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カルテNO.1 高橋(勇者)5/5

 5

「ミカちゃん、今日の患者さんはこれで全部終わり?」


 医師が受付の女性に声をかけると、「はい、先生」と笑顔で返事があった。


「じゃあ、悪いけど先に上がるね。お疲れさま」

 

 ミカの「お疲れ様でーす」という声を背に、医師は白衣を脱ぎ、コートを羽織って職員用の玄関を出た。


「ずいぶん日が短くなったなぁ」

 

 辺りは夕やみに包まれ、振り返ると『樹界深奥』の入り口がぽっかりと口を開けていた。


「ダンジョン、ねぇ……」

 

 駐車場の赤いスポーツカーに医師が近づくと、スマートキーによってドアがアンロックされ、ルーフも自動的にトランクに格納された。

 

 運転席に身を沈めた医師は、夜空に浮かぶ月を眺めながらしばらく物思いにふける。

 

 一体、ダンジョンの何が彼らをこうも引き寄せるのか。

 

 ダンジョンで得られる貴金属の類は、その代償に見合うだけの価値があるのだろうか。

 

 肉体の傷や疲労なら、薬草や回復魔法でどうとでもなる。何なら死んでも復活の呪文で生き返ることができる。

 

 しかし、傷つき、すり減ってしまった心は、どうすればいいのだろうか。

 

 冒険者の死は、肉体的に死んだ時ではなく、心が折れた時にやってくる。


「頑張れ、高橋さん」

 

 医師は、アップにしていた髪を解き、モーターの起動スイッチを押した。

 

 インパネがボウっと青白い光を放ち、シートが医師の体に密着するように変形する。


「行け、勇者高橋!」

 

 医師は緩くウエーブのかかった髪をなびかせて、オープンカーで夜の森を駆け抜けた。


『ダンジョンメンタルクリニック』いかがでしたか。


うつ病や発達障害など、精神科領域の病気や障害に対して、一定の理解が得られるようになってきたとは思いますが、やはり偏見や無関心に起因する差別も根強く残っていると感じます。


この作品を通して、少しでも多くの方にメンタルクリニックや心の病気のことを知ってもらえたら幸いです。

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