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帰りは

作者: 藤野

 俺は車で山道を走っていた。久々に帰省したから、ドライブがてら昔遊んでいた山に来たのだ。昔はふもとで遊んでいただけだったから、こんなに上の方まで来たことはない。見知った場所なのに見知らぬ景色で、俺はなんだか興奮していた。そんな浮かれた感情が、俺をこんな目に遭わせたのかもしれない……。


 昨日、道路が枝分かれしているのを見つけた。小さな看板が立っていて、白い矢印の上に白い字で「この先アイスクリーム売ってます」と書いてある。このまま真っ直ぐ行けば帰るだけだが、そっちに行ってみたら何か面白いことがあるかもしれない。深夜だからとっくに店はやっていないが、昔の俺が行けなかった場所に立ち入れた興奮で、俺はついついそっちの細道に向かってしまった。

 しっかりコンクリートで舗装された道路と違って、茶色い土が剥き出しになっている。車一台通れる程の隙間しか無く、ちょっとでも間違えれば木々の中に真っ逆さまだ。

 しかし、そんな道は何度も通ったことがある。俺は気にせず、奥に進んだ……。

 しばらくして、様子がおかしいことに気がつく。真っ暗な山道の中、目の前にある細い道しか照らされていない。そこを延々走り続けているのに、ちょっとも進んでいない気がするのだ。もう五分くらい経ったんじゃないか。俺は怖くなって車を止めた。気持ち悪いくらいの静けさだ。

 今むやみに進んだら、なんとなく危ない気がする……。そう考えて、俺は車の中で一晩過ごすことにした。


 明るくなって目を覚まし、今に至る。

 今思えば、この道に進んでしまったこと自体が間違いだったのだ……。


 明るくなって周囲が見渡せるようになったのはいいものの、そこには異様な光景が広がっていた。前には崖。後ろには車。

 ……昨日の俺の勘は当たっていた。あのまま進めば、ここに落ちていたんだ……。

 後ろには、ぴったりと車があり、行列を作っている。運転手の顔は見えないが、一人だったり家族連れだったりした。これは皆、ここに落ちた犠牲者達なんじゃ。

 そう思った瞬間、俺の真後ろにある車が動き出した。徐々に、徐々に車体が進む。下は真っ白で何も見えない。

 がくんと前輪が落ちた。ゆっくり……傾いて……落ち……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人気のない山道を車で走るのは、自然を感じられて心地良い反面、心細くて落ち着かなくなりますね。 転落事故を起こした車に乗っていた人達は、助けて貰う事も発見して貰う事も出来なかったので、より一…
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