第111章第5話【異世界少年と先生の正体】
「あああ〜、残念です。オーロラオウムの求愛行動、見てみたかった……」
「残念ですね。意外にもあの先生が覚悟を決めるのが早かったので」
授業を抜け出してきたリタを出迎えた未成年組のハルアとショウは、ガックリと肩を落としているリタを慰めた。
あれから魔法動物関連の授業を中心に取っている生徒がオーロラオウムの求愛行動を見る為にやってきたのだが、全ては終わってしまっていた訳である。求愛行動が見れなくて残念ではあるのだが、生徒たちの切り替えも早くてその現場を見ていた生徒や教職員から記録を見せてもらったりしていた。
リタは非常に残念そうに、
「う、うう、もう少し足が速かったら……いえそもそも私が動物言語学の授業を受けていればよかったのに……」
「求婚されて戸惑う先生も面白かったですよ」
「鳥さんに求愛されて本気にする先生なんているんだね!!」
ショウとハルアが簡潔にその時の光景を教えてあげると、リタは「ああ」と得心したように頷いた。
「確かにハロウィット先生は純粋かもしれないですね。あの人、元天使様ですし」
「え」
「天使さんなの!?」
リタの言葉に今度はショウとハルアが驚いた。
何せジョシュ・ハロウィット先生の背中には、天使の翼らしきものが存在しないのだ。カフェ・ド・アンジュで働く天使たちにはしっかり翼があるのにも関わらず、彼女の背中には白い羽すら見えない。
それなのに「天使である」というのはどうなのだろうか。リタが言うには『元天使』らしいのだが、元がつくと翼も存在しなくなるのか。
「人間の旦那さんと結婚すると、天使の翼がポロッと落ちるみたいです」
「なるほど、面白いことを聞きました」
「離婚したらまた生えてくるのかな!?」
「生えてこないかなと思いますよ……?」
ジョシュ・ハロウィット先生の正体を知ったところで『面白い』以上の感想を抱くことはないので、未成年組とリタは教室外からオーロラオウムを観察するのだった。
「くげえーッ!! ダイスキッ!! ダイスキッ!!」
「もういいです、もういいですから」
「幸セニィ!! シマァス!!」
「このッ、問題児が余計なことを教えなければ……!!」
そして授業中にも関わらず流暢な言葉で求婚するオーロラオウムに、リタが「言葉がお上手!!」なんて興奮したのは言うまでもない。
《登場人物》
【ショウ】天使とはカフェ・ド・アンジュみたいなところにしかいないと思ったら、思ったよりも身近にいたんだな。
【ハルア】天使? 翼ないね?
【リタ】オーロラオウムの求婚現場には間に合わなかったが、喋るところはちゃんと見れたのでラッキー。
【ジョシュ】本当は天使様だったが、結婚を機に翼が取れて晴れて人間化。元は上級天使だった。




