第118章第8話【問題用務員、元通り】
「まさか1日持たないとはなぁ」
グローリアは残念そうに呟いた。
あれからガゼルは荷物をまとめるなり一目散にヴァラール魔法学院から飛び出した。「おおおおおお世話になりましたたたたたたた!!」と挨拶も変な感じになっていたので、何も置き土産をすることなく出ていってくれたことには感謝しよう。
そんな訳で、学院長の座席には元のグローリアが収まることになった。学院長続投である。頑張って問題行動を起こした甲斐がある。
ユフィーリアはご機嫌な様子で雪の結晶が刻まれた煙管を吹かし、
「まあいいじゃねえか。碌な奴が学院長にならずに済んで」
「スカイが不機嫌になるからね。淫魔だったら避けるべきだったかな」
グローリアは「ところで」と話を切り替え、
「この学院長室はいつ戻してくれるの?」
「…………」
学院長室の様子は、ガゼルを仕留めた時と変わらなかった。
高い天井に描かれた宗教画、窓ガラスの代わりとして嵌め込まれたステンドグラス。祭壇に掲げられた聖母の石膏像は嫋やかな笑顔でこちらを見下ろしている。荘厳な雰囲気の漂う教会風の内装に変えられた学院長室がそこにあった。
執務机もなければ椅子もなく、本棚も応接セットもどこへやら。よく言えば神聖、悪く言えば殺風景な部屋である。仕事をする気も起きやしない。
ユフィーリアはそっと視線を逸らし、
「えっと、3日ぐらいで元に戻るかと」
「どうやったらそんな内装を変更できるのさ」
「副学院長がやってました。家具も副学院長が持っていきました」
「スカーイ!!!!」
グローリアの絶叫が校舎内に響き渡った。
☆
一方その頃、魔法工学実習室では。
「座ったら身体が7色に光るように椅子を改造しよう」
「それならもっと光る色を増やしましょう。1800万色に光るようにしましょう。ゲーミング学院長です」
副学院長のスカイと最年少問題児のショウがタッグを組んで、学院長室に置く椅子に細工を仕掛けていた。
全てを見ていたハルアは静かに合掌していた。
そして言うまでもなく、ピカピカと全身を1800万色に光らせた学院長から正座で説教を受ける羽目になるのは、およそ1時間後のことである。
《登場人物》
【ユフィーリア】このあとゲーミング学院長を目の当たりにして酸欠になる。
【グローリア】ゲーミング学院長とか聞いたことないんだけれど。何してくれたんだ。
【ショウ】最近の問題行動の全ての元凶。ゲーミング学院長なんて楽しいね。
【スカイ】ゲーミング学院長なんて楽しいじゃないか。そんな訳でショウの要求を叶えちゃうから怒られるんだよ。
【ハルア】次、オレが光ってみたい。




