第109章第7話【問題用務員と襲撃?】
来賓客が来たことで、創立記念パーティーも佳境を迎えた。
――どじゃーん♪
会場に音楽が響き渡る。パーティーの為に招聘された音楽団が、それぞれ楽器を構えるなり音楽を奏で始めたのである。
流れ始めるのは荘厳なワルツ。一応このパーティーも身内だけでやるとはいえ舞踏会なので、踊らなければ損である。
生徒たちがめいめいに踊り始める中、
「リタ、踊ろ」
「――はい!!」
ハルアが不器用ながらもリタをダンスに誘う。その誘いに、リタも嬉しそうな表情で応じていた。
ぎこちないハルアのエスコートを経て、2人はワルツを踊る生徒たちの中に混ざり込む。初々しいダンスにユフィーリアも思わず笑みが溢れた。
そんな平穏で甘酸っぱい一幕を目の当たりにし、変態が不服の声を漏らす。
「お兄ちゃんと踊らんのか……」
「踊りませんよぉ」
「何を期待してるんですか、この変態」
フェイツイが心底残念そうな目線をエドワードとショウに向け、そして容赦なく威嚇で返されていた。
この日の為にハルアも社交ダンスを練習した訳である。全てはリタと踊る為に、並々ならぬ努力を重ねたのだ。
まあダンススキルに関して言えば付け焼き刃で叩き込んだだけに過ぎないので、多少は拙いものになるだろう。それでも雰囲気だけ楽しめれば上出来だ。
さて、ユフィーリアも最愛の嫁を誘って踊り出そうとするのだが、
「…………!!」
「え、あの、ハルアさん……?」
それまで楽しく踊っていたはずのハルアが、急に険しい顔を浮かべるなり天井を睨みつけた。一緒に踊っていたはずのリタも不安そうな眼差しを向ける。
彼のその態度を、ユフィーリアは知っていた。これから何かが起きる前触れである。
その『嫌な予感』を決定的なものにする絶叫が、創立記念パーティーの会場全体に響き渡った。
「全員伏せろ!!!!」
叫んだのは獣王陛下のリオンである。
その気迫に会場でパーティーを楽しんでいた全員が、ほぼ反射的に膝を折って大理石の床に伏せた。ユフィーリアもショウとアイゼルネを庇うように防衛魔法を展開し、天井から視線を外すことなくしゃがみ込む。
女子生徒は、リオンの大音声を受けて甲高い悲鳴を上げていた。ハルアもリタを抱き込んで床に伏せている。女を庇う気概は褒められるべきだ。
創立記念パーティーの参加者が全員しゃがみ込んだ、次の瞬間である。
――――――――ドゴオオオオオオオッ!!!!
盛大な爆発音が大講堂を襲い、建物を大きく揺らした。
《登場人物》
【ユフィーリア】最愛の嫁と一緒に踊ろうと思ったのに。
【エドワード】ユフィーリアはショウと踊るからアイゼルネの相手をする予定だった。
【ハルア】リタと一緒に踊ってたのに。
【アイゼルネ】踊る相手がいないのでエドワードの相手をする予定だった。
【ショウ】せっかくユフィーリアをエスコートできるように練習したのに!
【リタ】ハルアと楽しく踊ってたのに。ユフィーリアのおかげで最低限踊れるようになった。
【リオン】何かを予見した獣王陛下。
【カーシム】爆発音が聞こえた途端、従者のイツァルに飛びつかれてそれどころじゃない。
【フェイツイ】問題児男子組がキャッキャしながら踊るのを楽しみにしていたのに。