第5話【問題用務員、忘れてた】
そんな訳で解散である。
「じゃあ僕は学院長室に戻るね」
「ボクも研究室に戻ろうっと」
「わたくしも魔導書図書館に戻りますの。新しい蔵書の点検がありますの」
「私も冥府に戻るとしよう。ショウ、先程のような不審者を見かけたら私に言いなさい」
「儂も昼寝に戻るのじゃぁ」
「身共も牛さんたちのお世話に戻りますね」
何だかんだと仕事に追われている七魔法王は、自然な流れで解散となった。偽物たちが意外にも歯応えがなかったのだ。
拍子抜けしたので、ユフィーリアたち問題児も退散することにする。彼らはもちろん仕事をしない。給料をもらっていても用務員の仕事をすることは、多分今後もないだろう。
廊下を歩きながら、ユフィーリアはふと首を傾げた。
「何か忘れてるような気がする」
「ボケでも始まったぁ?」
「ぶん殴るぞ」
エドワードに痴呆を疑われたその時、ユフィーリアの有する魔フォーンが通信魔法を受信した。
魔フォーンの表面を確認すると、相手はグローリアである。何かあったのだろうか。
何の疑いも持たずにユフィーリアは魔フォーンの画面に指を滑らせて、通信魔法に応じる。
「どうした、グローリア」
『ユフィーリア、学院長室を水族館みたいに改造したのは君かな?』
「あ」
すっかり忘れていた。
そういえば暇を持て余すあまり、用務員室をメルヘンチックに改造したことを忘れていた。ちなみにその前は学院長室を水族館のように水槽をたくさん設置してきたのだ。
渾身の力作と言える学院長室の中心に据えた巨大な円筒型の水槽に、小魚の群れと巨大なジンベイザメを突っ込んできた訳である。もちろん生きている。ちゃんと海洋魔法学実習室から捕獲してきたのだ。
魔フォーンを片手に握り込んだユフィーリアは、
「プレゼント☆」
『ユフィーリア、君って魔女は!!!!』
グローリアの怒声が鼓膜を真っ直ぐに貫き、ユフィーリアの聴覚は危うく死にかけた。
ちなみに今回の悪戯で使用したお魚たちは、マリンスノウラウンジの巨大な水槽にて飼育されることとなった。
現在もなお、優美に泳いでいる姿が確認されて生徒や教職員から非常に人気が出たと言う。
《登場人物》
【ユフィーリア】偽物の七魔法王をいじめるのが楽しすぎて、すっかり学院長室を水族館に改装したの忘れてた。
【グローリア】扉を開けた時にジンベイザメと目が合った時の気持ちを答えよ。(配点30点)