第114章第5話【異世界少年とお返し】
雪桜の被害は、大人たちが何とかしてくれることになった。
「これ回復できそうか?」
「ダメなら学院長に時間を戻してもらおうねぇ」
「それが1番手っ取り早いんじゃないのかしラ♪」
「はわわわわ……何か人の顔がありますぅ……」
日課にしている畑の様子を見ていた保健医のリリアンティアにもご足労いただき、問題児の大人組が変わり果てた雪桜を元に戻そうと試みていた。
今もなお、雪桜は高らかな笑い声を発している。真っ白な花が咲き乱れる木のてっぺんにぼんぼりのような見た目に整えられた枝葉をくっつけて、その部分が顔となってゲラゲラと笑っているのだ。
可哀想に、あの人面瘡の原因が八雲夕凪の呪いだとは雪桜も思うまい。ショウだってうねうねする人面瘡付きの向日葵を咲かせたくなかった。全ては今も地中に埋まって首だけを出している真っ白な狐が悪いのだ。
大人たちが雪桜の修復作業に追われる中、ショウとハルアは輪から外れた位置で膝を抱えていた。
「ハルさん」
「あい」
「ちゃんと鉢植えを渡せるか?」
「…………」
ショウの問いかけに、ハルアは顔を俯かせた。
「無理かも……」
「あの鉢植えは、さすがにリタさんにあげたら引かれてしまうよなぁ」
お返しを渡す日まで残り少ない。お小遣いを貯め直して鉢植えを送ることが出来る日数はもうないのだ。
これも全てはあのハクビシンが台無しにしてくれたからなのだが、彼への罰は雪桜を台無しにしたことで平等である。あの鉢植えはもう用務員室の窓枠にでも飾るしかない。
しょんぼりと肩を落とすハルアの背中を撫でるショウは、
「また別の方法を探そう。きっとリタさんの喜ぶものは見つかる」
「うん……」
落ち込むハルアを慰めつつ、ショウは友人の少女が喜ぶような贈り物の内容を考えるのだった。
ちなみに雪桜はリリアンティアの献身的な回復魔法のおかげで復活し、綺麗な桜の花を咲かせることになった。
八雲夕凪がやらかした罪は許されることなく、彼はユフィーリアたち問題児大人組の手によって丹念に地中へと埋められることとなった。なお、鼻先だけは出ているようなので呼吸は出来るようになっているとのことだが、多分あの豊穣神は全身を地中に埋めても生きていられると思う。
《登場人物》
【ショウ】しょんぼりする先輩が見てられないのでお返し作戦は協力する。
【ハルア】リタへのお返しをどうしたものか。
【大人たち】笑いまくってる雪桜を修復するのに頭を悩ませ中。これどうするんだよ、直るんか。




