第17話【問題用務員、バレちゃった】
「ユフィーリア」
旅行から帰ってきて用務員室でまったりと過ごしていた矢先、学院長のグローリア・イーストエンドが鬼のような形相でやってきた。
「よう、グローリア。お土産はこの前送った差別意識の高い獣人で勘弁してくれ」
「これはどういうこと?」
グローリアがユフィーリアに見せてきたのは新聞である。日付は今朝のものだ。
一面を大きく飾っているのは、獣王国の国民から獣王就任を祝福されるリオンの写真だ。綺麗な笑顔で手を振っている姿はまさに王族らしく気品があり、万雷の喝采を浴びる彼がどれほど国民から支持されているのか分かる。
問題はその隣だ。黒い薄布で顔を覆った黒いドレスの魔女――ユフィーリアも映り込んでいた。
「お、よく撮れてる」
「そうじゃないでしょ!!」
グローリアは「見て!!」と新聞の見出しを示した。
見出しには『新獣王が就任、戴冠式に七魔法王の第七席が!?』である。よく読んでいくとリオンが新たな獣王に就任したことの他に、今まで秘匿されていた七魔法王が第七席【世界終焉】が絶世の美貌を持つ銀髪碧眼の魔女であることが世間に知れ渡ったというような内容が書かれている。
しかもご丁寧にも名前まで明記されていた。戴冠式の場で宣言してしまったのだから、仕方がないと言えば仕方がない。
ユフィーリアは雪の結晶が刻まれた煙管を咥え、
「遅かれ早かれバレることになるんだから、最高の瞬間にバラしたいだろ」
「君が変なことをすれば七魔法王の品位が下がるから、君の存在は秘匿していたのに!!」
「あーあー聞こえなーい」
「ユフィーリア、君って魔女は!!」
グローリアの金切り声を、ユフィーリアは耳を塞いで聞こえていないふりを貫き通すのだった。
《登場人物》
【ユフィーリア】七魔法王が第七席。今まで秘匿にされていた存在だが、このたび新聞記者にすっぱ抜かれた。すっぱ抜かれたけど本性までは見抜けていない様子。戴冠式の時は猫を被っていた。
【グローリア】七魔法王が第一席。立てば芍薬、座れば牡丹、口を開けば馬鹿野郎な存在の第七席を今まで隠し通していた。変なことをやらかすたびに七魔法王の品位が下がるかも知れないと頭を抱える。