと駄目なんだ!僕がなんとかしないとみんなが………)


バリッ………


「えっ……?」


バリッバリッバリッバリッバリッ!!!


「な!?これは!?」

 漆黒の石から、漆黒の稲妻が溢れ出し、周囲を攻撃していく!……無差別に。

「ガアッ!?」

 抵抗する暇もなく、焼き尽くされる青肌……。

「みんな!?」

「わかってる!とにかく今は回避に専念だ!」

 自分達の希望であり、逆転の鍵であるはずの黒き雷光を、必死で避けるアールベアー達……。

「なんだ!?ちぃっ!?こんなもので、やられるわけには!!!」

 ガブリエルは自慢の絶対防御気光を展開し、稲妻を完全にシャットアウト……。


ビキッ……


「何!?」

 なんと絶対防御気光の稲妻が当たった箇所に小さな亀裂が入る!一発だけならその程度のひびができたところで何の問題もない。しかし、稲妻は少年の意志を無視して、まだまだ出続けているのだ!


バリッバリッバリッバリッバリッ!!!


「くそっ!?このわたしが!ガブリエルが回避せねばならんとは!」

 稲妻こそ当たっていないから、当然、肉体的ダメージはない。しかし、避けるという行為は、防御力に絶対の自信を持っていたガブのプライドを深く傷つけたのは言うまでもない。

「一体、これは……何が起こっているんだ!」

 眉間にシワを寄せながら、ガブが稲妻の発生源を探していると、そこには攻撃しているはずなのに、苦悶の表情を浮かべている少年の姿が……。

「あいつがやったのか……?」



「ぐうっ!?止まれ!?止まれよ!?このままじゃ、みんなが!?」

 自分の腕で輝くコアストーンに必死に訴えかけるが、その思いは一向に届かない。

 むしろ、彼が焦れば焦るほど、黒い稲妻は荒ぶり、強力になっていく……。

「みんなを!助けるために来たのに!こんなんじゃ!むしろ、みんなを!?」

「落ち着け、少年……大丈夫だ……あいつらが……この程度で、やられる奴らじゃないのは……お前が一番わかっているだろ……だから、焦る必要なんてない……」

「……カツミさん……」

 ユウの横で先の負傷で動けずにいたカツミが優しく声をかけながら、そっと少年の腕を握る……。すると、みるみる少年の心は穏やかさを取り戻し、それに比例するように稲妻が収まっていった……。

「止まった……」

「それでいい……それで……ぐっ!?」

「カツミさん!?」

「大丈夫……ちょっと、痛みを感じただけだ……」

「そんな身体で僕のことを気遣って……ありがとうございます……」

「礼を言う暇があるなら……次に備えろ……あれだけの力を見せつけられたら……次はあいつもなりふり構わずに来るだろうからな……」



(あの少年……そうだ!確か、ユウだ!あいつは念動力で周りの物を動かすことしかできないはず……!?わたし達の知らない能力を隠し持っていたのか……それとも、最近、手に入れた…………まさか!?シムゴスか!?シムゴスのコアストーンを手に入れたのか!?)

 天啓か、散々誇示していた優秀さの証明か、ガブはこの短時間、限られた情報しかない中で、正確に答えにたどり着いたのだ。

「この!?奴ら、怪我したカツミ守っていたんじゃなくて、あのガキにわたしを倒させる準備をしていたのか!!」

 ガブの目の色が変わり、さっきまで名前さえ忘れていた少年に全神経が集中していく。それだけ、あの黒い稲妻が彼にとって脅威であり、恐怖だったのだ。

「……ネジレの奴がクラウチを差し向けた結果、わたしを倒す武器を手に入れたとか………笑えねぇんだよ!!!」

 ネジレに対しての文句とも取れるガブの咆哮が戦場に響くと同時に、戦闘は再開された!

 再び四方八方から、青肌達がユウを守るランボ達に群がっていく!



「ランボさん!?みんな!?」

「オレの……オレ達のことは気にするな!お前はお前のミッションに集中しろ!」

「なんだかわかんねぇが!この青い奴らより!壊浜にいた連中の方が!よっぽど強かったぜ!」

「そうそう!オレ達はこの程度で!やられるような!やわな鍛え方!してないんだよ!なぁ!」

「ええ!見せてやりましょう!ハザマ親衛隊の!底力って奴を!」

 青肌に対処しながら、思い思いの言葉をユウにかける四人……もしかしたら、少年を安心させるためだけじゃなく、自分達を必死に奮い立たせているのかもしれない。

「皆さん……くっ!?今度こそ!今度こそやってやる!!」

 しかし、四人の言葉はユウにとってプレッシャーになってしまった……。

 重圧が彼の小さな背中にのし掛かり、その焦りがシムゴスのコアストーンに……。

「だから、それじゃあ駄目だって……」

「――ッ!?………カツミさん……!?」

 再びカツミの優しい声がユウを我に返した。

 カツミはもちろんストーンソーサラーではない。コアストーンの知識なんて全くない。だが、多くの強敵と渡り合い、生き残ってきた経験と戦士の本能が、今のユウではシムゴスの石を使いこなせないと訴えているのだ。

「少年……ランボ達のことは一旦忘れろ……」

「そんなこと!?」

「あいつらは大丈夫だって言ったろ……あいつら自身もそう言ってるし……」

「でも……」

「仲間を信じるってのはそういうことだ……むしろ、信じて任せる……それができて初めて仲間と呼べるんだ……!」

「信じて任せる……」

「まぁ……おれみたいに……リーダーなのに戦闘以外は、任せっぱなしなのは……どうかと思うが……」

 カツミの言葉をユウは素直に受け入れることができた。それはカツミが神凪最強クラスの戦士だからだけではない。彼の言っていることが、ユウのよく知る人物の行動と重なったからだ。

「そう言えば……うちの……ネクサスのリーダーも、人に頼りっぱなしでしたね……」

「そうだ……頼ってやればいい……それに応えてくれる連中だ……あいつらは……」

「……はい……」

 ユウは深呼吸をして、目をゆっくり瞑った……。戦場のど真ん中で、そんなことをするなんて自殺行為にも等しい。けれど、もちろんユウは死ぬつもりなど毛頭ない。そうはならないと仲間を信じての行動だ。

(……カツミさんの言う通り、一人で背負い込む必要なんてない……僕には頼れる仲間がいる……むしろ、僕みたいな未熟者が彼らを守ろうなんて考える方がおこがましいんだ……今はただこの石とつながることだけを……!)

 再びユウの心とシムゴスのコアストーンが重なり合っていく……。

(いい感じだ……さっきはここで焦ったから、力が暴走してしまったんだ……焦るのは仲間を……自分を信じられないから……みんなも僕も死線をくぐり抜けてきた……それは間違いなく自信にしていいはずだ……!自信を持て、ユウ・メディク……!誰よりも仲間を……そして自分を信じるんだ……!)

 ユウのグローブに嵌め込まれた石が淡く優しい光を放ち始める……!

(……完全に石とつながった……これなら……いや、それだけじゃ駄目だ……さっきみたいに周囲に力を垂れ流すんじゃなくて、力を収束させないと、あのバリアは打ち破れない……エネルギーを一点に集めて、ターゲットに全てぶつける……そんな方法………ある!)

 ユウがガブリエルを倒す方法を思いついた!……が、ほんの少しだけ遅かった……。


「ぐあっ!?」

「そろそろ……限界……ですね……」

「カルロさん!?シゲミツさん!?」

 騙し騙しやってきたカルロとシゲミツが吹き飛び、膝を着いた。周りには多くの青肌達が転がっている。むしろ、ここまでよくやったと褒めるべきだろう。

「くっ!?」

「ランボ!気持ちはわかるが、助けに行ってる暇はないぞ!」

 そう、彼らの敵は青肌ではなく、それを操る者……ガブリエルの攻撃も苛烈を極めていた!

「助け合うなんて!雑魚同士の馴れ合い!わたしのような超越者には通用しないんだよ!!」


ドドドドドドドドっ!!!


「ぐうっ!?」

 何度目かになる、光球の雨……。

 アールベアーとホムラスカルの周りを着弾し、辺り一帯を土煙が覆う。

「カズヤ!?」

「俺は大丈夫だ!お前は……」


ガァン!!!


「ぐはっ!?」

「――!?カズヤ!?」

 土煙のカーテンを光の蛇が切り裂き、そのままホムラスカルを遥か彼方に弾き飛ばした!

 ガブリエルが杖の先から発生させた光の刃を細く鞭のように伸ばし、混乱に乗じて攻撃してきたのだ。

「呼んでもないのに、後から来て!鬱陶しいんだよ!!」

「ガブ!?お前!!」

「君の顔も見飽きたよ、ランボ!!後ろのガキごと消し飛ばしてやる!!!」

 ガブリエルは光の鞭を消し、杖を天に掲げ、力を込める!


ブオッ……


「これは……!?」

 ガブリエルの頭上に浮かび上がったのは、今までとは比較にならないほどの巨大な光球……彼の最大にして、最強の必殺技だ!

「このわたしに歯向かったことを後悔しながら!……逝けっ!!!」


ドシュウン!!!


 ガブリエルが杖を振り下ろすと、巨大な光球がそれに合わせて、アールベアーに……いや、その後ろにいるユウに向かって来る!

 光球が迫る中、ランボの頭は時間を引き延ばし、必死にこの状況の打開策を探し出す。

(避けるか……!?だが、オレの後ろにはユウとカツミさんが……なら攻撃をぶつけて、相殺させる……!それも無理だ……こうなったら、この身を盾にして……!)

 ランボが選んだのは自らの身体で攻撃を防ぐこと……。当然、そんなことをしたらどうなるかは聡明な彼にはよくわかっている……。

(防御力自慢のアールベアーでも、これには耐えられないだろう……まさか、二戦連続で愛機を失うことになるとはな……けど、今度はオレも一緒に逝ってやる!オレ達で未来の希望を守るんだ!)

 覚悟を決め、大きな身体を、さらに大の字に広げるアールベアー……。ランボ・ウカタの命運もここまで……。


「諦めるなんて!お前らしくねぇだろ!!」


「――!?……カズヤ!?」

 死を意識したアールベアーの前に、生身のカズヤが飛び出した!そう生身のだ!

 さっき吹き飛んだのは、実はホムラスカルだけ……彼は光の鞭が命中しようとした瞬間、自らの意志で愛機から脱出していた!だが、今はそんなことはどうでもいいし、生身の彼がいたところでこの状況はどうにもならない!

 カズヤ以外はそう思っていただろう……。

「下がれ!ピースプレイヤーのないお前じゃ……!」

「やっぱ、らしくねぇな!つーか、忘れてんじゃねぇよ!壊浜での俺とお前のどつき合いを!!!」

「忘れるわけないだろ!!あの時の……まさか!?」

 ランボの胸の奥に甦る、彼史上でも屈指の激闘の記憶……あの時、相対した特級ピースプレイヤーの記憶!それが現実の世界にも甦る!

「そのまさかだよ!防御力ならこいつに勝てる奴なんていないだろ!なぁ!ノーム!!!」

 アールベアーに負けず劣らずの大きな、ブラウンの重装甲を持ったピースプレイヤーが今、ここに顕現する!全ては小さな希望を守るために!

「根性……見せてやるよ!!」


バギイッ!


「ぐうっ……!?」

 ノームが巨大な光球を全身で受け止める!ブラウンの装甲の表面が赤熱化し、亀裂が入り、細かな破片が飛び散っていく……。アールベアー以上の防御力を誇るノームでもガブリエルの全力を込めた攻撃には耐えられないのだ……今のままだったら。

「ノーム!お前が俺を気に入らないのはわかる!俺もお前がドン・ラザクのピースプレイヤーじゃなかったら、使ってねぇからなぁ!!!」

 この土壇場でカズヤはノームを罵った!錯乱しているのか、本能がそうしろと訴えたのかは彼自身わからない……。だが、必要だと、そうしないと後悔すると感じたのだ!

 自分の思いをぶつけるべきだと!

「でも!ユウが!壊浜出身のユウが頑張ってるんだ!お前がもし……ドンとともに壊浜を守って来たことに誇りを持っているなら……今だけでいい!これで最後でいい!俺に……力を貸せぇ!!!」


ブォン……


「――!?……ありがとよ、ノーム……」

 ノームの両目が輝き、全身に力が漲っていく!カズヤの想いが届いたのだ……心を力に変える特級ピースプレイヤーに!

「ウオラァァァァァッ!!!」

 巨大な光球を包み込むように、抱き締めるように、ブラウンの両腕で挟み潰していく……。そして……。

「ラァァァッ!!!」


バァン………


「なんだと!?」

 ガブリエルの最大最強の必殺技はノームによって、かき消された!驚愕するガブ!

 そして、全てを出し切ったカズヤ……。

「最初で……最後の完全適合……我ながら……よくやったぜ……でも……もう、俺には……立っている力も……あとは……」


ドサッ……


 前のめりに倒れるノーム……。けれど、その仮面の下のカズヤの顔は満足げだった。なぜなら彼には後を託せる仲間がいるからだ!

 その仲間が彼の想いを引き継ぎ、全てを終わらせるために、彼を守るように前に出た。

「はい……後は任せてください……」

「貴様!?」

「そろそろ……終わりにしようか……」

 ユウはそう言うと、シムゴスのコアストーンが嵌め込まれたグローブ、それを着けている手を人差し指と中指を伸ばして、シムゴスに向けた……。まるで拳銃を突き付けるように……。

「なんかちょっと悔しいけど……これしか思いつかなかったよ……」

 その手を、もう一方の手で包み、狙いを定める……。

 これは彼が所属するネクサスの一応リーダーとなっている男の必殺技の構えと同じ……かつてユウが壊浜で目にした瞬間、情けないことに腰を抜かしたあの技と同じ構えだ!

 そして、その技と同様にユウの心がコアストーンに伝わり、莫大なエネルギーが指の先へ……あとは名前を叫ぶだけ、ユウ・メディクの必殺技の名前を!

「ブラックレイ・バレット」


ドシュウゥゥゥゥゥッ!!!


 少年の指の先から放たれた漆黒の光の奔流は、地面を抉りながら、金色に輝く敵の下へ一直線に向かっていく!

 圧倒的なスピードとパワーを誇るそれを前にガブリエルは一歩も動けない!

(回避……できない!この速度、この攻撃範囲では避けきれない!防御は……無理だ!絶対防御気光でも防げない!じゃあ、どうすればいい!?わたしは……)


ドシュウゥゥゥゥゥッ!!!


 漆黒の光の奔流がガブリエルを容赦なく飲み込んだ……。光は全てを焼き尽くし、ガブリエルは跡形もなく……。

「マジか………」

 勝利を確信したユウは目を疑った……。

 自身の渾身の必殺技が通り過ぎた場所に人影が……きらびやかな金色の装甲が汚れ、黒ずみ、背中から立派に生えていた翼も消失したボロボロのガブリエルが立っていた……。

「今までの言葉は………撤回するよ……君達は……愚かでもないし……下等でもない……そして……失敗作どもは道具じゃなくて、大切な仲間だ……身を挺してわたしを守ってくれるね!!」

 ガブは周囲の青肌達に命じ、肉の壁として自分を守らせたのだ!

 その結果、ユウ、渾身の必殺技、ブラックレイ・バレットの威力は弱まり、青肌の壁を打ち破り、絶対防御気光も貫きこそしたが、命を取りとめることには、かろうじて成功したのだ。

「くそっ……」

「あれだけのエネルギー……もう一発は……それどころか動くこともできないんじゃないか……」

「この……」

 ユウは言い返せない……その通りだから。暴走状態で放った黒い稲妻とブラックレイ・バレットで彼の心も身体も限界だった……。

 一転、窮地に陥った彼にガブリエルの頭上で待機していた小型メカが照準を合わせる。そして……。

「あと一歩……残念だったな!ネクサス!!」

「むしろ喜ばしいよ、オレにとってはな」


ドゴォン!ドゴォン!


「な!?」

小型メカが突如、爆散!さらに……。


ガシッ!


「貴様!?」

 ガブリエルに掴みかかる……アールベアーが!

「やっぱりオレはユウには人を殺めることはして欲しくなかったから、助かったよ……!」

「ランボ・ウカタ!!!」

「あんなに饒舌だったのに、語彙力なくなってるぞ、ガブ……それだけ、お前も限界が近いってことだな……」

「うるさい!いいから離せ!」

「離さないよ……こんだけ近づいていればバリアも張れないだろうからな……!」

 もはや、掴み合うというより、抱き合っているような形になっている二人……。確かにこの状態では絶対防御気光も意味もないのだろうが……。

「バカが!この距離なら貴様も攻撃できないだろうが!」

 この超近距離で攻撃をできる手段は持っていないだろうという、ガブの持っている情報に基づいた発言……しかし、それはこの戦いが始まる前のものだ!

「お前の言う通りだ……オレの以前の愛機、プロトベアーだったら無理だったろうな……!!」

「何!?」

「このアールベアーにはあるんだよ!お前に止めを刺す武器が!!」

 ランボの言葉に反応し、アールベアーの胸の装甲が開いていく……。そしてその中には砲口が……。

「ハイベアブラスター……こいつなら……!」

 砲口にエネルギーが集まっていく……全てを今度こそ終わらせるために……。

「ふざけるな!この距離で撃ったら貴様もただでは済まないぞ!?」

「ふざけてなんかいないよ。お前なら知っているはずだろう?オレもお前に負けず劣らず防御力には自信があるんだ」

「そんなことで!?」

「あと、無茶をするのはネクサスのお家芸みたいなもんだしな」

「こいつ……!?」

 ガブは生まれてから一番の恐怖を感じた……。

 空っぽじゃない、信念を持って戦っている者の覚悟とは、これほどまでに恐ろしいものなのかと……。

「や、やめろ……!」

「やなこった」


ドゴォォォォォォン!!!


 アールベアーの胸が輝いたと同時に、二人を爆炎が包み込んだ。


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