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No Name's Nexus  作者: 大道福丸
Nemesis
126/324

集結

 獣ヶ原――見渡す限り、草木一本生えていない広大で不毛な平地。国際中立保護地域に設定されているが、実際はどの国も欲しがらないから放置されているだけである。

 しかし、それ故に色々と都合がいいのか、この地に宿る魔力に引き寄せられるのか、歴史に残る数々の激闘の舞台になってきた。

 かつて神凪とグノス帝国が衝突した場所もこの獣ヶ原だ。

 そして、その時から長い年月が経ち、皆の記憶からこの場所の名前が消えかかっていた時に行われたグノス帝国皇帝ラエンによる神凪に対しての宣戦布告……の数日後、この地に両国の戦士達が集結していた。

 あの時の再現、いや、過去の戦争を越える凄惨なる戦いの記憶をこの地に、歴史に、刻み込むために……。



「ふぅ………やってやる……やってやる……やってやる……」

 高揚を必死に抑えようとする者……。

「ほ、本当に戦争が始まるのかなぁ……?何かの間違いなんじゃないの……?」

 恐怖で震える者……。

「ちゃんと装備を確認しておけよ!一つのミスが文字通り命取りになるからな!!」

 冷静に淡々と準備をする者……。

 グノス軍を迎え撃とうと集まった神凪の戦士達は悲喜こもごも、思い思いの声を上げていた。そんな中……。

「よっ!元気そうだな、ランボ」

 今、まさに戦争が始まろうとしているというのに、場違いに明るい声がランボの耳に聞こえてきた。声のした方向に顔を向けると案の定、よく知った顔がこれまた場違いに笑っていた。

「アツヒト……久しぶりだな」

「おう。ナナシがよくわかんねぇ島に行っちまってから、ネクサスは開店休業中みたいなもんだったからな」

 この殺伐とした獣ヶ原でここだけ同窓会でもやっているような和やかな雰囲気だ。大統領直属部隊ネクサスの頭脳とも言える二人が久方ぶりに顔を合わせたのだから積もる話もあるのだろう。けれども、悲しいかなそんな悠長な真似をしている暇はない。

 彼らもそれをわかっているから、一気に気持ちを切り替えた。

「……身体の方は大丈夫なのか……?」

 ランボはまじまじとアツヒトの身体を観察しながら体調を聞いた。今もまだ目覚めないアイムほどではないが、彼も大きな怪我を負って、故郷で療養していた。これから戦争をやろうというのだから、仲間であるランボが心配するのは当たり前だろう。

「大丈夫!むしろ鍛え直してパワーアップ!……と言いたいところだが、なんとかリハビリを終えて、ギリギリシムゴス戦前の状態に戻すことができたって感じかな」

「そうか……」

「まっ、ナナシ的に言えば、なるようになるだろ」

 それがただの空元気だと、長くはないが、濃い時間を共に過ごしたランボにはすぐにわかった。

 アツヒト的には復帰戦は軽い任務をサクッとこなして、そこから段階を踏んで徐々に勘を取り戻し、万全の状態に持っていきたかった。先ほどの無駄に明るい挨拶も強がりに他ならない……正直、不安で仕方ないのだ。

 そしてその思いはランボも似たようなものだった。

「お前の方は体調は……問題ないだろうけど……ピースプレイヤーの方はどうなんだ……?」

「あぁ……オレの新しいマシン、ナナシが昔使っていたプロトベアーに、オレが使っていたプロトベアーのデータをフィードバック……強化改造した『アールベアー』は完成は……している……一応な……」

 ランボもシムゴス戦で怪我こそ負わなかったが、大切なもの、共に修羅場をくぐり抜けた愛機プロトベアーを失っている。なので、彼はあの日から今まで研究所にこもりっきりで、共に戦場を駆ける新たな愛機、新型開発に没頭していた。そしてその成果こそが今名前の出たアールベアーなのだが……。

「しかし、実戦どころか、模擬戦もまともにできていない……それがまさか、急に出番が……しかも相手はグノス軍になるとは思いもしなかった。とんだ初陣だよ……」

 ランボもまた満足な準備ができていなかった。一流の戦士である彼はもちろん戦いとはこちらの都合などお構い無しにやってくることを理解している……理解しているが、この状況はさすがに手心を加えてくれと文句の一つも言ってやりたい気分だった。

「お互いに……」

「大変だな………」

「「はぁ………」」

 二人仲良く深いため息をつく。そんな戦場の中でも特に陰気な雰囲気を醸し出す彼らに近づいてくる男が一人……とオリジンズが一匹。

「貴様ら情けないぞ!それでも戦士か!」

「蓮雲!」

「黒嵐!」

「ヒヒン」

 相変わらずのバカの癖に偉そうな態度をとっている蓮雲を乗せて、相変わらずの心地良い足音を響かせながらその相棒黒嵐が二人の下に。ネクサスの中でも特に強い絆で結ばれたコンビが今、獣ヶ原に馳せ参じた。

 背中に巨大な武器を背負った蓮雲は二人の側に来ると相棒から颯爽と飛び降り、自分の足で獣ヶ原に立つ。

「いや、お前、俺達のこと情けないって言うけど、この状況で元気溌剌でいられる奴なんていないって……」

「それはそいつが戦士じゃないからだ!生粋の戦士ならば、戦いを前にすれば心が踊るものだ!おれはそうだ!厳しい鍛錬の末に、その力を遺憾なく発揮できるようになったこの豪風覇山刀を振るいたくて仕方ない!!」

「うわぁ………」

 豪風覇山刀を使いこなせるようになったのはともかく、厳しい鍛錬の末にさらにあれになった蓮雲にドン引きする二人……けれど、ネクサスが誇るバカは彼だけじゃない!

「よく言った!蓮雲よ!一度は使ってみたかった、その意気や良し!ならば今、使おうではないか!その意気や良し!」

「……シルバーウイング……お前もか……」

 太陽の光を反射する銀色の翼を羽ばたかせて、空からバカが舞い降りる!飛行形態からスムーズに人型に変形し、懐かしき仲間の輪に加わった。

 しゃべらなければカッコいいそのフォルムを見ていると、改めてアツヒトとランボはAIである彼がどうしてこんな残念な仕上がりなのか不思議に思った。

「パワーアップしたのは蓮雲だけではないぞ!我も修理がてら、各部を最新のパーツに交換して性能が向上したぞ!」

「へえ、どんくらい?」

「聞いて驚け!防御力は10倍!攻撃力は100倍!そして……機動力は1000倍だ!」

「いや、嘘つくなよ……今日日、漫画でもそんなインフレすることないぞ。現実だったら尚更……こんな短期間でそんなに性能が上がるなんてあり得ない」

「ふん!やはり下等な人間だな!こういうのは景気付け!気持ちの問題なんだよ!!」

「ええ……お前が気持ちとか言う……」

 まさか彼らもAIに心の持ちようについて説教されるとは考えてもいなかった。

 ただ、いつもはとんちんかんなことばかり言っているAIだが、今の発言に関してだけはあながち間違っていない……そう少年は思った。

「確かにこういう状況だからこそ、無理やりにでも自分を奮い立たせるってことは必要かもしれないね」

「ユウ!」

「お久しぶりです、皆さん」

 バカ二人とは醸し足す雰囲気が全然違う聡明な少年、ネクサスが誇る天才ストーンソーサラー少年、ユウもアツヒト達と合流する。

「下を向いていたって状況は変わらないんなら、ポジティブでいた方がいいですよ。ぼくは壊浜での生活でそう学びました」

 良くも悪くも……いや、とても悲しいことだが、幼い頃から命の奪い合いが日常の世界にいたこの少年はこういう状況でも平常心を崩さないのである。

 しかし、だからといって戦争に参加していいとは、まともな大人なら思わないだろう……ランボもその一人だ。

「いや、それはそうかもしれないのだが……というか、それよりも君の性格じゃ、来るとは思ってたけど……君は、君のような子供はこの戦いに加わるべきじゃない……!」

 ランボの必死の訴えに、正直ユウは辟易した。いや、彼が自分のことを心配してくれることは素直に嬉しい……嬉しいが、子供扱いされるのは不愉快だし、同じような問答はここに来るまでに散々、嫌というほどしてきたからだ。

「神凪の軍のお偉いさんにも同じ事を言われましたよ……」

「なら!」

「僕もネクサスの一員です!」

「――!?……だとしても……オレは……」

 ユウの強い決意に気圧されるランボ。ユウの気持ちは痛いほどわかるのだが、それでも、ネクサスの中で一番常識的な感覚を持っている彼は納得できなかった。

 だけども、ネクサスの中では少数派でも神凪軍の中では彼の考えが多数派だ。結果、ユウも誠に不本意ながら、折れなければいけなかったのだ。

「安心してください、ランボさん……この戦争には参加しますが、戦闘には参加する気はないですから……」

「ん!?それって、どういう意味だ……?」

「軍に参加するなら衛生兵……それしか認められないって……僕、トランスタンクを操縦できるから、それに乗って怪我人を回収して来いって……」

「なるほど……それなら、まぁ……」

「僕としては不本意極まりないですけど……」

 神凪軍の妥協案をユウは渋々受け入れてこの場に立っていた。蓮雲ほどではないが、一介の戦士としての自信と誇りを持っている彼からしたら屈辱的なことだろう。しかし……。

「まっ……実際、戦闘が始まったら、どうにでもなるし……」

「何か言ったか……?」

「い、いえ!何でもないです!」

 思わず、本音がこぼれ落ちる。そう、ユウは軍との約束など更々守る気などない。こういう生意気さと強かさは、良くも悪くもまだまだ子供なのだ。

「まぁ……いいか……これで、とりあえず……」

「あぁ、現状集まれるネクサスの戦闘員は全員集合だな」

「おう!」

「ヒヒン!」

「ふん!」

「はい!」

 輪になったメンバー同士がお互い顔見合わせ微笑み合う。こんな状況でも仲間と再会できるのは嬉しいものだ。

 これで残りのメンバーもいてくれれば……。

「アイムはともかく、ナナシの奴はタイミング悪いよな……いや、むしろ逆か」

「だな。あいつのことだから、戦争なんてめんどくさいこと、できる限り関わりたくないはずだからな……」

「ふん、でも最終的にはなんだかんだで首を突っ込むことになる」

「ヒヒ」

「下等で愚かな人間の極みだな」

「それがナナシ・タイランですから」

 彼らの心に、キザでのんきでめんどくさがりでどうしようもない肩書き上のネクサスのリーダーの顔が思い浮かぶ。

 そのまったく一ミリも尊敬されていないリーダー、ナナシはナナシでこの状況に負けず劣らずの面倒ごとに巻き込まれていたのだが……彼らは知る由もない。

「ネームレスの奴も今、何やってるんだろうな……?」

「えっ?ネームレス……さんですか?」

 アツヒトの言葉にユウが反応した。彼からしたら、今の流れでネームレスの名前が出てくる意味がわからなかった。

「ぶっちゃけ、あいつもネクサスの一員みたいなもんだろ……なぁ?」

「うーん……まぁ……基本的にネクロ事変以降はずっと共闘しているもんな……誰かさんは意味もなくやり合ったけど……」

「うっ!?いや、意味はあるだろう!あいつは逃亡中のテロリストなんだぞ!あいつは!!」

「理屈はそうだけど……そのテロリストの仲間だった訳だから、俺達」

「ウンウン、負い目があるから説得することはあっても、戦ったりしないよな」

「ぐっ!?それはそうかもしれないが……」

 蓮雲をからかってリラックスするアツヒトとランボ。話は逸れたが、本人達が言っていたように彼らとネームレスはネクロ事変では共犯と呼べる関係にあり、そこから敵対することもなかったので、仲間という意識が強い。その点は蓮雲も一緒だ。壊浜での一件もネームレスを思ってのことのはず……多分。

 しかし、それに納得のいかない者が一人と一AI……。

「お言葉ですが、お三方と違って僕はネームレスさんを仲間だとは思えません……」

「我もだ!敵の敵は味方……だから、協力した。それ以上でもそれ以下でもない!」

 ネクロ事変参加メンバーの三人とは逆に、ネームレスと縁の薄いユウとシルバーは彼を仲間だとは認めたくなかった。けれど、これは別にネームレス憎しで言っているわけではない。

「ユウ……でも、シムゴスを倒せたのはあいつのおかげでもあるんだし……」

「それは認めてますし、感謝もしてます」

「なら……」

「でも、です!あの人は罪を償わずに、今も逃げている……そんな人と!罪を償うためにネクサスに入って、命懸けで戦っているランボさん達を一緒にしちゃいけないんです!」

「ユウ……君は……」

 ユウが頑なにネームレスをネクサスのメンバーだと認めなかった理由……それはランボ達を思ってのことだった。

 もし、それを認めてしまったら、彼らの覚悟や今までの行動が無意味なものになってしまうように思えたから……。

「僕だって元々ナナシさんの敵です……だから、もしあの人自身がネクサスに入りたいと言って来たら、何も言いません。あの人個人に対しては、僕は別に……いえ、同じ壊浜出身だったり、カズヤさんの話を考えると、若干……かなり印象は悪いですけど……それでも!」

「わかったよ、ユウ。俺が悪かった……」

「アツヒトさん………」

 ばつが悪そうに頭を掻きながら、アツヒトがユウの言葉を止めた。

 この議論の言いだしっぺとして責任を感じてしまっているのだ。それと同時に彼の気持ちが嬉しかった。

「俺が浅はかだった。さっきの言葉は撤回するよ……あと、ありがとな、ユウ」

「いえ、そんな……」

「それに、よくよく考えてみれば、ネームレスの性格だとそうやってきつく言ってくれた方がいいのかもしれないしな。あいつ、罰受けたがりの生粋のマゾヒストだから」

 勝手に仲間に入れられそうになって、勝手にそれがナシになって、挙げ句、マゾヒスト扱いとは、さすがのネームレスもこんな罰を望んでいたわけじゃないだろう。

 だが、これでこの話は終わっ……。


「じゃあ、おれ達はどういう扱いなんだ?ネクサスさんよ」


「!?」

 唐突にかけられた声にネクサス全員が身構え、一斉に声のした方向に視線を向ける!そこには!


「よお!久しぶりだな!!」

「ご機嫌いかがですかな?」

「今日は涼しいな。南国育ちのオレとしてはもっと暑い方が調子出るんだが……」

「まぁ、何はともあれ我らが来たからには神凪の勝利が確定したも同然!」


 四人の男が思い思いの言葉を発しながら、こちらに向かって堂々とした態度で歩いて来ていた。そう、この男たちは……。

「えっ……どちら様?」


ズザーッ


 アツヒトの言葉で四人仲良くずっこける。

 本人達的には格好良く、満を持しての登場するつもりだったのだが、そうはうまくはいかないものである。

「アツヒト……てめえ、本当に忘れてるのか、それともおちょくってんのか……どっちでもただじゃおかねぇぞ……!!」

「悪い悪い。ついふざけたくなった。もちろん覚えてるよ、なぁ、ランボ、蓮雲……?」

「あぁ、そりゃあな……」

「……何を言っているんだ、二人とも……?こんな奴ら、おれは知らんぞ」


ズザーッ


 二度目の四人同時ずっこけが炸裂。

 彼らからしたらアツヒトやランボはともかく蓮雲だけは自分達のことを忘れてはいけない。だって、むしろ元々は蓮雲を加えた五人組だったのだから……。

「お前が一番覚えてないと駄目だろう……と言いたいが……」

「君ならそういうこともあると思っていたよ……」

「さっきから何なんだ!?初対面なのに馴れ馴れしいぞ!」

「だから初対面じゃないつーの」

「ネクロ事変の折り、一緒に神凪の警察相手に大立ち回りしたじゃないですか」

「……ネクロ事変?警察?……あぁ!貴様らあの時の!」

 さすがの蓮雲もそこまで言われたら、彼らのことを思い出す。彼らは……。

「あの時、傭兵達にみっともなく負けた間抜けな四人!」


ズザーッ


 二度あることは三度ある……あって欲しくはなかったが、またまた四人仲良くずっこける。

「てめえ!言い方ってもんがあるだろう!!」

「だが、事実だろ?」

「ぐぅ!?……いや、それでも……」

「やめておけ、義兄弟……こやつには何を言っても無駄だ」

「そうそう、それよりも……」

「本当にワタシ達のことを知らない人に自己紹介しないと……」

「それもそうだな、少年」

「あっ、はい……」

 四人が今度は仲良く一斉にポカンと呆けている少年とAIに視線を向ける。

 ユウ達からしたら知り合いのおじさん達が、急にやって来た知らないおじさん達とじゃれあう気色悪い光景を延々と見せられているのだから、そんな風になるのは当然だ。

 彼らを我に返すため、自分達の威厳を取り戻すために、四人組は気を取り直して名乗り始めた。

「わたしは『周元』……骸装……ピースプレイヤー顔良の装着者だ」

「おれは『李奉』!文醜の使い手で、周元とは義兄弟の契りを結んでいる!!」

「『フー』だ。南国育ちのサウナ好き、そして最強の矛ヤーカツを扱える選ばれし者とはオレのこと」

「そしてワタシが最強の盾、ヤーテンの『ヴノ』です。以後、お見知りおきを」

「はぁ……」

「わたし達はここにいるアツヒト達と同様に罪を償うために、今は神凪政府に協力しているんです」

「へえ……」

 ぶっちゃけ、ユウ的にはこの四人組とはあまりお近づきになりたくないので、空返事で返す。懇切丁寧に挨拶されたところで、今しがた強烈に刻み込まれた珍妙キテレツなおもしろ集団というレッテルは覆せなかったのだ。

 それを察してか、再び四人の注意はかつての仲間に向いた。

「で、そのお前らがどうしてここに……?」

「決まっておろう!おれ達もこの戦争に参加するのだ!」

「傭兵に負けたお前らが?役に立つのかよ……って言いたいところだけどその傭兵……伝え聞いたダブル・フェイスの暴れっぷりからすると、敗北も当然……それで判断するのは酷ってもんか……なぁ?」

「はい……あの傭兵の強さは尋常じゃなかったです」

「うむ、コマチと言ったか……奴の実力も我から見ても常軌を逸していた」

「あぁ……正直、オレには理解することすらできなかったよ……あのルシファーの動きは……」

 蓮雲とアツヒトはダブル・フェイスとコマチの戦いを見たことないので、あくまで彼らの力を伝聞でしか知らない……。だから、いまいち彼らのことを話していても緊迫感がない。

 それに対し、直接その戦いを眺めたランボ、ユウ、シルバーは思い出しただけで震えそうになった。彼らの力はまさに常軌を逸していた。

 そして、それはつまり傭兵達に負けた四人組が決して弱い訳ではないということの証明でもあった。

「そうだ!そうだ!おれ達が弱いんじゃない!相手が……あの傭兵が強過ぎたんだ!」

「言ってて、情けなくならない?」

「なりますよ……でも、まぁ、あのレベルの相手がそうポンポンといるとは考えられませんから、今回はお役には立てると思いますよ」

 傭兵レベルどころか、その傭兵自身が今から戦おうとしているグノス帝国に与していると知ったら、彼らはどんな反応をするのだろうか……。

 しかし、結論から言うと彼らは再び傭兵達と相対することはなかった。まぁ、その代わりある意味もっと厄介な相手と刃を交えることにはなってしまうのだが……。

 何はともあれ、こうしてネクロ事変で神凪を恐怖のどん底に叩き落としたテロリストのメンバーのほとんどが、何の因果か今度はその神凪を守るためにこの獣ヶ原に集結したのだった。

「ふん、精々、おれ達ネクサスの足を引っ張るなよ」

「それはもちろん」

「おう!ヤーカツの真の力を見せつけてやるよ!」

「やれやれ……ずいぶんと賑やかになったものだな」

 開戦直前だと言うのに和やかに談笑する元テロリスト達……なんだかんだ共通の体験があるからか彼らの間には不思議な絆がある。

 そんな彼らに迫る者が……。



「まったくだ……テロリストどもが集まって何を企んでいやがんだ……?」


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