プロローグ
「あんたもよっぽどの変態ね!」
僕のスキルについて話すと、彼女はそう言って笑うのだった。
僕の歩む道の中で、女の子を笑顔にできる日が来るなんて思ってもいなかった。こんなに利己的で、排他的なスキルでも、人を笑わせることができるんだろうか。その日は、僕にとってかけがえのない1日となった。
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MMORPG『生命の現身』が稼働してから5年。
「お姫様からの依頼をこなし、様々な生き物と闘う」という、ストーリーとしてはありきたりなこのゲームが5年も続いている理由はいくつかある。運営の妙な癖というかなんというか……
まあ、それについてはいつか語るとしよう。
そんな運営元のプラチナム・コーポレーションが大型アップデートを行った。しかし不具合が生じては修正を繰り返し、ついには2週間が経過した。当然のごとく、プレイヤーからのクレームが相次いだが、そのアップデート内容は一切公開されず、プレイヤーは不信感を一層に募らせることとなった。
それから1週間が経った頃、SNSにて『プレイヤー:EX-5』がとある情報を発信した。それは新たなユニークスキルについて、運営からメッセージが送られてきたというものだった。
「あなたは、一定数のアンデッド種族を討伐し条件を満たしたため、ユニークスキル『冥牙英傑』を習得しました」
その後も続々とユニークスキルが確認され、情報は拡散した。ユニークスキルの詳細について運営が語ることは無かったが、「現状では誰1人として同じものを習得していない唯一無二のスキル、それを不特定多数が習得できる」というロマンを、プレイヤーに深く印象付ける結果となった。やりこみ要素として定着したこの情報があってか、『生命の現身』のアカウント登録者数はこれまでの倍にまで膨れ上がっていた。
次第に、これらのユニークスキルは「ヒドゥン(隠された)スキル」とプレイヤーから呼ばれるようになった。
しばらくして、再び『EX-5』から情報発信があった。
初のヒドゥンスキル『冥牙英傑』の習得という輝かしい功績を得たプレイヤーが報告したその内容というのは、「『冥牙英傑』が消失した」というものだった。運営に問い合わせても「正常に稼働している」との返信しか来ず、プレイヤー間で混乱が生まれる中、別のプレイヤーがこう呟くのだった。
「よくわからんが冥牙英傑げっと」
『冥牙英傑』の消失、正常稼働、そして新たなプレイヤーによる『冥牙英傑』の習得。これらの情報から、1つの仮説が生まれた。
「スキル習得の条件は更新され、全プレイヤーの中で達成数が最も多い者に与えられる」
その後もスキル習得者の更新が続発したことから、仮説が信憑性を増す中、2人のプレイヤーが実験を行った。ヒドゥンスキルを習得したプレイヤーAの達成条件をプレイヤーBが更新し、それを交互に繰り返すというものだった。その結果、スキルが更新に合わせて移動したことから、仮説は真実へと変わったのだった。
それからというもの、ヒドゥンスキルの情報が出回ることはなくなった。しかし、この真実をもって『唯一無二のスキル』であることは確定したため、やりこみ要素としての質は、より高まったともいえる。情報戦としての色が濃くなった『生命の現身』は、新たな戦いをプレイヤーにもたらすのだった。