第6話【問題用務員と定期開催】
恒例のお説教である。
「学院長室には大事な書類があるので乗っ取るのは本当に止めて」
「爆発は」
「なしに決まってんでしょ、馬鹿じゃないの」
元の状態に戻された学院長室の床にお行儀よく並ぶ問題児5名と、冥王第一補佐官のキクガが仲良くお説教を受ける羽目になった。
グローリアからすれば学院長室を乗っ取ったとことに対する問題行動を怒っているだけであり、オカマバー経営と口調が変わる魔法薬を開発したことには「まあいいんじゃない? 馬鹿みたいだけど」みたいな言葉で締め括るだけに留まった。魔法薬の方はともかく、オカマバーに関しては怒ってもいいのではないかとユフィーリアは感じていた。
グローリアは「で?」と言い、
「どこにお店を出すの?」
「え、本気か?」
「7割がたは本気かな」
ユフィーリアの問いかけに、グローリアはさらりと答えた。どうやら本気で問題児オカマバーの存在を気に入ってしまった様子である。
「定期的に開店するなら、どこかお店の為の部屋を設けるけど」
「物凄く気に入ってるじゃねえか」
まさかの気に入りように、ユフィーリアは素直に驚いた。
問題児の問題行動で屋台や店をやったりしたのは何度かあるが、正直な話、どれも店を構えるという提案にまで至ることはなかった。気まぐれな問題児の店など長続きしないので、一時的な物珍しさで多大な利益を得られるだけなのだ。
それが一体どういう風の吹き回しなのか、オカマバーの定期開催が望まれている。こんなことは今までだってなかったはずなのに。
「いやまあ、やるなら用務員室を改装してやるけど」
「そう。それならいいや、開店するなら正面玄関の掲示板にお知らせでも張っておいてね」
以上、ということで今回のお説教は終了となった。意外にも早すぎる説教である。
お説教が終わったことでとっとと学院長室から追い出された問題児と冥王第一補佐官たちは、それぞれの顔を見合わせた。
今までにない展開で反応に困った。面白さを求めてやったことが、定期的に求められる結果になるということは喜んでいいのやら困っていいのやら不明である。
まあ、とりあえずは。
「求められたからにはやらなきゃだよなァ」
「ドレスもっといっぱい買っておくべきよねぇ?」
「アタイ、綺麗なドレスが着たい!!」
「私、未成年ですけれど大丈夫かしら?」
「提供するのが酒類でなければ大丈夫やろ。あかんわぁ、あても出勤せないけんやろか」
「キクガさん、ノリノリじゃないノ♪」
意外にもオカマバーの定期開催に乗り気な問題児と冥王第一補佐官は、次の開催日を相談するのだった。
そうして開催されたオカマバーは意外にも繁盛し、その盛況っぷりをどこぞの銭ゲバ人魚が嗅ぎつけて共同経営の話を持ちかけてきたりもしたが、その部分は残念ながら割愛させていただく。
《登場人物》
【ユフィーリア】キャストに悪い虫がつかないように睨みつける役。悪い虫がつき次第、排除排除。
【エドワード】オカマバーのママ。話を聞くのが得意。
【ハルア】オカマバーの看板娘。たまにズバッと意見で切り裂いていく通り魔。
【アイゼルネ】陰で飲み物を用意するが、悪い奴がいたらお薬を盛っちゃう。
【ショウ】オカマバーの新人娘。的確な意見と毒舌でお客様から人気。
【キクガ】オカマバーの経営者。数字に強いのでお金関係の相談によく乗ってくれる。
【グローリア】オカマバーの常連客。カクテルなら飲めるのでお酒が飲みたい気分だったら飲む。