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ヴァラール魔法学院の今日の事件!! 〜名門魔法学校の用務員は異世界から召喚したヤンデレ系女装メイド少年に愛されているけど、今日も問題行動を起こして学院長から正座で説教されてます〜  作者: 山下愁
第100章:vs偽七魔法王!!〜問題用務員、偽七魔法王暴行事件〜

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第116章第5話【問題用務員とボロボロな魔女】

「き、君って、君って魔女は」


「知らん知らん、あんな魔法動物なんて知らん」



 謎の魔法動物がお食事中だった中庭から何とか逃げ帰ってきたユフィーリアとグローリアは、アイゼルネが入れてくれた紅茶を飲んで心を落ち着かせていた。


 あの真っ白な巨大怪鳥は、ショウが魔法動物博士であるリタに通信魔法を飛ばして確認してくれていた。どうやら害獣の種類に属する類の魔法動物らしく、植物を勝手に食い荒らしていくらしい。特にミントやドクダミといった香りのある植物を好むので、その系統の農家などは被害を受けるだとか。

 害獣の類と判明した現在、未成年組が現場に急行した。「魔法動物博士が害獣と判断するので間違いない、駆除してくる」とのことである。害獣と分かってから判断が早かった。


 グローリアはガタガタと身体を震わせ、



「校舎内にミントとドクダミをばら撒くとか何を考えているのさ。信じられない」


「問題児に冤罪をかけてくる方が悪いんだろ」


「謝ったでしょ」


「反省が足りねえ」



 ツンと素っ気なく返すユフィーリアに、グローリアは「じゃあ」と口を開いた。



「君に罪をなすりつけたルージュちゃんは一体どうなったの?」


「そいつに関して言えば、今頃は毒草の天国と冥府の植物の地獄が」



 ユフィーリアの言葉は途中で消えた。


 荒々しく開け放たれた用務員室の扉。扉の向こうで認識できる廃墟化したヴァラール魔法学院の廊下を背にして、深紅の寝巻きとボロボロの赤い髪をそのままにした魔女が怒りの表情で立っていた。

 全身には歯形がこれでもかと刻み込まれており、白磁の肌も噛み付かれた痕跡が残されていた。ついでに深紅の寝巻きには『がぶがぶふらわぁちゃん』なる冥府の植物が引っ付いており、茎だけの存在となってもなお深紅の寝巻きに食らいつく根性を見せていた。見事に制裁を加えられていた。


 全ての元凶、ルージュ・ロックハートのご降臨である。しかも寝巻き姿で。



「貴方たちですの!?!!」


「お、元凶のご登場か」



 ユフィーリアは軽い調子で応じると、



「アタシの姿を騙って植物園の毒草を積んだってな。ネタは上がってんだよ」


「…………」



 ルージュの勢いが萎んでいく。どうやら罪は間違いないらしい。


 彼女には問題児による問題行動の標的になる理由があった。幻惑魔法でユフィーリアの姿を騙り、自分の欲望を満たす為に植物園の毒草を摘み、その罪を問題児筆頭になすりつけてきた訳である。これは仕方がない結末だ。

 問題児に冤罪をかければどうなるかなんて、彼女も身をもって知っているはずだった。何度か問題行動の餌食になっていれば学ぶと考えていたが、どうやら甘い考えだったとユフィーリアも自覚せざるを得ない。これは身体に叩き込むしかないだろう。


 取り繕うように笑顔を浮かべたルージュは、



「弁明の余地は?」


「あると思うか?」


「謝罪を受け入れる心の余裕はありますの?」


「そんなものがあったらこの世の問題児はみんな優等生だよ」


「そうですの。おほほほ」


「そうだぜ。あははは」



 ――――しばらくの沈黙。



「さらばですの」


「待てよルージュ、せめて美味しい魔法薬でも飲んでいけよ。お前と違って味の保証はしてやるからさぁ!!」


「それは効能はどのようなものなんですの!?」


「なぁに、犬か猫か兎かどれかの小動物に変身するだけだよ!!」


「他人に首輪をつける趣味は自覚しておりますが、他人から首輪をつけられる趣味はねえんですのよアホンダラ!!」


「アホンダラな行動をしたのはどこのどいつだ真っ赤なアバズレがよぉ!!」



 背を翻して逃亡を図ったルージュを、ユフィーリアは持ち得る身体能力を活用して追いかける。捕まるのも時間の問題だった。



「……アイゼルネちゃん、紅茶をもう1杯もらえる? これから廃墟と化した学院も掃除しないといけないし」


「あら、てっきり後始末も任せてくるかと思ったけれド♪」


「冤罪をかけた罪は重いからね」



 ユフィーリアとルージュによる地獄の鬼ごっこを見送ったグローリアは、アイゼルネに紅茶のおかわりを要求していた。冤罪をかけたことは本当に申し訳なく思っているらしかった。





 ちなみに地獄の鬼ごっこに捕まったルージュは、それはそれは可愛らしい長毛種の猫に変身させられてしばらくユフィーリアに可愛がられることとなった。

 本人曰く「もう問題児に罪をなすりつける真似はしないですの」と宣言していたが、今後もそんな馬鹿なことをやるかは神のみぞ知る。

《登場人物》


【ユフィーリア】猫になったルージュはふわふわして気持ちいいなぁ、うふふ。

【エドワード】ルージュ先生、可哀想。でも餌食になりたくないので黙っておく。

【ハルア】このあとリタの助言を聞いて害獣狩りに出かける。害獣なら遠慮なくやれる。

【アイゼルネ】この上司、敵と見定めたら徹底的にやるんだから。

【ショウ】せっかくユフィーリアが廃墟を作って遊んでいるのに邪魔する害獣はどこの誰だ、こんちくしょう。


【グローリア】問題児の報復はちゃんと予想できていた。だから廃墟の片付けは自分でやった。

【ルージュ】全ての元凶。朝起きたら花に噛まれ、火を吹きかけられ、種が弾丸みたいに飛んできてボロボロの状態に。果ては猫にまで変身させられて屈辱の極みだが、全体的に自業自得である。

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やましゅーさん、おはようございます! 新作、今回も楽しく読ませていただきました! → 【ルージュ】全ての元凶。朝起きたら花に噛まれ、火を吹きかけられ、種が弾丸みたいに飛んできてボロボロの状態に。果て…
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