失敗
「うおらぁ!」
ドゴオォォォォォォォン!
爆発とともに砕けたガーディアントの装甲が辺り一面に散らばっていく。その破片の中心で硝煙を纏いながら一人、アールベアーは立っていた。他に人影がないのは勿論、彼が全て吹き飛ばしてしまったからだ。
「ふぅ……大分、減ってきたな……」
最初の激突から時間が経ち、さらに戦況は神凪に……というより、ほぼ神凪の勝利が確定したと言って過言ではないほど、グノス軍は多くの兵力を失っていた。
けれど、ランボの心にはなんとも言えない不安が巣食っている……。
(優勢なのはオレたち神凪……普通に考えたらグノスがここから逆転することはない……ないはずなんだが……)
戦場の真っ只中で悩み、言葉にできない焦りに立ち尽くすランボに、新たに二つの人影が近づいてきた。
「ランボ!」
「ん?アツヒト………それにシゲミツさん!」
ネクサスとハザマ親衛隊の頭脳、サイゾウとヤーマッツが小走りでアールベアーに駆け寄る。
その姿はまるで街中で待ち合わせ場所に来たような緊迫感のないものだった。それぐらい圧倒的に神凪優勢なのだ。
「お疲れ様……ってまだ終わってないですけど」
「はい。でも神凪的にはかなり余裕が出てきましたね」
「こうやって集まって、くっちゃべられるぐらいにはな」
「このままグノスが撤退してくれれば、最良なんですが……」
「残念ながら、その様子はないですね……この状況ならグノスに何か動きがあってもいいと思うんだけどな……」
敗戦濃厚なグノス軍だったが、特に最初と何か変わった様子はなく、ただ正面から攻めて来るだけ……。このことに三人は疑問を持った……いや、彼らは戦闘が始まる前からずっとある違和感を感じ続けている。それは……。
「そもそもグノスは勝つ気が……これで勝てると思ってたんでしょうか……こんな旧式のピースプレイヤーで……」
「はい……もしかしたら、見た目こそアンティークだけど、中身は最新のものに……とか思っていたんですけど……実際に戦ってみたら、そんなことはなく……見たまんまの時代遅れの第四世代ピースプレイヤーでしたね」
「予想以上……いや、この場合は予想以下の性能と言うべきか……あまりに弱すぎる……数の差でどうにかできるレベルじゃない」
そう、ガーディアントの軍団を見た時から彼らはその古臭さに違和感を覚えていた。とてもじゃないが神凪の最新鋭機の相手が務まるようには見えなかった。そして、本当に務まらなかったのだ。
だが、そのあまりの弱さが逆に彼らの不安を掻き立てる。さらに言えば、もう一つ疑問が……。
「質の話で言えば、確かグノス帝国にはうんちゃらかんちゃらっていうすごい奴らがいたはずだよな……?全然、見当たらないんだが……」
「十二骸将な。そこまで、覚えにくい名前でもなかろうに……」
「というか、よくあれでわかりましたね、ランボくん……でも、アツヒトくんの言う通り……グノス帝国の長い歴史の中で、その時その時代で最強の戦士に贈られてきた称号、十二骸将……もちろん、今もその名を受け継いだ人達がいるはずですし、これだけの大規模な戦争に出て来ないなんて考えられないのですが……」
「その考えられないことが現実に起きている……指揮官的な奴も、猛将と呼べる奴もここにはいない……それどころか……」
「あぁ……そもそも部隊というか、組織として動いてない……適当に集めた奴らが好き勝手、暴れているだけだ……」
グノス軍は指揮系統が無茶苦茶……どころか、指揮自体が存在していないようだった。
町の不良達の喧嘩でも、もうちょっと組織的だぞ、と言いたくなるぐらいひどい有り様……それを国家の軍隊がするなんてアツヒト達には考えられない。だが、考えなければいけない!なので、三人は必死に頭を回転させる。なんてったって、それぞれの部隊の頭脳担当達なのだから。
「……色々とわからないことばかりですが、今ある情報を元に推理してみると……こんなにも弱いのにグノス帝国は何故、神凪に戦争なんて仕掛けて来たのか、考えられる理由は四つ……その一、単純に情報分析能力が低かったから、客観視できずに自分達の戦力を過大、ボク達神凪を過小評価していた……もっと簡単に言うとバカだったってことですね。でも、一国の大軍を動かすのにそれは……」
「その二は、勝つ為じゃなく、負ける為にやっているから……何でそんなことするのかわかんねぇがよ」
「その三は……この戦いは陽動……本命は他にある……例えば、この隙に本国に奇襲をかけるとか……神凪的に一番嫌なのはこれだな」
「あぁ、だが、本国は今は厳戒態勢だし、下手につついたら、さすがにいつも静観決め込んでる帝や近衛兵団も動き出すかもしれないからな……微妙なところだろ」
「じゃあ、四つ目になりますね……」
「あぁ……」
「はい……」
お互いの考えを確認、共有するように淡々と話し合う神凪軍の頭脳担当……賢い彼らには本当は既にわかっている。
四つ目が、最も彼らにとっては不都合な答えこそが正解だと言うことが……。
「その四は、この圧倒的不利な状況を一気にひっくり返せる作戦や、切り札がある……!俺達的に最悪なのはこれなんだけど……」
アツヒトの言葉にランボとシゲミツが頷いた。
これが彼らの不安の正体、戦闘中も、戦闘が始まる前もずっとグノスの隠し玉を警戒し続けていたのだ。取り越し苦労であることを祈りながら……。
「多分、それでしょうね……ただの直感ですが」
「オレもそうですよ。論理的な説明はできませんが、本能がそうだと言っている……!けど、それならさっきも言いましたが、そろそろ動いてもいいはずなんで……」
ガサッ……
「――!?」
「ランボくん!アツヒトくん!」
「わかってますよ……!」
小さな物音を聞き、アツヒト達は会話を中断して、戦闘モードに戻る。
お互い背中を守るように円になり、周囲を見回す。彼らの最悪の予想の答え合わせの時間が訪れたのだ。
ガチャ……ガチャ……
「倒したはずのガーディアントが……!?」
三人の周りで地面に突っ伏していたガーディアント達が、まるで上から糸で引っ張られたように不気味な動作で次々と起き上がった。
「あ?なんだよ……まだ元気があったのかよ……!」
めんどくさそうにアツヒトが吐き捨てる。しかし、心の中はそれ以上に疑問と不安に支配されていた。
彼の目の前に広がる光景は絶対にあり得ないからだ。なぜなら……。
「これだけのダメージで、まだ戦おうなんて……考えられませんね……」
「ええ……普通は無理です……どっからどう見ても致命傷を受けている者もいますから……」
普通の人間だったらどう見ても再起不能の傷を負った個体まで立ち上がったから……。さらに彼らの中で疑問と不安が膨れ上がる……。
「どう……思いますか、シゲミツさん……?」
「考えられる可能性は三つ……その一はボク達が勘違いしているだけで、彼らに大したダメージを与えられてなかった……これは無理筋でしょう。その二はボク達が知らないだけで、あれだけの傷に耐えられる人間がこの世には実はいっぱいいる……」
「それもないでしょうね……だったら、ピースプレイヤーなんか開発する必要ありませんもの……」
「じゃあ……その三……」
「……中身が人間じゃない……」
「だな」
三人の意見は一致……というかそれしか考えられなかった。信じ難いことに、その突拍子もない答えが一番きちんと筋が通っていたのである。
「P.P.ドロイドじゃねぇ……ちゃんと肉を切った感触があった……!」
「あぁ……それにあの動きはマシンのそれじゃない。最初の進軍こそ統制が取れていたが、乱戦になってからは目の前にいるオレ達、神凪軍に反射的に襲いかかっているだけだ……AIならもっとマシなはず!だとしたら、こいつら一体……?」
「百聞は一見に如かず……四の五の言わずに、この目で確かめて見ましょう……ソルミ!」
シゲミツが命じると彼の頭上に浮かんでいたソルミが降りて来て、そのまま目の前にいるボロボロのガーディアントに狙いをつけて……。
バシュン!
一筋の閃光がひび割れていたマスクに命中し、粉々に砕く!
そして、その中から、ついにそれが姿を現した!
「――!?」
「なんだ……ありゃあ……?」
砕けたマスクの下から出てきたのは、青い肌をした人型の生物……多分、生物だろう……。背中ごしにその顔を確認したアツヒトとランボには正確な判断ができなかった。
「こいつら……ブラッドビーストじゃねぇよな……?」
「なんとも……言えないな……別物に見えるが……それこそオレ達が知らないだけでこういう亜種みたいなものがあるのかもしれない……」
「そうか………つーか、ランボ……」
「あぁ……オレも気になっていた……」
それの一番の身体的特徴は青い肌で間違いない。だが、二人にはそれよりも引っ掛ったのは別の部分だった……。
「あの長い耳……ナナシが見たっていう、素顔のネジレの特徴に似ているが……まさか……」
「あぁ……本当、まさかだよ……この戦争にもあいつが関わっていやがんのか……!?」
ここでようやくこの不毛の戦いの裏に彼らネクサスの仇敵が潜んでいることに気づく!しかし、そのことについて深掘りする余裕は、悲しいかな今の彼らにはなかった……。
「お二人さん……仲がいいのはとても素晴らしいんですが……来ますよ、そろそろ……!」
二人が話している間に、最早、隠す必要ないと思ったのか、周りのガーディアント達はその装甲を脱ぎ捨て、中身である青い肌の集団がジリジリと包囲を狭めて来ていた。
「確かに……話をしている場合じゃないな……」
「あぁ……話すのも、考えるのも、こいつらを倒した後だ!!」
覚悟を決めたアールベアーがマシンガンの銃口を青肌に向け、躊躇なく引き金を引く!
バババババババババババババッ!!!
無数の弾丸が青い肌をいとも簡単に貫き、その全身を白い煙で包み隠す!
「……やったか……?」
残念ながら……。
「ガアァァッ!!!」
「ちっ!?」
やってない!煙の中から穴だらけの青肌が飛び出し、そのまま深緑の重戦士に襲いかかる!
「野郎!」
ガァン!
マシンガンを今度は本来の使い方ではない打撃武器として、振るう!銃身で側頭部を力の限り、ぶん殴ってやった!しかし……。
「ガアァァッ!」
ガシッ!
「ちいっ!?」
青肌は普通の人間なら昏倒しているであろう一撃を受けてもものともせずに、直ぐ様体勢を立て直し、アールベアーの両腕を掴んだ!
「腕を抑えたところで……アールベアーのパワーの前では無意……」
「ガアッ!!!」
「ぐっ!?こいつ……!?」
青肌の手を振り払おうとアールベアーは腕に力を込めたが、その細くて弱々しく見えるその手は微動だにしなかった。
プロトベアーの時点で腕力に関してはネクサスの中でもトップクラスだったが、アールベアーは壊浜でノームと格闘戦を繰り広げた経験を生かし、さらにパワーが強化されることになった。
そして実際に強化されたパワー!それと拮抗する力を、あろうことか目の前の謎の生物は持っているのだ!
「ガアァァッ!」
「この………離れろよ!!」
ゴン!
「ガア!?」
アールベアーは屈辱的だったが、パワー勝負を避け、無防備な青肌の腹に蹴りを入れ、突き放した!そして……。
「こいつももらっとけ!」
ドゴオォォン!!!
よろめく青肌を背中から伸びるキャノンで追撃!さすがにこれは効いたらしく、青肌は倒れ、二度と起き上がることはなかった。
「本当、なんなんだ、こいつら!?武装していない方が厄介じゃないか……!?」
撃退することこそできたが、その見た目の異常さに違わぬ能力の高さに驚きを通り越して、怒りを覚えるランボ。ガーディアントの時の方が遥かにマシだったのは言うまでもない。
それは他の二人も一緒だった。
「ええ……本当に厄介……パワーもスピードもかなりのもの……そして……」
「タフネスもやべぇな、こりゃ……多分、こいつら痛み、感じてねぇぞ。つーか、知性とか感情があるのか……?」
サイゾウとヤーマッツもなんとか、青肌を退けたようだが、ガーディアントの時のような余裕はない。
先ほどまでくっちゃべっていたのが、嘘だったと思えるほどに彼らは精神的に追い詰められていた。
その謎の生物の能力に……そしてそいつらの圧倒的な数に……。
ガサッ……
青肌達は仲間がやられたことに動じもせず、無感情に次の攻撃の機会を伺って、虚ろな目で三人を眺め続けていた。
「俺達、神凪軍より遥かに多いガーディアントの中身が全部、こいつらだとしたら……一気に戦況がひっくり返るぞ……!」
アツヒト達が青肌を確認する少し前から、戦場の各地で、ガーディアントの脱皮は始まっていた。
そして、出現した青肌達は彼らの当たって欲しくない予想通りの活躍を見せている……。
「うわぁぁぁぁ!?なんだ!?こいつら!?」
バン!バン!バン!
「ガア!ガア?ガアァァッ!!!」
恐慌状態に陥ったヘイラットが銃を乱射するが、青肌達はそれをものともせずに進んで行く!
「来るなぁ!?」
「ガアァァッ!!!」
「ぐっ!?鬱陶しいですね!!!」
ガァン!!!
「ガッ!?」
「アァァッ!?」
ヤーテンが背中から生えた二本のアームを振り回し、群がる青肌を蹴散らす!……が。
「ガアァ……」
すぐに立ち上がり、再びヤーテンに向かって来た。このやり取りを先ほどから、延々と何度も繰り返している。もちろんヤーテン側からしたら、この不毛なループから抜け出そうと努力をしているのだが……。
「ワタシの攻撃力ではこいつらにまともなダメージを与えられないのか……!?」
そのタフネスの前では防御に重点を置かれて開発されたヤーテンではどうすることもできない。ならば、彼のネクロ事変からの相棒なら……。
「チャージはまだか!?」
「今!できた!喰らいやがれ!!!」
ドシュウゥゥー!!!
地面すら溶かすほどの熱線が青肌達をまとめて焼き尽くす!
最強の矛を自称するだけあってヤーカツの攻撃は、タフネス自慢の青肌達を一瞬で葬った!……これも先ほどから何度も行っている。けれども、事態は好転していない。それは何故か?
「ガアァ………」「ガアァ………」
「ちっ!?ぞろぞろと……一体、何匹いるんだよ!この化け物ども!?」
倒した側から、また新たな青肌がどこかからぞろぞろと湧いて出てくる。結果、事態は良くなるどころか、悪化し続けていた。
「ぐっ!?次は撃てるのは……?」
「ま、待てよ!?さすがの南国育ちでサウナ好きのオレでもこんな短時間に熱線を連発していたら、ヤーカツ内部の温度が耐えられるレベルを越えちまう!!」
「つまり……打つ手なし……ってわけですか……」
「あぁ……残念ながらな……!」
「しつこい!」
ザシュ!ザシュ!ザシュ!
顔良の槍が立て続けに青肌の身体に三つの穴を開けた!……が。
「ガアァァッ!」
「ぐぅ!?これだけやっても無駄だと言うのか……!」
青肌はその程度では止まらない!知性を感じさせない虚ろな目でひたすら敵を求めて前に進む!
「首を切り落としてもしばらく動いているからな……!穴を開けたぐらいじゃなんてことないんだろうな……」
文醜の足下には彼の大斧で、首を切り落とされたり、縦に真っ二つにされた無数の青肌が転がっていた。
ガーディアントより強くなったとしても、彼らからしたら倒せないほど強い相手ではない。ただ、やはり数の多さと、恐怖や痛みを感じないというところが厄介極まりないのだ。
「義兄弟……さすがのおれもスタミナの底が見えてきたぜ……」
「なら、あなたより体力のないわたしはもう底についてますね……」
「悔しいが………」
「我らのコンビネーションでどうにかできる状況では……」
「しゃあ!!!」
ザンッ!ザンッ!ザンッ!
凄まじいスピードで何度も、何度も青肌を切りつけるサイゾウ!さらに……。
「おまけだ!遠慮すんなよ!」
ゴスッ!ズブッ!ズブッ!ズブッ!
ボディーブロー、そして手甲からの光の針のゼロ距離射撃!
「ガ………」
ここまでやって、ようやく一体の青肌を沈黙させることに成功した。
「ランボ!シゲミツ!大丈夫か!?」
「あぁ……」
「なんとか……」
「ガアァァッ!!!」
「な!?」
一瞬の油断……ランボがアツヒトの声に答えようとした瞬間、仲間の死体の山に隠れていた青肌が満を持して飛び出し、仇を取ろうと深緑の装甲に襲いかかっ……。
「させるか!!!」
ザシュッ!!!
漆黒の巨大な影がランボの目の前に落ちて来たと思ったら、青肌の身体が二つに斬り裂かれた。こんな真似をできるのは強さだけは一級品の彼しかいない!
「蓮雲!黒嵐!来てくれたのか!?」
現時点でネクサスの最高戦力と言って差し支えない男が颯爽と仲間の窮地に現れた!……というわけではなさそうで……。
「喜んでいるところ悪いが……おれはともかく、黒嵐は限界だ……!」
「ひひん……」
いつもと違うか細い嘶きの黒嵐……。よく見るとその身体には無数の傷痕が……。
「そんな……」
言葉を失うランボ……別に希望が消えたことにガッカリしているのではない……。
仲間の傷ついた姿であの時のトラウマが蘇ってしまったのだ。
「このままじゃ……アイムみたいに……」
「あぁ……だから、情けないが戦線を離脱しようとしたところにたまたまお前らが見えただけだ……」
「そうか……」
「ちなみにあいつらもおれ達と同じだ……」
「あいつら……?」
蓮雲が親指を立てて、後ろを指すと、そこには二つの人影……正確には人影一つとAI影一つがこちらにゆっくりと向かって来ていた。
「シルバー!カルロさんも!」
「騒ぐな、人間……」
「よぉ……元気……じゃねぇよな……」
疲れ果てた様子で歩くシルバーウィングとヤースキ……スピードと空中戦自慢の彼らの足が地についていることでランボ達は事情を察した。
「エネルギー切れ……ですか……?カルロ……?」
「空っぽってわけじゃないけどかなりヤバい……元々、このヤースキは飛行できる代わりに経戦能力は低いからな……そっちのAIも……」
「一緒にするな!……と言いたいところだが、あの不気味な化け物達相手には心許ないな……」
目立ちたがり屋の彼らがエネルギー節約のために地道に歩いて来たことを考えれば、事態はかなり切迫しているのだろう。
満身創痍の仲間達の姿を見たら、ランボ達も決断をしなければいけない……。
「アツヒト……」
「あぁ……一時撤退……蓮雲がやったように道中の味方を拾いつつ、この戦場から離脱する!」
「不本意ですけど……それが最善でしょうね……」
頭脳担当の意見が一致し、アツヒトの言葉に他の皆も無言で頷いた。
これでネクサス・親衛隊連合の撤退が決まっ……。
「待ちなさいよ。ここからが面白いところなんだから」
「――!?」
その声には聞き覚えがあった……ネクロ事変に協力した者達には……。
案の定、声のした方向に顔を向けるとそいつはいた。ただ、あの時と違い仮面を着けておらず、美しい顔と長い耳を白日の下に晒している。
「てめえ……ネジレか……?」
「あぁ、そうだよ、ネクサス」




