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これから始まる英雄譚! ~俺らの異常な冒険者スタイル~  作者: 丸々。
第四章 [其れは生命、大地の化身]
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五十九話 乱入:糸絡めの隠者 後

「リマ、俺らも援護する! ……なんだコレ全然切れねぇ!」

「あ、ありがとう闇鍋パーティーさ」

「闇鍋はやめてくれませんかね? 蔑称だからな?」


 リマはデクトを救助し、俺はデリクスを救援する。セリスとアイシャは暫時の近衛兵に。

 中身デリクスを傷付けないように、慎重かつ大胆に糸を切除する。自慢の、特に銘刀めいとうではないなまくら(・・・・)で切り込むが、鉄格子か? と疑うほど強固で強剛な武器。


 ごく一般的な糸なら、例え何重にも巻かれたとしても、刃を押し引きすればこんな量産型の武器でも潔く真っ二つに分断する。だが、これは特殊な糸であるため切ろうにも切れない。


「……ん? なんか暴れてんなぁ。オーガの奴、悪足掻きしてんのかな?」


 苦境にさいなまれず、天井に開拓されたふちをそこはかとなく、何が無しに打ち守っていると、砂礫されきがポロポロと落下したり狭長なナニカが見え隠れする。


 あー、やっぱり『パスキュラネ』かー……こんなところに巣くうなんて珍しいな。それにあの巨体、何十年もこ大自然を生き延びた老練の個体だろうなぁ……。ここはアイツの庭、闘うのは分が悪いし、討伐しても素材しか恩賞がないし……


 抜け駆けしてずらかろうかな。


「切ってダメなら、焼けば解決するのではないですか? ここなら、どうヘマしてもニトロ石には着火しませんよ?」

「中身も焼却されるだろ! それに火力はランダムなんだから、特大の火球が爆誕したら消し炭になるだろ!」

「物は試し! そんな魔法になる確率は、眼中に入れなくとも心配には及びませんよ! いきますっ!」

「やめろ! デリクスが焼ける!」「やめて! デクトが焼ける!」


 多少の配意はあったのか、両手は前ではなく上に掲げた。

 赤いオーラが流れ込み、鬼が出るか蛇が出るかの死を纏う彼女の英断は、その身を焦がしてまで執行された。


 判決───。


シュボッ


「「……………………」」

「…………ほら、ね?」


 未熟な炎が誕生した。両手で構えていたものの、指一本で事足りる。マッチ棒から生まれた火のように、小さな体を燃やしている。


「はい、じゃあ、少しずつ焼き切りましょうか。デクトから、ちょっと失礼しますね」

「あ、うん。お願いね……」


 馬鹿みたいに騒いでたのが恥ずかしい。

 発動させた張本人であるためか、セリスは熱がる素振りを見せずに、ジリジリと気長に溶接していく。


「……なんか……うん……貴方たちって、不思議ね……」

「そうだろう? リーダーである俺ですら、メンバーのことよく分からないからな」


 線香花火を眺める子供のように、薄暗い坑内を優しく照らす炎に釘付けになる三人。戦場である事を忘れ、くつろぎ始めた。

 そんな坑内に、くつろぎを許さない輩が。


「……ぅぉぉぉぉおおおお!!」

ズオォォォオン……

「おっ。後輩、蜘蛛と一緒にオーガが降ってきたぞ」


 落石に混じって、鬼人オーガが巨体にマウントをとって墜落してきた。幸いにも、ニトロ石に衝突することはなく、被害は地鳴りと砂埃だけで済んだ。


「筋肉に不可能はないのだぁあ! ガーッハッハッハッハ!」


 怪物の本拠地に誘拐されたロンゴは、鍛え抜かれた驚異的な筋力で糸を破り、その家主とのタイマンをしていたらしい。


 そのお相手というのが、下落した巨大蜘蛛。

 全長八メートル程の、身の毛もよだつ黒いモンスター。緑色に光る八つの眼。謎の体液がしたたる二本の鋭利な牙に、頭部の防壁となる橙色の顎。蜘蛛特有の八本足は鉄筋のようで、小さな棘や毛が密集している。最前列にある一対の脚は他と比較して徒長し、先端は湾曲わんきょくして死神のかまのように発達している。

 全体的に、蜘蛛というよりもはちのような体格をしているが、羽は当然のこと、毒針らしき器官も無いようだ。

 その代わりなのか、顎の下に蚊のような注射針が仕込まれている。


 有るだけのふしを蠢かせ、死に際の昆虫のような仕草をして鬼人オーガを突き放そうとする。


「全員揃ったし、さっさと帰るぞお前ら! ほら後輩、ここでソイツ(・・・)らを取り出さなくても、外でやればいいだろ! 荷物持てって!」

「糸が地面と密着してて剥がせねぇんだ! 地道に焼いてるから、時間稼ぎと陽動を頼む!」

「えーめんど……」


「ガハハハ……ぅおっと危ねぇ!」


 もみくちゃになっていた巨大蜘蛛は特大の注射針を槍のように扱って、岩盤を持ち構える鬼人オーガに突き刺そうとすると、先端から褐色の水滴が飛び散る。

 すると、盾代わりの岩盤に付着した液体は、その岩盤を次第に浸食していった。

 接触してなはらないという野生の勘が働き、大袈裟に回避したために蜘蛛の豊満な腹部から転落した。


シュクルルルルルルル!


 体勢を立て直した巨大蜘蛛は、随分とご立腹である。鎌状の脚を広げ、自分を大きな生物に見せて威嚇をする。

 何倍も小柄な獲物に対してでも、手加減せずに全力で仕留めに掛かろうとする意気込みが感じ取れる。


「仕留め損ねたぜ……相棒、赤髪! 手分けして追い込むぞ!」

「追い込まなくていいから。攻撃をしのげればいいんだよ───あ?」


 巨大蜘蛛パスキュラネが、思い立ったように前四本の脚を脚立きゃたつのように伸ばして、体を持ち上げた。腹部には目玉模様が連なり、見るのもおこがましい。


「全員、攻撃に備えろ!」


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