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ヴァラール魔法学院の今日の事件!! 〜名門魔法学校の用務員は異世界から召喚したヤンデレ系女装メイド少年に愛されているけど、今日も問題行動を起こして学院長から正座で説教されてます〜  作者: 山下愁
第100章:vs偽七魔法王!!〜問題用務員、偽七魔法王暴行事件〜

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第117章第6話【問題用務員とひ孫疑惑】

「いや抜いたことはリリアちゃんの助けにもなってるから褒められることだけど、学院長室を吹き飛ばすとかどういう了見なのふざけてるの?」


「すんません」


「ごめんなさい!!」


「申開きもありません」



 珍しく反省した様子の問題児男子組は、怒り狂う学院長を相手に素直に謝罪の言葉を口にする。


 巨大な蕪を引っこ抜いたのはいいが、さながら砲丸投げの如く蕪が抜けた勢いでぶん投げてしまったのでグローリアは怒っている訳である。その投げた勢いで遥か遠くの学院長室を吹き飛ばしてしまうという未曾有の事態に発展してしまったのだから、もう怒られるしかない。

 それにしても、あの巨大な蕪をぶん投げるとはエドワードの怪力は超人じみている。ハルアが梃子の原理で動かし、土を緩めにしたからと言っても遠くにある学院長室を的確に蕪で吹き飛ばすなんて出来やしない。


 説教を素直に受ける問題児男子組の姿を眺めるキクガとオルトレイの2人は、



「いいな、あいつら。獄卒にほしい。あのキクガに似ている坊主はぜひ呵責開発課に」


「やらない訳だが」


「むう。あのでっかいのとちっちゃいのは確実に獄卒課に取られるのだから、何とかして呵責開発課にも人材がほしいのに。なあキクガよ、どうしてもダメか? 連れて帰っちゃダメなのか?」


「生きている人間を冥府に連れて行こうとするのはよくない」


「それもそうか」



 オルトレイは「ちぇ」と不満げに唇を尖らせていたが、諦めてくれた様子である。

 このまま諦めずに冥府へ誘拐という展開になったら、たとえ相手が祖父と自称する謎の男だとしてもぶちのめる所存である。ユフィーリアのあらゆる技術を持ってしても二度ほどぶち殺してやる。


 雪の結晶が刻まれた煙管をとりあえず握りしめるだけに留めたユフィーリアは、副学院長のスカイへと振り返った。



「副学院長、すっ飛ばしたおとぎかぶは?」


「転送魔法で一瞬だい」



 スカイが「ほい」と指パッチンすると、転送魔法で巨大な蕪がリリアンティアの農園にどすんと召喚された。さすが現在視の魔眼持ちである、座標の位置を割り出すことが容易だから転送魔法も完璧だ。

 雪のように真っ白な表面には僅かながら土が付着しており、丸々とした実は見上げるほど巨大である。食べ応えどころか1週間毎日3食蕪料理尽くしにしてようやく消費できる量と言えるだろう。


 リリアンティアが愛情たっぷり込めて育てたおとぎかぶを見上げ、ユフィーリアは両腕を組む。



「どんな料理にしたらいいんだ、これ」


「まあ、妥当なのは蕪ステーキだろうな」


「いきなり喋るな」


「人間だから喋るぞ、オレは」



 急に背後からぬるりと話しかけてきたオルトレイに、ユフィーリアは驚いた拍子に拳を振り抜いていた。その振り抜かれた拳は残念ながら簡単に受け止められてしまい、ユフィーリアは極小の舌打ちをした。拳を受け止めたオルトレイの余裕に満ちた表情が何とも腹立たしい。



「それからクリーム煮だろうな」


「ああ、まあな。作ろうと思ってたけど」


「ふむ、洋風の食事なら赤の葡萄酒ワインが合いそうだ。今夜買って帰ろうかな」


「え?」


「ん?」



 首を傾げるユフィーリアに、オルトレイは青みがかった黒色の瞳を瞬かせた。



「え、もらえると思ってんのか?」


「もらえないのか!? わざわざ冥府から重機まで運んできたというのに!?」


「役に立ってねえなら無駄じゃねえか」



 だって役に立たないならば無駄以外にない。ただ現世に遊びに来ただけではないか。


 ユフィーリアがそのことを指摘すると、ぽこりと腰の辺りに衝撃を受けた。

 振り向けば、リリアンティアが「むー」と唇を尖らせて立っている。何か不満げであった。



「母様、意地悪はよくありません。お手伝いに来てくださったのだからお礼を渡すのは常識だと教えてくださったではありませんか」


「冗談だよ、ちゃんと考えてるっての」



 リリアンティアに諭されずとも、最初から最後まで冗談であった。わざわざ仕事を投げ出してまで現世に来てくれたのである、自称祖父とはいえ無碍に扱うのはよくない。


 そんな訳で取り分を話し合おうかと思ってオルトレイへと振り返るも、彼は青みがかった黒色の瞳を見開いて固まっていた。視線はユフィーリアとリリアンティアを行ったり来たりを繰り返している。

 何かおかしなやり取りがあっただろうか。「蕪を分け与えない」ということが冗談だと判明したから安堵した、という訳ではなさそうである。


 わなわなと震える指先でリリアンティアを指差したオルトレイは、



「母様、だと? ならばこの娘っ子はオレのひ孫……!?」


「全然違う、何ひとつとして合ってねえ」


「キクガ、キクガよ!! 大変だ!! オレにひ孫が出来たぞ!! エイクトベル家は安泰だ!!」


「勘違いしてんじゃねえよ馬鹿ジジイ、リリアは『母親代わり』をしているだけだっての!!」



 その後もひ孫だ何だと騒ぎ立てるオルトレイをぶん殴って正気に戻し、ユフィーリアは大きく育ったおとぎかぶの解体作業を手伝わせるのだった。

《登場人物》


【ユフィーリア】リリアンティアの母親代わりをしているだけで実際の母親ではない。髪色とか違うだろ。

【リリアンティア】ユフィーリアを母親のように慕うが、ちゃんと母親ではないとは認識している。


【オルトレイ】ユフィーリアの自称祖父。料理とかちゃんと作るし何だったら凝る。

【キクガ】事あるごとにオルトレイが問題児を獄卒として勧誘するので誘拐しないか心配。

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